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犬につける口輪は虐待ではありません 犬も人も守るもの

おたくま経済新聞 / 2019年3月11日 17時18分

犬につける口輪は虐待ではありません 犬も人も守るもの

ももさん(@momodog22)提供

 世の中、ペット大好きな人が多く、動物系の番組も人気。しかしその一方、犬や猫が苦手、という人も珍しくありません。多くは威嚇されたり、引っかかれたり、噛まれた、などというトラウマから来る印象ですが、人間側に攻撃をするのは動物側にも理由があります。恐怖心、人間不信、警戒心など、脅威となる人間から身を守るために、こうした行動を取るのですが、人間が犬を保護したり、治療を施したりするにはこうした行動から身を守らなければなりません。そのための「口輪」が虐待に見えると誤解されていることが多いようです。

 少し前に、ツイッターに口輪をつけられた犬の動画が、虐待案件として拡散されたことがありました。当該ツイートは既に削除されています。しかし、これを見た複数の人からは、「口輪をつけているからと言って虐待と決めつけるのは早計」という声が複数上がっていました。これを受け、これまでにも犬の保護活動に尽力し、多くの犬たちと関わってきた“もも”さんが、ツイッターに口輪をつけている犬の画像とともに、次のつぶやきを投稿しています。

「犬の口輪(マズルガード)は虐待か、という昨日のツイートの件、かわいそうというリプが殆どで驚いたのだが、噛み癖や拾い食い対策、傷舐め、治療中などの理由でも装着されるものです。動物病院でも中型以上は口輪で来院してというところもあるし、慣れない保護犬にもよく使われます」

犬の口輪(マズルガード)は虐待か、という昨日のツイートの件、かわいそうというリプが殆どで驚いたのだが、噛み癖や拾い食い対策、傷舐め、治療中などの理由でも装着されるものです。動物病院でも中型以上は口輪で来院してというところもあるし、慣れない保護犬にもよく使われます。 pic.twitter.com/E7KtFcnaFt

— もも (@momodog22) March 5, 2019

 写真に写っている、かごの様な形をした口輪を装着している大型の紀州系雑種は、ももさんが保護した飼育放棄犬。保護先の飼い主に肋骨骨折、40針縫う大けがを負わせたそうです。本来なら一度人を噛んだりケガを負わせた犬は、保健所に引き取られて殺処分となりますが、安易な処分よりも、過去に負った心の傷をいやし、殺処分から救おうという保護団体と、保護に名乗りをあげる有志によって殺処分の数を減らす取り組みがなされています。

 実は筆者の実家にて大往生を遂げたシーズーがいました。その犬は、知識もない飼い主にただ甘やかされ、間違った愛情の与えられ方を受けた結果、飼い主の手を焼く犬へと育ってしまいました。見た目が可愛いから、と飼育放棄されたところを引き取られるも「やはり手に負えない」と、何人かの飼い主をたらい回しにされた後、父が飼育に名乗りをあげました。保護団体からは「ここでダメならもう殺処分するしかないと思います」と言われたのですが、それでも父は引き受けたそうです。筆者が実家を出た後の事でしたので、当然筆者には懐かないで威嚇したり、噛み付こうともしました。しかし、親からその生い立ちを聞かされた筆者は、その犬がいかに愛情を知らず、人間に不信を持ってここまで生きてきたということを知り、実家の決断に間違いはなかったと思いました。

 筆者が実家に帰るたびに、甘えようともせずに威嚇があいさつ代わりとなっていましたが、触らなければ噛まれることがないので、特に気にせずに実家で過ごしていました。そんな犬でしたが、筆者が里帰り出産で次女を生んでしばらく実家に滞在した時は、その犬は生後間もない赤ん坊が寝ていると、少し離れたところでまるで番犬のように寝そべっていました。筆者にはあんなに攻撃的なのに。実家での適切な接し方によって、その犬が赤ん坊のことを「守るべき家族」と認識した様に見えました。

 晩年、好きな果物と両親に見守られながら、シーズーとしては大往生となる余生を送ったのでした。父以外はまともに触れなかったような犬でしたが、母が剥いた柿や梨を嬉しそうに食べていた姿は未だに忘れられない光景です。

 そんな犬がいる事を筆者は知っていたので、犬は人間不信に陥ると、怯えて自分を守ろうと攻撃的になるのも知っていました。大型犬が人間を信じられなくなると、本当に手のつけようがなくなります。そんな犬を保護して口輪をつけることは、犬を守ろうとする人間側を守ることに繋がります。

 また、道に落ちているものを拾って食べてしまう癖がある犬もかなりいます。例えば道ばたにある草。犬は時たま草を食べることがありますが、それらは時に除草剤がまかれていることもあります。微量ならば大した影響はないかもしれませんが、習慣化している犬ならば体に影響を及ぼすことが十分考えられます。また、知り合いのパグが散歩のときに石を食べるので困っている、という話も聞きました。そんな犬を守るためにも、口輪をつける必要性が出てきます。

 最近は、そんな異食を防ぐための口輪にも、様々なタイプが出ている様です。装着するとアヒルのくちばしに見える様な可愛らしいものもあるとの事。ももさんのツイートへの反応にも、「可哀想ではなく、何か事情があるんだなと思ってもらいたい」といった意見や、「今のマズルガード(口輪)は、犬の安全を守るためのガードであって、締め付けとは違いますよね」という意見、また、獣医師にかかるときやトリマーに預ける時にも必要になることも多い、という言葉が多くみられています。

 犬はただ甘やかすだけでは人間との信頼関係を築くことができません。群れを作る習性のある犬は、家族という群れのリーダーから適切な養育を受けることで、はじめて信頼関係を築く事ができるようになります。ペットは人間のアクセサリーではないのです。感情もある、家族の一員なのです。その家族を守るための適切な道具を活用する事は、人間が目を守るためにサングラスを掛けたり、日差しから守るために日傘を差したりするのと何ら変わりはないのではないのでしょうか?

<記事化協力>
ももさん(@momodog22)

※一部表現を修正しました。(2019年3月22日)

(梓川みいな)

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