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キャンピングカーで全国ぶらり旅 住所移動無飾「うめのさん」に聞く自分らしい生き方

おたくま経済新聞 / 2018年9月19日 12時21分

キャンピングカーで全国ぶらり旅 住所移動無飾「うめのさん」に聞く自分らしい生き方

画像提供:うめのさん

 毎日同じ時刻の電車に乗り、すし詰め状態の車内でイライラしながら職場へ向かう度「今日も仕事か……」と心の中で、舌打ちをしている人も多いのではないでしょうか。

 昨今では、少子高齢化や生産人口の減少、育児や介護などの両立のため、働き方のニーズも多様化しています。この状況を打開すべく政府が推進しているのが「働き方改革」。現在では、リモートワークやパラレルワークなど勤務時間や一つの仕事に縛られず、自由度の高い働き方が出来る環境になりつつありますが、日本でこの働き方が浸透するまでもう少し時間がかかりそうです。

 そんな中、特定の家を持たず、キャンピングカーで暮らしながら「自分らしく生きる」を実践している女性がいます。それが今回の主人公「うめのさん」。以前からTwitterやYouTubeで配信しているその暮らしぶりに憧れを抱いていました。桜とともに北上する全国横断ぶらり旅や、少しでも会いたい人、気になることがあるとすぐ車を走らせどこまででも行くパワフルさ。

 彼女のnote(メディアプラットフォーム)にはこんな言葉が書かれています。「定年後の夫婦じゃなきゃダメですか?」。キャンピングカーでの全国ぶらり旅というと、今や定年後の夢の一つとして人気があります。でもできれば本当は若いうちにやってみたい……。それを「ダメではない」と実践して示したのが今の彼女の生き方。

 とはいえ彼女は普通の女性。新車だと一千万円はするキャンピングカーを簡単に買えるはずがありません。そこで働いたお金をコツコツ貯金し、なんとか手の届く250万の中古車(ぽっぽ号)を2016年に購入。しかし、内外ともに少し修理が必要だったため、手先が器用なお父さまに預けて時間をかけ修理の手を加えていってもらったそうです。

 そうして彼女の旅はようやく2017年7月5日にスタートしました。そこから2018年4月30日まで日本一周の旅に出たうめのさんに、気になるあれこれ聞いてみました。

――うめのさんが、住所移動無飾という肩書きで、活動し始めたのはいつ頃からですか?

 「住所移動無飾」という言葉を使い始めたのはここ3、4か月です。始めて私を知る人や、私のような生活を普段想像しない人に対して、キャッチコピーがあった方が親切だろうと思いました。私はきっと他の人が想像しやすい形の旅人でもYouTuberでもありません。かといって住所不定無職とはまたちょっと違うような気がして。「家ごと移動し飾らない人」という意味で住所移動無飾という言葉を作ってみました。

――キャンピングカーで日本縦断し、ローカルレポーターをし始めたきっかけを教えて下さい。

 私は北海道で生まれ育ちました。誇れる学歴もキャリアもなければ彼氏もいなくて。そんな感じで、地元で一番の都会にとりあえず住んで働いて、そのまま地元しか知らず1人で歳をとっていくと想像した途端ガッカリするぐらい自分ってものがつまんなくなっちゃったんですよね。「自分にすら飽きてる自分」に気付いた途端、生きてる感覚がよく分からなくなりました。

 飽きない為には環境を変える事が一番。北海道しか住んだことがないからあちこち行ってみよう。引っ越しとか面倒だから車に住めばいいんじゃない? じゃあ中古キャンカー買って全都道府県滞在してみよう。こんな感じでとんとん拍子に思いついたまま貯金を始めました。迷いはありませんでした。惜しまれる学歴もキャリアもない独り身なりの強みです。

 それがSNSを活用して現地をレポートする最初のきっかけは、こんなに自由な事独り占めしちゃっていいのかな?っていう私の勤勉な日本人感覚からくる不安を癒すためでした。お裾分けをして楽しんでくれる人が居れば嬉しいですしね。

――女性1人で旅する際に、危ない目にあったりはしなかったですか?

