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故ブッシュ大統領「エアフォース・ワン」で最後の旅路

おたくま経済新聞 / 2018年12月10日 11時9分

故ブッシュ大統領「エアフォース・ワン」で最後の旅路

大統領専用機に向かう故ブッシュ元大統領の棺(画像:USAF)

 2018年11月30日に94歳で死去した、「パパブッシュ」ことジョージ・H・W・ブッシュ第41代アメリカ大統領。

 2006年12月26日に死去した第38代大統領、ジェラルド・R・フォード氏を上回る94歳171日という歴代最長寿の大統領でした(存命の大統領経験者では故ブッシュ氏の4か月年下である第39代大統領ジェームズ・E・カーター氏が最長老)。その葬儀が12月3日~5日にわたってワシントンD.C.で行われ、死去したテキサス州からの往復には「エアフォース・ワン」で知られる大統領専用機VC-25が使用されました。

 パーキンソン病により、2012年から車椅子生活を送っていたジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュ元第41代大統領。アイルランドのテノール歌手、ローナン・タイナン氏の歌に送られて、2018年11月30日にテキサス州ヒューストンにある自宅で息を引き取りました。おしどり夫婦で知られたバーバラ夫人が死去して7か月後のことでした。

 トランプ大統領は、ワシントン大聖堂で葬儀が行われる12月5日を故ブッシュ氏を悼む日とし、休日としました。それに先立ち、棺は12月3日から5日にかけて、かつて上院議員として登院したアメリカ国会議事堂に安置されました。

 ブッシュ氏が死去したテキサス州ヒューストンからワシントンD.C.までは、かなりの距離があります。このため、ヒューストン近郊にあるエリントンフィールド統合予備役基地(エリントン空港)から、ワシントン近郊のアンドリュース統合基地までを飛行機で移動することに。用意されたのはアメリカ空軍の大統領専用機VC-25。大統領搭乗時のコールサインから、俗に「エアフォース・ワン」と呼ばれる機体です。

 ヒューストン市警のオートバイ隊に警護され、専用の車でエリントン基地に到着した故ブッシュ氏の棺は、かつて所属した海軍、そして空軍、陸軍、海兵隊、沿岸警備隊の手によって丁重にVC-25(テイルナンバー29000)の機内へと運ばれました。この間、集まった各軍の兵士は捧げ銃で元大統領に敬意を示します。参列者が見守る中、棺は大統領時代に過ごしたキャビンへ。また、長男のジョージ・W・ブッシュ第43代大統領夫妻をはじめとする遺族、そして最後まで共にいた介助犬のサリー(「ハドソン川の奇跡」で知られるサレンバーガー機長にちなんで命名)も機内へ。

VC-25へ運ばれるブッシュ元大統領の棺(画像:USAF)
キャビンへと運ばれる棺(画像:USAF)
介助犬のサリーも共に移動(画像:USAF)
アンドリュース基地へ向けて離陸するVC-25「SAM41」(画像:USAF)

 第41代大統領だったことにちなんで「スペシャル・エア・ミッション41(SAM41)」というコールサインで離陸したVC-25は、12時10分(アメリカ中部時間)に離陸し、メリーランド州のアンドリュース基地へ。15時25分(アメリカ東部時間)に到着した棺は、アメリカ空軍音楽隊が演奏する愛国歌「My Country, ‘Tis of Thee(「アメリカ」の別名でも知られる)」、陸軍の弔砲21発に送られ、ここからは霊柩車で議事堂まで移動しました。

アンドリュース基地に到着した棺(画像:USAF)


 元大統領の棺が議事堂に安置されるのは、ブッシュ氏で12人目。また、遺言により空軍による「ミッシングマン・フォーメーション」が行われました。編隊飛行する飛行機のうち、1機が編隊を離れて空高く上昇し、魂が天へ昇る様子を表すパイロット達の追悼儀式です。かつて海軍VT-51、VT-153の雷撃機パイロットとしてTBMアヴェンジャーに乗り、第二次世界大戦に従軍(当時のニックネームは「スキン」)した経歴を持つだけに、パイロットとして送られたかったのかもしれません。

議事堂に安置された棺(画像:U.S.DoD)
サリーも議事堂で別れを惜しむ(画像:U.S.DoD)

 12月5日の10時に議事堂を後にした棺は、葬儀の行われるワシントン大聖堂へ。葬儀には遺族をはじめ歴代の元大統領らが参列。海兵隊オーケストラ、軍の合同合唱隊、沿岸警備隊音楽隊、そしてクリスチャンミュージック歌手のマイケル・W・スミス氏、亡くなる直前に歌を捧げたローナン・タイナン氏の歌と演奏で送られました。義足の歌手として知られ、1984年、1988年のパラリンピックで4つの金メダルをはじめ計7つのメダルを獲得しているタイナン氏は、ロナルド・レーガン第40代大統領の葬儀でも歌を捧げています。

議事堂を後にする棺(画像:U.S.DoD)
ワシントン大聖堂のミサでスピーチするブッシュ第43代大統領(画像:U.S.DoD)
ワシントン大聖堂で出棺を見守るトランプ大統領と歴代大統領(画像:U.S.DoD)

 葬儀が終わり、ブッシュ第41代大統領の棺はテキサス州に葬られます。このため、ふたたびアンドリュース基地からVC-25「SAM41」でエリントンフィールド基地へ。再び陸海空軍に海兵隊、沿岸警備隊の手によりVC-25の機内を後にした棺は、テキサス州スプリングにあるユニオンパシフィック鉄道のウエストフィールドから、大統領専用機のデザインをモチーフにした専用塗装を施されたSD70ACe形ディーゼル機関車「4141号機」(このデザインは2005年10月18日に新車として落成した際、ブッシュ元大統領にちなんで施されたもので、式典には生前のブッシュ氏も参列し、運転席で記念写真も撮影しています)が牽引する特別列車でカレッジステーションまで移動。大統領の棺が鉄道で移動したのは、1969年1月に死去したドワイト・D・アイゼンハワー第34代大統領以来となります。

特別列車を牽引したユニオン・パシフィック鉄道SD70ACe形ディーゼル機関車4141号機(画像:Union Pacific Railroad)
2005年10月18日、ディーゼル機関車4141号機の運転台でポーズをとるブッシュ元大統領(画像:Union Pacific Railroad)
特別列車に入る棺(画像:U.S.DoD)

 12月6日にブッシュ大統領記念館で行われたセレモニーでは、かつて所属した海軍からVFA-31、VFA-32、VFA-87、VFA-103、VFA-105、VFA-131、VFA-143の各飛行隊から、最大級の礼を示す弔砲の21発にちなんだ21機のF/A-18による「ミッシングマン・フォーメーション」が行われました。参加した機の操縦席には「PRESIDENT GEORGE H. W. BUSH “41”」のマーキングも。

コクピットに記されたマーキング(画像:U.S.Navy)
海軍によるミッシングマンフォーメーション(画像:U.S.Navy)

 この後、ヒューストンにあるアメリカ聖公会聖マルティヌス教会でミサが行われ、参列者は別れを惜しみました。

Image:U.S.DoD/USAF/U.S.Navy/Union Pacific Railroad

(咲村珠樹)

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