こんな帆船もあり?エアバスが大型船を「パラセーリング」
おたくま経済新聞 / 2018年9月13日 17時6分
SeaWingの予想図(Image:Airbus)
かつて、帆船は船の主流を占めていました。大きな帆を掲げて風の力で進むその姿は、まさに「海の女王」の風格があります。しかし風によって速度が左右されること、そして操船に高い技術と人手がいることなどから、現代ではエンジンを用いる船(汽船・動力船)が主流となり、帆船は操船を学ぶ練習用や、ヨットなどの小規模なものに限定されるようになっています。でも地球環境、気候変動の問題が注目を集める中、変わった形で風を利用する船の構想が持ち上がっています。
航空機メーカー、エアバスが2018年8月4日(ヨーロッパ中央時間)に明らかにした、グループにおける二酸化炭素(CO2)の排出削減に向けた取り組みで、大型貨物船に搭載する「シーウイング(SeaWing)」というパラグライダー型の凧(たこ)の構想が披露されました。これはエアバスグループ内にある、エアシーズ(AirSeas)というスタートアップによって開発されたものです。
シーウィングは普段、大型船の船首部分に折りたたんだ形で搭載されています。船橋(ブリッジ)からのスイッチ操作で、追い風を受けていると判断されると自動的に前方(風下)へと展開されます。形はパラグライダーやパラセーリングで用いられている「パラフォイル」と呼ばれる一種の翼型をもったもの。空気をせき止めるだけの単純なパラシュート型と違い、中に風を通すことで飛行機の翼のような形になり、揚力が発生します。これにより、単に風をはらむだけの従来の帆よりも効率よく風の力を利用できるのです。
方向の制御も、パラグライダーと同じく、繋がっているロープを操作することで可能。現代の大型船には風向きやその強さ、海流などのデータがリアルタイムで計測されており、そのデータを用いて自動的に効率の良い方向へシーウイングを動かすことができます。風が弱まったり、風向きがよくない状態になった時は、また自動的に回収されて折り畳まれ、次の機会に備えることに。
エアバスでは、このシーウィングを展開して風の力を利用することで、現在ヨーロッパとアメリカの工場を行き来している部品運搬船の燃料を20%削減することを目標に掲げています。これは二酸化炭素排出量に換算すると、年間で8000トンにもなるとのこと。
地球環境、特に気候変動の問題で二酸化炭素排出削減への努力が叫ばれる中、こんな形で帆船のようなアイデアが復活するというのは、なかなか興味深いものがあります。しかも、航空機メーカーらしく、航空力学を応用しているのも面白いですね。エアバスの取り組みがどのように実を結ぶのか、注目です。
Image:Airbus
(咲村珠樹)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ちょっと異例!?「最小のエアバス」一体何がいいのか? 米でも大人気なのは“異色の経歴”ゆえ?
乗りものニュース / 2024年9月20日 7時42分
-
気候変動対策資金巡る米中協議進展=米特使
ロイター / 2024年9月7日 2時45分
-
脱臭プロセスのCO2削減を初期投資ゼロで提供するサービス「D-Remove」の開始
PR TIMES / 2024年9月4日 17時15分
-
大変貌!“青いさんふらわあ”2番船ついに進水 「さんふらわあ ぴりか」 LNG燃料船「かむい」と2隻体制そろう
乗りものニュース / 2024年9月4日 15時12分
-
新世代炭素繊維材料を採用、143mの超大風力発電ブレード―中国
Record China / 2024年8月28日 13時30分
ランキング
-
1「SHOGUN」エミー賞受賞を喜ぶ人と抵抗ある人 日本人がアメリカで最多受賞した本当の理由
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 13時0分
-
2「高齢者に炭水化物は毒」は大ウソである…長寿国では「パン、そば、うどん」をもりもり食べている事実
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 15時15分
-
3「ぜんたーい、止まれ!」その入場行進なんのため? 元体育主任が語る、運動会で廃止すべきこと3つ
オールアバウト / 2024年9月20日 20時35分
-
4朝食前に歯を磨かない人は「糞便の10倍の細菌」を飲み込んでいる…免疫細胞をヨボヨボにする歯周病菌の怖さ
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 14時15分
-
5メルカリで「マイナス評価」が1つでもあったら売れなくなる? 購入を敬遠される可能性も……
オールアバウト / 2024年9月20日 20時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください