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バンドマンの金欠事情 支出のモデルケース公開され界隈ざわつく

おたくま経済新聞 / 2019年1月11日 11時0分

バンドマンの金欠事情 支出のモデルケース公開され界隈ざわつく

正田やすしさん(@nobitter_sun)提供

 現代社会において、何をするにもどこに行くのもそれなりのお金がかかるものです。生活はもちろんのこと、夢を追うことですら必ず必要です。その夢を追うためのお金について、現役バンドマンの支出明細が公開され大注目を集めています。

 Twitterに投稿したのは、正田やすしさん(@nobitter_sun)。テレビで見たアイドルがキッカケで2歳で音楽に目覚めた正田さんは、結成12年のノービターという混声文学ロックバンドで、Vo.(ヴォーカル) Gt.(ギター)と作詞/作曲 を担当しています。

バンドマンってやたら「金ねぇ」って言ってる人、多くないですか?バンドマンが金欠になるそのカラクリを書いてみました。
全ての「まだ無名なバンド」を応援している人たちと、頑張っているバンドマン達に。届け!!!!!!! pic.twitter.com/SKg8SjeOQc

— 正田やすし🍣@ノービター (@nobitter_sun) January 7, 2019

 「バンドマンってやたら“金ねぇ”って言ってる人、多くないですか?」という問いかけから始まるツイートには、バンド活動にかかる費用を詳細に記した4枚のメモ画像が添えられています。ツイート文の最後に記された「全ての“まだ無名なバンド”を応援している人たちと、頑張っているバンドマン達に。届け!!!!!!!」には 、!の数だけバンドを応援している人たちと頑張っているバンドマン達に届いてほしい正田さんの熱い思いがほとばしっています。

 画像としてそえられている、正田さんのメモは大きく前半と後半に分けられます。前半は項目分けされていて、スタジオやレコーディング、ライブなどにどれくらいのお金がかかるのかという大まかな試算が具体的にテキストにまとめられています。

(以下、本文要約)
1.毎週のスタジオ代
週1で5000円くらいで月2万ほど

2.レコーディング代
CDとして商品化するなら「どんなにケチっても」30万円

3.プロモーション代
MV作りは工夫次第で上下するもののここでは5万円と仮定
音楽各社へ楽曲を売り込むための音源発送(CDR100枚購入=4000円くらい、送料200円×100社=2万)で2.4万
→計7.4万円

4.レコ発ライブ代(CD発売にあわせたライブ開催費用)
会場によってピンキリだけど独断と偏見で平均して13万円

その他、場合によっては機材搬入のための車の駐車場代、衣装代など……
(要約ここまで)

 バンドである以上、複数の楽器が集まって編成されていることが前提となります。それぞれの楽器のテクニックは各々個人練習で磨きますが、全体のバランスを調整したりバンドとしての課題を追究する上で集まって演奏する、「合わせ」は必要不可欠です。その合わせの場となるのが、練習スタジオなのです。正田さんはこのスタジオ代を、週一日利用として月に2万円と見積もっています。正田さんのメモでは同様に、レコーディング代、プロモーション代やライブにかかるお金などの試算した内容が記載されています。ちなみにプロモーション代に含まれているMVの制作費は内容でかなり変動するため、あくまで5万円と仮定されています。

 メモの後半には正田さんの思いが吐露されているのですが、3枚目では「俺も日々ギリギリだが頑張っている、みんな頑張ろうぜ」と、仲間に向けた熱いエールがつづられています。バンドを音楽を目指していく上で、お金に限らず様々な悩みや障害が目の前に立ちはだかることがあります。正田さんの熱いメッセージは受け取った人によっては、大きな力になり得るのではないでしょうか。




 これわかる、と正田さんのツイートとメモをすべて読み終えて素直に反応した筆者は、趣味レベルでしたがバンド経験があります。 正田さんに影響を受けて、大きな楽器を担いで電車に乗っている人に(心の中でそっと)今まで以上に大きなエールを送りたくなってしまいました。同じように感じた人から「ほんとそれ」「共感する」といった声が集まりました。一方で、「好きなことにお金を使うなら当たり前」 「夢が壊れる」 「触れない方がかっこいい」 といった否定的な意見も多く見受けられます。

 まさに賛否両論といった様相を呈していますが、こんな視点はどうでしょうか。正田さんの投稿はバンド活動における支出明細の典型的なケースのひとつです。 例えばスタジオ代ひとつにしても、バンドの編成や曜日、時間帯や地域によって変動する部分はありますが、正田さんの例は大いに参考になると思います。

 あこがれの職業に就くためにどうすればいいかと考えたときにまずネットで検索してみるという人は多いのではないでしょうか。そこから一歩進んで、実際にどれくらいの費用が必要であるのかまで検索することも少なくないはず。 バンドマンを職業としてとらえた場合に、生業にしていくにはどれくらいの費用が必要なのか、といったことに現役のバンドマンが踏み込んだ例はそう多くないように思います。
 
 音楽が好きでバンドを組みたい、プロを目指したいと考えている、これからの世代にとっては大いに参考になる情報です。この意味において、正田さんの投稿は一石を投じたと言えるのではないでしょうか。

 今まであまり大きく話題になってこなかったことにももちろんそれなりの理由はあります。夢は夢のまま取っておきたい人からすれば、舞台裏で起こっていることは知りたくないかもしれません。観客の立場からツイッターで否定的な発言をした人は少なからず抱いている思いであると推察されます。当事者であるバンド活動をしている人たちの否定的な意見としては、「内情はさらさないでほしい」「同情されて(音源を買われて)も……」といったものがありました。

 バンドマンにはプロを目指す人も少なくありません。しかし、一般的な社会人になるのであれば就職すれば給料の保証がありますが、バンドマンはプロになっただけでは生活までは賄いきれません。バンドマンだけでなく、いわゆる芸で生きていく人たちは事務所に所属したり、レーベルと契約したところがスタート。その先には売れるという最大目標が、関門としてそびえたっているのです。

 言いつくされていますが、夢を叶えるにはお金や時間がそれなりにかかります。 2019年の年頭に、正田さんの示した具体的な数字は、夢を叶えることをかかるコストで考えるひとつのきっかけになったのではないでしょうか。

あけましておめでとうございます。今年の上半期の目標は

・ワンマンライブを成功させる
・新譜を複数リリースする
・徹底的に「手作り」にこだわる

です。去年以上に頑張りますので応援宜しくお願い致します。 pic.twitter.com/Qb8K5JI125

— 正田やすし🍣@ノービター (@nobitter_sun) January 1, 2019

<記事化協力>
正田やすしさん(Twitter:@nobitter_sun)
ノービター(HP:nobitter.com)

(山口さゆり)

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