NATOのAWACSが全機改修されグラスコクピット化
おたくま経済新聞 / 2018年12月21日 14時51分
![NATOのAWACSが全機改修されグラスコクピット化](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/otakuma/otakuma_20181221_06_0-small.jpg)
飛行するNATOのAWACS(画像:NATO)
2018年12月18日(アメリカ中部時間)、ボーイングはNATOの保有するAWACS(E-3セントリー)の近代化改修の最終号機をオクラホマ州にある工場でNATO側に引き渡し、2016年11月にシアトル工場で改修1号機を引き渡して以来、14機の近代化改修プログラムを完了したと発表しました。NATOのAWACSはこの近代化改修の完了で、2035年まで現役にとどまる予定としています。
AWACSは「空中警戒管制システム(Airborne Warning And Control System)」の頭文字をとった略称。実は狭義においては、E-3セントリーに搭載されたシステム(航空自衛隊のE-767にも搭載)の名称であり、通常の「早期警戒管制機」を指す言葉は「AEW&C(Airborne Early Warning & Control)」といいます。E-3セントリーは、それまでアメリカ空軍で使用していた早期警戒管制機、EC-121ウォーニングスター(ロッキードの旅客機L-1049スーパーコンステレーションがベース)を置換える目的で、AWACSを搭載した飛行機として旅客機のボーイング707(B707)をベースに開発されたものです。
見かけが似ているので誤解されがちですが、空中給油機KC-135をはじめとするC-135シリーズは、B707の母体となったボーイング367-80(通称:ダッシュ80)をベースに作られたもの。このためC-135シリーズとE-3は「おじと甥」のような関係です。なかなか並んで見る機会はありませんが、KC-135からE-3が空中給油を受ける場面では、似ているものの機体規模が違う(E-3の方が胴体も太く全長も長い)ことが判ります。ボーイング707をアメリカ空軍で輸送機として採用した際には、C-137と別の番号が付されています。
アメリカ空軍のKC-135から空中給油を受けるNATOのAWACS(画像:NATO)1977年3月からアメリカ空軍で就役したのを皮切りに、E-3はイギリスやフランス、サウジアラビアでも採用されました。NATOでは1982年2月から1985年5月にかけて18機が導入され、現在は全14機がドイツのガイレンキルヒェン基地で運用されています。このほか、前進基地としてギリシャのアクシオン基地(アクシオン空港)、イタリアのトラパニ基地、ノルウェーのオルランド基地、トルコのコンヤ基地が指定されています。機体の国籍はルクセンブルク大公国で、2018年12月現在でNATOのAWACSプログラムに参加しているNATO加盟国は17、そのうちルクセンブルクを除く16か国から搭乗員が参加しています。
NATOのAWACS(画像:NATO)今回の近代化改修では、コクピット周りのアビオニクス機器が大きく刷新されました。1970年当時のダイヤルやアナログメーターが並ぶ正面計器パネルは、5つのフルカラーデジタルディスプレイに換装。必要な時に必要な情報を大きく表示することができ、視認性が向上しました。また通信機器や航法装置も現代のレベルに合わせたアップデートがなされ、現用機、そして将来に採用されるであろう新しい航空機とデータ連携し、管制することが可能になっています。
NATOの改修前AWACSのコクピット(画像:NATO)
NATOのAWACS改修機のコクピット(画像:Boeing)
NATOの早期警戒管制(AEW&C)プログラムのゼネラルマネージャ、マイク・ヘイン准将は「この通信・航法・索敵・航空管制(CNS/ATM)近代化改修プログラムによって、NATOのE-3は現在、そして将来のヨーロッパにおける航空管制需要に応えることができるようになります」と、AWACS近代化改修の意義について語っています。
NATOの改修済みAWACSでのコクピットクルー(画像:NATO)
現在、NATOのAWACSは中東における「テロとの戦い」や、クリミア半島のある黒海地域において、上空からの警戒監視活動や、作戦機の航空管制任務に当たっています。中東や黒海・バルト海沿岸、そしてバルカン半島(コソボが現在保有する自衛隊的な治安維持組織を軍に再編する決議をしたことで、セルビアなど周辺国に緊張が走り、NATO事務総長が懸念を表明している)の情勢が緊迫化する中、NATOのAWACSが果たす役割は大きくなってきています。
Image:Boeing/NATO
(咲村珠樹)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
フライト時間は驚異の「45時間」! 米空軍の最新給油機 “ノンストップ“で世界一周飛行達成 航空自衛隊も同型機を導入
乗りものニュース / 2024年7月8日 17時12分
-
北海道に「タイフーン」戦闘機が飛来! 航空自衛隊と3国共同訓練へ 初来日の国って?
乗りものニュース / 2024年6月25日 18時42分
-
首都圏に「ラファール」戦闘機が来る! 航空自衛隊とフランスで共同訓練 どデカ軍用機も一緒
乗りものニュース / 2024年6月25日 15時1分
-
「戦闘機よりいいもの提供するから戦闘機はお預け」スウェーデンの真意は? ウクライナめぐる“空の争奪戦”勃発か
乗りものニュース / 2024年6月13日 6時12分
-
え、人いないの!? 世界最強ステルス爆撃機に「パイロットがセルフ給油」のワケ 実は“軍事的理由”が
乗りものニュース / 2024年6月11日 18時12分
ランキング
-
1空腹時の“炭水化物ドカ食い”は幸せだけど…話題の「血糖値スパイク」がもたらす“怖いリスク”<医師監修>
日刊SPA! / 2024年7月8日 15時52分
-
2「マジ…?」有料道路が無料化! いつもの道がタダに? 直近&来年に「無料開放された路線」とは
くるまのニュース / 2024年7月8日 7時40分
-
3サービス終了が発表されたLINE Pay、アプリは24年11月に利用停止…残高はいつまでに使い切るべき?
オールアバウト / 2024年7月7日 21時15分
-
4一番売れている「軽自動車の“王様”」はどれ?「23ヵ月連続ナンバーワン」も! 2024年「“軽”販売ランキング」トップ3
くるまのニュース / 2024年7月8日 12時50分
-
5笠原将弘氏が教える「トマトを何倍もおいしくする食べ方」 魔法のドレッシングが最高
Sirabee / 2024年7月6日 16時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)