現代に蘇るヴァイキングの暮らし タイムスリップしたような緩やかな時の流れに心癒やされる
おたくま経済新聞 / 2018年12月3日 17時49分
画像提供:日本ヴァイキング協会
AIの技術が進歩し、あと数十年後にはロボットのいる日常があたりまえ……なんてことが考えられています。そんな目まぐるしく変化する環境に、ついていけないと感じている方も多いのではないでしょうか。因みに筆者もその一人。心が疲れた時は、なぜか緑が恋しくなってしまいます。これはもしかしたら、人間の生命維持装置のようなもので「森にお帰りー」と本能が叫んでいる証拠なのかも? というようなことを考えながら、Twitterを見ていると、面白い活動をしている団体を発見しました。
現代からタイムスリップしたような1000年前のヴァイキングの集落を公園やキャンプ場で再現し、ヴァイキングの服づくりや料理、テントの組み立てなど、その当時の古き良き文化を伝えている日本ヴァイキング協会さん。ここでは、極力現代で使用されている物を減らし、自然の中でゆったりと流れる時に耳を傾けながら、ヴァイキングの歴史や文化を体験できるそうです。
先週末はヴァイキングキャンプ!1000年前の集落へ。 pic.twitter.com/FOxzGtedBT
— 日本ヴァイキング協会/Japan Viking Association (@Japan_Viking) October 21, 2018
そもそもヴァイキングというと、武器を携えて金品を強奪する海賊の荒々しいイメージがありますが、もともとは8世紀、北欧のスカンジナビアに定住していた民族で、その多くは農民。牧畜を営み、狩りや漁、手工芸にも長けていたそうです。その後、高い造船技術を持っていたヴァイキングたちは、ヨーロッパ諸国に赴き交易を行い、さらなる新天地を求め、アイスランド、グリーンランド、アメリカ大陸と様々な国を開拓していったとか。
そんな独自の文化をもつヴァイキングの魅力を伝えるべく活動をしている日本ヴァイキング協会の本山さんに、そのきっかけやヴァイキングの暮らしについてお話を伺いました。
――ヴァイキングの活動はいつから日本で始まったのですか? そのきっかけを教えて下さい。
縁あって北欧でヴァイキングリエンアクター達に出会い、私自身のヴァイキング活動が始まったのは2000年のことです。以来、度々北欧で彼らと共に過ごし、過去の文化の中には現代に活かせる発見があると感じました。
この感覚を自分だけで持っているのはもったいない、日本で他の人達と共有していきたいと思う様になり、2017年より日本ヴァイキング協会を始めました。私たちの活動は、時を越えてヴァイキングの文化を体感できる場作りです。
――ヴァイキングは、始めの頃は北欧の寒い地域で独自の文化を持つ農耕民族だったのが、交易をはじめ海を渡りヨーロッパで金品などを強奪し恐れられるようになったのは、なぜですか?
外の世界に状況の変化を求めていたのだという解釈があって、今はこの考え方がしっくり来る様に思っています。つまり、自分の所だけで補えない物、物品、土地、経験、名誉などの必要性があったために、ヴァイキングは海を越えて他の土地に向かったということです。交易も略奪も植民も、彼らの生活を成り立たせるための手段の1つでした。
どの道を選ぶのかはその人の気質もあったかもしれません。現状にとらわれず改善を求めたヴァイキング精神は、現代でも見習い取り入れられるように思います。
――キャンプやワークショップをされているということですが、どのような人たちが集まるのでしょうか?
ヴァイキングその物や神話に興味を持っている方以外にも、ファンタジーが好きな方や、ヴァイキングのことは知らないけれど活動に興味を持ってくれた方など、様々な方にご参加いただいています。
――当時の服装や、食べ物などを再現するリエンアクターと呼ばれる人たちは、日本で何人ぐらいいるのですか?
正確な数は分からないのですが、ヴァイキング時代や中世ヨーロッパの文化を再現している方は、日本にも多くいらっしゃる様です。先日のイベント、ヒストリカルビレッジがそうであった様に、これからその様な方々とも交流を深めていきたいと思っています。(リエンアクターという言葉は私が慣れているために使っていますが、他の方は別の言葉で表しているかもしれません)
――気になったのですが、普段つかっているヴァイキングテントは、たてるのに何時間ぐらいかかるものなのでしょうか?
私達が使っているのは、ノルウェーで発掘された構造のヴァイキングテントです。幕は帆布、フレームは木材でできています。木材をはめ込み、幕をかけるだけなので、分解組み立ては比較的簡単です。2人くらいで1時間弱あれば建てられます。重さがあり場所もとるので、組み立てよりも荷運びの方がずっと大変です。実際に使ってみると、当時一人一人が持って行けたわけではなく、限られた人だけが使えたことがよく分かります。
――ちなみに、当時のヴァイキングたちの毎日のスケジュールはどのようなものだったのでしょうか?
彼らの多くは牧畜を主体とした農民だったので、それらに関する業務を行っていたと思われます。また農民といってもそれを専属ということではなく、建築や鍛治なども自ら行うことができ、また時に交易やヴァイキング行(襲撃遠征)などに出向いていた様です。現代と異なる分業のない社会では、生活するために多くのことをこなす必要がありました。
――ヴァイキングの料理は、かなり本格的で興味深かったのですが、当時、塩などの調味料をどのように調達していたのでしょうか?
塩は、海水や海藻を乾燥させて作られ、調味料としても保存食を作るためにも欠かせない物でした。ディルやコリアンダーなどのハーブは自生していて、香り付けに用いられていた様です。
――服装など麻でできたものを着ていたとのことですが、実際の着心地はどんな感じですか?
私にとっては正装なので、機能の面でも気持ちの面でも快適の一言に尽きます。麻やウールは、暖かさも寒さも直接的に感じられる様に思います。良い面も不便な面もありますが、それが1000年前にヴァイキング達が体感していた感覚なのです。ヴァイキング服を着ることは見た目の変化だけでなく、当時の空気を全身で感じることに繋がると思っています。
――これからのヴァイキングの活動でどのようなことを伝えていきたいですか?
「人は死を迎えるその日まで、快活で楽しく過ごすべきだ」というヴァイキングの格言があります。人によって興味のあることに違いがあると思います。例えば、料理や物作りが得意な人もいれば、神話や歴史に詳しい人、キャンプが好きな人もいるでしょう。こうでなければいけないということはなく、ひとりひとりが自分のペースで活動でき、皆で楽しく過ごせる場づくりを行なっていきます。
<取材協力>
日本ヴァイキング協会/Japan Viking Association
(HP:japanvikingassociation.com / Facebook:@JapanVikingAssociation / Twitter:@Japan_Viking)
(黒田芽以)
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