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もうひとつのパラリンピック 傷痍軍人が競う「インビクタス・ゲームス」に注目

おたくま経済新聞 / 2018年10月25日 16時30分

もうひとつのパラリンピック 傷痍軍人が競う「インビクタス・ゲームス」に注目

インドアロウイング男子銀メダルのマーク・パーキンス選手(イギリス)

 東京オリンピック・パラリンピックを2020年に控え、オリンピックやパラリンピックの話題が増えてきました。特にパラリンピックの場合、競技や大会全体を紹介する広告などが目につきます。

 ところで、体に障害を持ったパラアスリートが競う世界大会がもうひとつあるのをご存知でしょうか。任務や訓練の際に負傷し障害者となった、いわゆる傷痍軍人たちが競うスポーツの世界大会「インビクタス・ゲームス」が、2018年10月20日からオーストラリアのシドニーで開催されています。

 インビクタス(Invictus)とはラテン語で「不屈の」という意味。障害を負った軍人たちが不屈の闘志で競技に挑む大会、というものです。

 創設のきっかけは、アメリカで行われている傷痍軍人たちのスポーツ大会「ウォリアー・ゲームス(Warrior Games)」を視察したイギリスのハリー王子が、競技に打ち込む選手たちの姿に感銘を受けたことに始まります。スポーツが傷痍軍人たちのリハビリや社会復帰に果たす役割の大きさを知ったハリー王子は、イギリスでもウォリアー・ゲームスと同じような傷痍軍人によるスポーツ大会を開催したいと考えました。

 大会を開催する主体として「インビクタス・ゲームス財団」を設立し、2014年ロンドンのクイーン・エリザベス.オリンピックパーク(2012年オリンピック・パラリオンピックロンドン大会のメイン会場)で第1回の「インビクタス・ゲームス」を開催。この時はイギリスを含む13か国から400人を超える軍人・軍属(退役含む)のパラアスリートが集まり、様々な競技を行いました。

 以来インビクタス・ゲームスは、2016年に第2回をアメリカのオーランド(フロリダ州)で、そして第3回をカナダのトロントで開催しました。そして2018年10月20日から、第4回大会がオーストラリアのシドニーを舞台に開催されることになったのです。シドニーでの第4回インビクタス・ゲームスは、18か国から500人以上のパラアスリートが集まり、11の正式競技と、公開競技としてゴルフと車いすテニスが行われています。

インビクタス・ゲームスのメダル

 大会を企画したハリー王子もメーガン妃とともにシドニー入り。気さくに子供たちと写真撮影などに応じています。ハリー王子夫妻は各表彰式のプレゼンターも務めます。


 またオーストラリアが生んだ水泳界のヒーロー、イアン・ソープ氏も大会に協力しています。

 開会式が行われたのはシドニーを代表する建物であるオペラハウス。会場には参加各国の国旗とともに、インビクタス・ゲームスの旗が掲げられました。



 戦乱が続くアフガニスタンからも選手団がやってきています。アフガニスタン軍のトップや、アフガニスタンに派遣されているNATO諸国の司令官たちも選手たちを激励。全部で11名の選手がシッティングバレーボール、インドアロウイング、パワーリフティングに参加予定です。長引く戦乱で傷つく兵士が多いだけに、スポーツを通じて社会復帰への意欲が高まることを期待したいものです。

 競技は基本的にパラリンピックと同じ。しかしパラリンピック競技全てが行われるわけではなく、一部の競技となります。軍人たちの競技会だな、と思うのは、射撃競技やアーチェリーの選手が多いこと。やはりそれまでの経験が生きるからでしょうか。もちろんパラリンピック同様、障害の重さによってクラス分けがなされています。

 パラリンピックにない競技としては、ジャガー・ランドローバー・ドライビングチャレンジというものがあります。これは大会のスポンサーになっているジャガー・ランドローバーグループの自動車を使って行うジムカーナ競技。ただし、通常のジムカーナ競技とは違い、コースには水を張ったところもあり、ただ速く走るだけではうまくいきません。いかに正確に走るかが問われます。


 自転車競技では通常の自転車に加え、座ってこぐタイプ(リカンベント)、座って手の力でペダルを回すタイプ(ハンドサイクル)の自転車が競技に使用されます。スピード感はかなりのもので、アスリートのパワーを感じさせます。



 軍人の迫力とパワーを感じさせるのは車いすラグビー。時には激しいチェックで車いすが壊れてしまうことも。もちろん、チームにはメカニックが同行しており、車いすはすぐに修復されます。

 同じくパワーリフティングも見ていて力の入ってしまう競技。女子のオーストラリア代表、ニコル・ブラッドレー選手は2位に入ってコーチのヘイルボーンさんと抱き合います。

 団体競技で参加チームが多いのはシッティングバレーボール。他の競技と掛け持ちになる選手もいるアフガニスタンチームも健闘を見せています。この競技は男女混合となっており、オランダチームは女子選手が男子選手に交じってプレーしていました。



 インドアロウイングも熱い戦いが繰り広げられます。イギリス代表(海兵隊出身)のマーク・オームロッド選手は両足と右腕を失っており、左腕と義手でバーを引っ張ります。

 インビクタス・ゲームスにもママさん選手が出場しています。インドアロウイングに出場したオーストラリアのエミリー・ミスコ選手は、会場で応援してくれた幼い我が子に優勝を捧げました。

 シドニーでのインビクタス・ゲームスは、アーチェリー、陸上競技、インドアロウイング、ジャガー・ランドローバー・ドライビングチャレンジ、パワーリフティング、自転車競技(ロードレース)、ヨット(セーリング)、シッティングバレーボール、水泳、車いすバスケット、車いすラグビーの正式競技にゴルフと車椅子テニスを加えて10月27日まで開催されます。この中で活躍した選手はパラリンピック東京大会に出場することもあるので、公式サイトや公式Twitterアカウント(@InvictusSydney)で熱戦をチェックしてみてください。

Image:Invictus Games Sydney 2018/Crown Copyright/Commonwealth of Australia, DoD/U.S.DoD

(咲村珠樹)

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