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三菱MRJ用エンジン国内組み立て1号機が完成

おたくま経済新聞 / 2018年12月13日 14時0分

三菱MRJ用エンジン国内組み立て1号機が完成

三菱重工航空エンジンで完成したPW1200G(画像:P&W)

 日本初のジェット旅客機として、現在型式認定を目指して試験が続けられている三菱MRJ。そのエンジンであるPW1200Gギアードターボファンエンジンの国内組み立て1号機が2018年12月12日、愛知県小牧市にある三菱重工航空エンジン株式会社(MHIAEL)の事業所で完成。完成後検査にも合格しました。ここで組み立てられるPW1200Gエンジンは、今後組み立てられる三菱MRJに順次搭載されることになります。

 PW1200Gは、アメリカ、プラット・アンド・ホイットニー(P&W)の開発したギアードターボファンエンジン(GTF)と呼ばれるもの。通常のジェットエンジンは、燃焼排気を受けて回転するタービンと、燃焼器へ送る空気を圧縮する圧縮機(コンプレッサー)やその前段のファンの回転軸が直結されており、同じ速度で回転するように作られています。エンジン前部から取り入れる空気をすべて圧縮・燃焼させるターボジェットエンジンの場合、それでもかまわないのですが、大型機などに使われているファンの直径が大きな高バイパス比のターボファンジェットエンジンの場合は少し違います。

 現在旅客機など大型ジェット機で使われている高バイパス比のターボファンジェットエンジンは、ジェットエンジンからの排気推力よりも、その前段にある大きなファンから生み出される気流の推力の方が大きくなっています。このため、実質的には「ガスタービン駆動のダクテッドファンエンジン」という表現も使われるほど。こういったエンジンの場合、できるだけ抵抗が少なく高速で回転した方が効率がいいタービンと同じ回転数でファンを回してしまうと、ファンブレードの先端が音速に近くなり、その衝撃波の影響を受けて送り出す風量が少なくなってしまい、逆にファンとしては効率が悪くなるのです。

 このため、なるべく高速で回転してほしいタービンの力で、もう少しゆっくりファンを回転させるため、歯車を使った減速機を間に挟んで動かすようにしたものがギアードターボファンエンジンというわけです。タービンとファン、どちらも効率よく回転させるために燃費が良くなり、速い流れのジェット排気(周囲の空気との流速差が大きいと排気音が大きく聞こえる)をもう少し遅いファンからの空気で包み込むようになるため、騒音も従来より低減することができます。

 三菱MRJは、空気抵抗を少なくした胴体形状と、抵抗と揚力の比率(揚抗比)を効率化した主翼を持っていますが、このギアードターボファンエンジンを採用することで、さらに燃費と騒音の環境性能を優れたものにしているのです。

 MRJに採用されているP1200Gは、三菱重工航空エンジンが燃焼器と高圧タービン部(高温高圧にさらされる重要部位で精密な材料加工が必要とされる)の製造を担当。さらに最終組み立てと完成品検査も担当しています。最終組み立てや完成品検査を行っているのは、カナダにあるP&Wのミラベル・エアロスペースセンターと、この三菱重工航空エンジンの2か所のみ。品質管理や技術的な面でのあつい信頼を勝ち得ている証明でもあります。

 国内組み立てのエンジンを搭載した三菱MRJは、今後この愛知県から巣立っていくことになります。

Image:Pratt & Whitney

(咲村珠樹)

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