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震災直後にバーベキュー?「こんな時に」ではなく「こんな時だからこそ」のワケ

おたくま経済新聞 / 2018年9月13日 15時21分

震災直後にバーベキュー?「こんな時に」ではなく「こんな時だからこそ」のワケ

バーベキュー画像/写真ACより

 都市部で生活していると、家の外で行う焼肉やバーベキュー(BBQ)などって特別感があるものです。それゆえ、外でのバーベキューはレジャーの一環で、楽しくはしゃぐためのものっていうイメージも。しかし、震災の時に行うバーベキューは、そういう意味とはまた違った側面もあるのです。

■ 「こんな時に」ではなく「こんな時だからこそ」BBQするワケ

 2018年9月6日未明に北海道で起こった地震の後に、停電でライフラインが軒並み断絶状態の中、バーベキューやジンギスカンを庭で行っているという話がSNS上で散見されました。しかしサバイバル状態の北海道で“やむなく”しているこの行為に対して、一部からは「こんな時に」等の眉をひそめる声もあがり、ネット上ではちょっとした騒ぎになっていました。

 被災時におけるバーベキュー。実は東日本大震災や熊本地震の時にも、在宅避難(在宅のまま実質的な避難生活を送ること)をする人の間で、あたりまえのように行われています。電気やガスが止まった状況で、手持ちのカセットガスコンロや、七輪、バーベキューセットをつかい、ライフライン復旧までの間をしのぐのです。また、停電下においては冷蔵庫に入っている食料品が腐ってしまうため、より一層消費を急がねばならず一時的に食事が豪華になることもよく聞く話。しかし今回は多くの人がバーベキューをしている様子をネットに投稿していたことから、バーベキューやジンギスカンという行為がこれまでよりも目立つ形となったようです。

 そこでツイッターユーザーである“ウリボー2号”さんが「そうか!内地の人には家の外での焼き肉は特別なんだ。だから不謹慎って言い出す人がいるんだね。いいですか、北海道では「庭や車庫における焼き肉やジンギスカン」はわりと普通の食事です。夏場の週末はどこかしらで炭火の香りがしています。下手な外食より多いって人もざらです」と、北海道特有の文化をツイッターで紹介したところ、多くの注目をあつめ誤解をとくことに一役買っています。

そうか!内地の人には家の外での焼き肉は特別なんだ。だから不謹慎って言い出す人がいるんだね。いいですか、北海道では「庭や車庫における焼き肉やジンギスカン」はわりと普通の食事です。夏場の週末はどこかしらで炭火の香りがしています。下手な外食より多いって人もざらです

— ウリボー2号 (@uribo2) September 9, 2018

 ちなみに、生粋の道民はバーベキューセットや炭など、アウトドアで生活できるセットを常備している家庭も多い模様。同じくツイッターユーザーの“きよきよ”さんも、「うちの両親北海道の帯広郊外に住んでるんだけど、停電で大変でしょ?って電話したら『いやいや、今夜はご近所さんと冷凍庫の食材持ち寄ってバーベキューだから贅沢だよ それに10日間は十分凌げる備蓄があるからキャンプ気分で過ごすよ』って父。備えあれば憂いなし。見習いたいものだ。」とツイート。北海道の人たちの生活を知らせていました。

うちの両親北海道の帯広郊外に住んでるんだけど、停電で大変でしょ?って電話したら『いやいや、今夜はご近所さんと冷凍庫の食材持ち寄ってバーベキューだから贅沢だよ😁それに10日間は十分凌げる備蓄があるからキャンプ気分で過ごすよ』って父。備えあれば憂いなし。見習いたいものだ。

— きよきよ@Dハロ海賊9/16海17陸 (@kiyokiyokingdom) September 6, 2018

 北海道民の冷凍庫内にはジンギスカン用の肉が常備されているというのは割とよくある事で、近所の人や仲間と屋外で「ジンパ(ジンギスカンパーティー)」を行ったりする文化があります。また、都市部はともかく田舎の方はスーパーなどが遠くて買い物に行くのが大変なので、大きめの冷蔵庫や冷凍庫を用意して食料を備蓄し、買い物に出かける回数が少なくても大丈夫なようにしているところもしばしば。こういった事情で、今回の震災で電力の復旧に時間を要する状態となってしまった場合には、そんな形で常備していた肉が意図せず解凍されてしまうという事になるのです。