 実はあまり思い当たるエピソードがありません! SNSを見ていてくれて挨拶や差し入れを届けに人が訪ねてくることがありますが、いい人ばかりです。稀に、お酒を飲んで会いに来る人、なんとなく少し周辺をうろつく人なんかはいましたが(笑)。10代の女の子ならこれで十分怖がるんでしょうけど、私は経験上慣れてるので。

 今言った人なんかは、本当は緊張しやすかったり引っ込み思案な性格だけどなんか頑張っているんだなーと思うだけです。思い違いや面倒を察したらすぐに移動しますが。車に住むっていいですよ。家ごと遠くに逃げられますよ。

――YouTubeの活動や、単発バイトなどをしながら稼ぎつつ、安定のない道を志したその原動力はなんですか?

 実はなんにも志してないんです! よく「旅を仕事に!」みたいなビジネスモデルあるじゃないですか。そういう意識はまったくなく、自分に飽きない為にこの生活を始めたんです。で、続けてたら「差し入れがしたい」「支援したい」「グッズ販売して欲しい」って人が現れて。YouTube Liveに投げ銭機能があるのも教えてもらうまで知りませんでした。このままでもいいし、そうじゃなくてもいい。自分がずっと飽きないだろうと思える仕事があれば就いてみたいし、自分を求めてくれる職場があれば試しに行ってみるのも全然ありです。

 こんなこと言うと残念に思う人もいるかもしれないんですが、自分が自分らしくいる事が目的であとはすべて手段って感覚しかありません。

――一年のほとんどをキャンピングカーで過ごしてこられて、不便だなと感じたことや、逆に良かったことは何ですか?

 不便だと思った事はまったくありません。古いキャンピングカーで水道は壊れているし、冷蔵庫も使い物にならない。でも自分でホームセンターに売ってるタンクを使えばいいし、生鮮品はその日使うものだけ買ってクーラーボックスに入れればいい。常温の飲み水は内臓を冷やさず美容にいいですよ(笑)。数千円のカセットガスコンロで簡単な料理が出来ますしね。

 良かったことは家ごと引っ越し出来る事です。燃費※が悪いのがつらいんですが、プライベートな空間を保ちつつどこでもいける。※リッター9キロほどだそうです。

――様々なローカルな場所を訪れてみて感動したエピソードや、思い出深い場所があれば教えて下さい。

 私が北海道の山育ちなので、北海道にはあまりないものに感動しますね。歴史的建造物やレトロな物、日本海の夕陽に、九州の冬。それから、酷道でもないのに「制限速度20」の標識!

 沢山の出会いもありましたが一番印象深いのは、春に熊本から北海道まで毎日桜の花を見る挑戦中に伊豆半島の下田に訪れた時の事です。路上で大量のLPレコードを安価で売っているおじさんと会いました。なぜ苦労して集めた大切なコレクションを手放すのか聞いたらさらりと「終活」って答えたんです。決してお金に困っているわけじゃなくて、自分の良いと思う物を出来るだけ対面で手から手と。路上で活動を始めてから色んな地域や国の人と話せて楽しいと話してくれました。こういう形の死にゆく準備もあるんだなと衝撃を受けました。旅は景色やグルメだけじゃない。そこに根差して生き抜く人の姿を見る機会を得るのもまた旅なのだと改めて実感した出来事でした。

 この偶然の出会いは私がYouTube Liveの生配信しながら街歩きをしている時に起こりました。
日本一周女ひとり旅253日目。伊豆半島の下田公園で桜Live(https://www.youtube.com/watch?v=eyJqRQtmq3k)

――レポートをする際に気を付けていることはありますか?

 全てを見せ尽くさない事です。例えば、神社やお寺の本殿を正面から間近に映すことは神仏に対して不親切です。人気観光地など視聴者の関心の多い場所でも、通行人やお子さんの顔がアップで映ってしまいそうな場合は配信自体を諦める事もあります。こういうマナーは常に意識するようにしています。

 他にも撮影許可が厳しくなくともあえて全部見せ尽くさないようにすることも多々あります。代わりに何か1つでもいいから知識やエピソードを事前に仕入れて紹介したり、ぱっと見で注目されにくい箇所を自分なりに掘り下げて話してみたりします。「もっと見たい、知りたい」という声があれば「是非来てみてください!」と答えます。逆に体験型観光やグルメのレポートは進んで映します。「やりたい、食べたい」と思ってほしいからです。

 配信を生業にしている人の中には、ついなんでも視聴者に見せるという傾向があるように思います。人の「見たい」に応えればその場の視聴数やコメントをたくさん得る事が出来るでしょう。インターネットで見て済ませられる便利な目になりたいのか。それともローカルに人を呼び込む小さなきっかけになりたいのか。私は後者でありたいです。

――うめのさんのように、自由に自分らしく働きたいと思っている人は多いと思いますが、なかなか行動に移せない人も多いと思います。その人たちに向けて、何か言葉をかけるとしたらどのような言葉をかけますか?

