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「実在しない女性の落とし物」が販売中 落とし物から見えてくる人物像とは

おたくま経済新聞 / 2018年10月15日 12時10分

「実在しない女性の落とし物」が販売中 落とし物から見えてくる人物像とは

画像提供:マニアフェスタ

 雑誌の特集やテレビ番組などでも未だにバッグやポーチの中身特集が組まれるのは、一体なぜなのでしょうか? 筆者なりに考えてみたのですが、普段おおっぴらに詮索できない分、他人の懐をチラ見できるというこの背徳感がたまらないということなのかな? と思います。それに近い体験をすることができるグッズがTwitterで話題になっていました。

【商品ピックアップ】

◎実在しない女性の落とし物 ¥720

7歳からありもしない町の空想地図を作る地理人さん(@chi_ri_jin)。その町の住人である「女性3人の落とし物」が買えるよ!「無い店のポイントカードやレシート」「いない人の名刺」など。無いのにいかにもありそうで、人柄まで推測できちゃう pic.twitter.com/2M6rNOtRU3

— マニアフェスタ (@maniafesta55) 2018年10月8日

 話題の商品は「空想落とし物シリーズ」。もともと地図好きで、地図関連の自営業をしているという今和泉隆行さん(通称、地理人さん)が制作されたもの。東急ハンズ新宿で2018年10月10日~24日にかけ開催されている、いろんなジャンルのマニア、研究者、専門店がぞろりと勢ぞろいするイベント「マニアフェスタ × 東急ハンズ」のアカウントが出品商品の一つとして紹介したところ、注目をあつめました。

 この「空想落とし物シリーズ」は、実在しない空想都市に住む3人の女性の落とし物(各720円)。落とし物から、その人の日常生活や価値観を想像して楽しめるという趣向で、架空のお店のポイントカードやレシート、架空の人物の名刺などが入っています。リプライには、実際に教育現場で架空の人物の落とし物から人物のカテゴリーを推測させる授業があるという話から、物から広がる社会背景を分析・想像することは、学習にもつながるといったコメントも寄せられていました。


 4、5歳くらいから地図をよく見ていたという地理人さんは、7、8歳の頃にはごっこ遊びの感覚で、ありもしない町の架空地図を作っていたそうです。そんな架空の地図や架空のカード・レシートを製作することになったきっかけや商品化した際のエピソードなどを詳しく伺いました。

マニアフェスタ(東急ハンズ新宿店、10/10〜24)、始まりました。空想地図に空想落し物がお買い求めいただけるこの機会、ぜひお越し下さいませ。(本日は21時までいます) pic.twitter.com/0KBFzXKP8o

— 地理人 (@chi_ri_jin) October 10, 2018

――3人の女性の日常生活が垣間見える商品ですが、なぜそのようなものを作ろうと思ったのでしょうか? 他にもシリーズはありますか?

 実はもともと空想地図を作っている上で、「日常的に使う、特別感のない道具」(多くの人からしたら大したことのないもの)から、その社会や人々の動きが読めてくる…想像力拡大率が高いものだな、と思っておりました。元は平面のデータの羅列で、立体的以上のリアリティを、見る人の想像力で浮かべてしまう、ということなので。見る人の潜在的な想像力の凄さを引き出すこともまた、おもしろくもあります。ここで街の3Dや映像を用意してしまうと、モノはすごいのかもしれませんが、想像力拡大率はそう高められません。そこで、こうした想像力拡大率を高めるものは他にないか…と思った際に、レシートやカード類…といった、人々が注目もしない、なんなら本人にとってはタダで手に入る日常生活用品なんかいいな、と思いました。もともと私が商業施設趣味だったこともあり、商業施設の店舗名やロゴを考えること、その店舗のターゲット層や人々の日常を考えるのが好きだったのです。
気づけば人間関係のカバー領域が広がっていて、いろいろな人と接する機会が増えました。こうすると人々のリアリティ観察の機会も多く、人々の日常が少しずつストックされていた、という面もあります。