 冷凍庫の食材は電力がすぐに復旧すればそんなに傷まず、解凍される事も少なくて済みます。しかし、今回の地震では電力需給バランスが大きく崩れて道内全域が停電してしまった上、電力の復旧に数日かかり、常備している冷凍品も軒並み解凍されてしまう事となってしまった模様。冷凍食品や肉類など、解凍されたものを腐らせずに活用する方法は、なんといっても食べてしまうのが一番です。

 そして、ひと家族だけという単位で過ごすよりも、何家族か集まった方が気持ちも落ち着きやすく、災害時における不安の軽減という点でも有効です。中には、「こんな時に集まってわいわいやるなんて不謹慎に思われないだろうか?」といった不安も被災した人の中からも聞かれますが、萎縮して余計に不安を強めるよりも、同じ状況に陥っている人々とコミュニティを作って食品をシェアする事の方が有益なのではないでしょうか。

 今回の災害は非常に広範囲に及びました。北海道でも災害の程度が激しかったところ、家屋の損壊など地震による直接的被害はまぬがれたがライフラインが絶たれたところなど、被災状況は様々です。家屋に危険がある場合は避難所生活や災害用住宅への転居もありますが、そこまで被害が及ばなかった地域では「在宅避難」という手段も。お互い顔なじみのコミュニティに留まる事自体も、二次災害を防ぐという減災に繋がります。

■ 熊本地震で注目された「#被災飯テロ」のハッシュタグ

 ちなみに2016年4月に発生した熊本地震では、被災者発信による「#被災飯テロ」というハッシュタグで、被災した人たちの食の工夫や知恵などが、いわゆる飯テロ画像と共にSNS上を賑わせていました。

冷蔵庫で「解凍」された七城豚肩ロースと、ハーブ花壇からちぎってきたローズマリーとタイムでポークソテーだー!#被災飯テロ pic.twitter.com/vDMM1qBF68

— 肉食の魔王Dark=Kochang (@dark_kochang) April 17, 2016

朝はベーコン餅。
阿蘇の有名な燻製屋、ひばり工房さんから回ってきたベーコンさ!#被災飯テロ pic.twitter.com/Zt2UbMpHLo

— 肉食の魔王Dark=Kochang (@dark_kochang) April 18, 2016

 被災したらまず身の回りの安全の確保は言うまでもありませんが、安全が確保できた次に必要なのは、食の確保。こんな不安で気がめいりそうな時ほど、しっかりと食べる事は何よりも大事。そして解凍されたものをダメにするくらいなら、豪勢にした方がずっとマシ。逆に自分の身に降りかかった災害を笑い飛ばすようにした方が、精神衛生上も「災害うつ」などの症状に陥ることを防いでくれます。世間の目を気にするよりも、自分の体とメンタルを守るほうが先決です。

 今回、記事に取り上げる上でツイートを調査(2018年9月6日~11日)したところ逆に目についたのは、「こんな時に」と罵る人よりも、被災後に「不謹慎かもしれないけど」と負い目を感じつつ、バーベキューや野外での調理をしている人が多かったこと。これは批判の声よりも3倍ぐらい多く見られました。人によっては、家財道具が散乱していて家屋内で料理ができる状況ではないから、屋外調理をして、その状況を落ち込みのではなくプラスに捉えようとツイートしているかもしれません。身の安全が確保できているのであれば、被災時における野外での煮炊きは決して不謹慎ではない、という声、もっと広まって欲しいと思います。

<記事化協力>
ウリボー2号さん(@uribo2)
きよきよさん(@kiyokiyokingdom)
肉食の魔王Dark=Kochangさん(@dark_kochang)

※見出し画像は写真ACより。

(梓川みいな)

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