 自分らしく働くって事を考えの中心に置くのはやめてください。「自分らしく生きる」を中心にしてあげてください。
自分らしく生きるには何がどれだけ必要かを考えれば、自分に必要なコストやスキルがわかるし、今ある要らないものにも気付きます。目的と手段をはっきりさせれば行動しやすいです。もしくはこれでいいんだ、とすっきりするかも。

 それから世間は年収や業種や肩書にある意味コンプレックスを持たせるような言葉を私たちに投げかけてくることがたびたびありますが、大切なのは自分が心身共に健康でいられる事ですよ。すべての土台はこれです。

――うめのさんは、これからローカルレポーターとしてどのような場所を訪れたいですか?

 全都道府県滞在したので行きたい場所はある程度いきましたが、お祭りなどの季節的なイベントは時期が合わないとみれないのでチャンスがあれば見たいですね。あと、私の活動を知ったうえで「宣伝になるかも?」と呼んでくだされば出来るだけ出向きたいです。出来れば地方の生産者さんや自治体から。飲食店もいいですね。私はローカルと美味しい物が好きだから。またはマニアックな情報を集めているメディアとタッグを組めたら面白いだろうな。

 理想はさておき、とにかく自分が面白いと思う場所に行きたいです。万人ウケとかマーケティングとかはあまり考えたことはありません。うめのが楽しいと思わないと本末転倒でしょ!?って堂々と言いながらやってます。それでも見てくれる人って…本当親切な人たちですよね…。

――最後に、うめのさんが「これから挑戦してみたいこと」を教えてください。

 してみたいというか、挑戦中なんですがバック転がしたいです! ヒーローやアクションに憧れがあって、もし自分がバック転出来たら…! ってTwitterで鼻息荒く呟いてたんですよ。そしたらイバライガーっていう高クオリティなローカルヒーローがいる茨城元気計画さんに「教えようか?」って言っていただけて。日本一周中にショーを見て大興奮していた私を覚えていてくれたみたいです。

 北海道から茨城行っちゃいますよね。「札幌にバック転教室ないの?」ってめちゃめちゃコメントでいわれますよ。でもそういう事じゃない。ヒーローアクターに教えてもらえるっていうのがすごいじゃないですか!効率とかどうでもいいですね。興味ないです。ワクワクするかしないかが一番大事です。結果訪問中には完全マスターに至らなかったんですけど…。また行きます。腕の筋力不足がわかったので今鍛えてます。

 ざっくりと駆け足インタビューになりましたが、気になるあれこれに答えてくれたうめのさん。現在は実家の北海道に滞在しているそうですが、先の北海道胆振東部地震が発生してからは地元のボランティア活動にも参加しているそうです。とはいえ彼女の旅はまだまだ続くようで、これからもちょこちょこ旅に出て行くそうですよ。うめのさんの現在の活動および旅の様子は、TwitterおよびYouTubeで配信されています。過去のバックナンバーも見応え十分なので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。少しでも旅に出た気分が味わえますよ。

<取材協力>
うめのさん
キャンピングカーに年間330日以上暮らす住所移動無飾。
その生活ぶりや現地の様子を配信しながら勝手に全都道府県滞在&桜前線追尾する289日間の日本一周を果たす。現在も長期の旅でレポート配信をしたりご当地レトルトカレーの食レポをしている。影響を受けたものは電波少年、タモリ倶楽部、勝手に観光協会

HP:https://www.umenonotabi.com
Twitter:@UmeGohanTudu
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCU96TPgZ_cXtBp29EmabUtQ
SUZURI:https://suzuri.jp/UmeGohanTudu

(黒田芽以)

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