 空想落とし物シリーズは、昨年、都城市立美術館の「南九州の現代作家たち MESSAGE2017」に出展したのがはじまりです。展示会場が広く、新作を作るにも地図は制作時間がかかりすぎるのと、地図ばかり増えても多様性に欠けるので、地図より短時間で作ることができ、多様性を担保できるものとして新登場しました。

高山綾さん 福野葵さん 大堀玲愛さん

――他人の生活を覗ける感じがして、なんとなく得した気分になりますよね。

 まさに、普段はなかなか見られないもので他人の生活を覗く…そのおもしろさです。見る人が見る人の想像力で妄想して楽しむモノとして、楽しんでもらえればとは思っております。ただ、まぁどちらかというと作りたいから作った…に近いです。

――ある程度人物像は考えて作られているのですか?

 人物像は、そうですね。架空ながら、もうよく知ってる友達で代弁者になれる状態で、その人になりきって何をしそうか、どんなブランドや購買行動を好みそうか、のイメージをします。終盤ではそれでもアイデアに詰まり、Facebookで募集したところ、たくさんの意見をいただき助けてもらいました。私の友人の行動経験、観察力、妄想力…も最終的にはお借りした形です。

――「落とし物」は、学校教育にも使われていたりするのでしょうか?

 落とし物は使われておりません。空想地図については空想地図キットを用意し、大学の授業や図書館等公共施設のイベントで使われることはあります。

――購入される方はどういったことを目的に購入されるのでしょうか?

 さぁ…わかりません。

――こちらの架空のレシートやチケットの制作は、考案してから形になるまでどのぐらいの期間がかかりますか?

 入念に準備をすれば良いのでしょうが、大抵直前に慌てて作るので、2週間くらいで間に合わせる形になります。

――商品化した際の周りの方の反応はどうでしたか?

 今回の東急ハンズイベント(マニアフェスタ)の主催者、別視点さんは「これは売れる!」と仰っているのですが、「誰がどんな目的で買うの…?」という声もあります。誰がどんな目的で買うのかは、私もよくわかりません。

――今後やってみたいことや、展望を教えてください。

 怠惰な本性を丸出しにしていえば、やりたいことがあるというよりはどちらかというと寝てたいので、寝て暮らせるよう生産性を上げた社会生活を送りたいのですが、全く社会的価値と違うロジックで手を動かし、衝動的にいろいろ作ってしまう手、というものに悩まされています。ただ、この衝動的に作ってしまったものの副産物が活用される面もあり、それによって生活が成り立っている部分もあるので、基本的には作りたい衝動と社会性の両者を保つ適度なバランスを試行錯誤していければと思っています。

マニアフェスタでの新商品、空想落とし物・3人の女シリーズ。たった3枚のカードと2枚のレシートから覗く健気な日常。パッケージ裏面に見えそうで見えない顔写真と観察結果を掲載。1人目は高山綾さん。勉強も仕事もできてキレイなパーフェクトさん。なのに、自信がない…!?https://t.co/FdOIqLlNB8 pic.twitter.com/wYTyy95KIU

— 地理人 (@chi_ri_jin) October 9, 2018

2人目は福野葵さん。あるとき振り切ってオーガニック志向の自由人に。肩書きのない自作名刺がそれを表します。しかし「瓦木八香堂」って何の店なんだ。3人目は大堀玲愛さん。こちらにはまた別の「自由人」の姿と言えるでしょう。着ぐるみパジャマのウェンディって誰やねん。https://t.co/FdOIqLlNB8 pic.twitter.com/NsOp6nPiM6

— 地理人 (@chi_ri_jin) October 9, 2018

<記事化協力>
地理人さん(Twitter:@chi_ri_jin / 地理人研究所:http://www.chirijin.com/)
マニアフェスタ(Twitter:@maniafesta55 / 東京別視点ガイド:http://www.another-tokyo.com/)

(黒田芽以)

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