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次世代ヘリコプター  SB>1 ディファイアントが初飛行

おたくま経済新聞 / 2019年3月22日 11時10分

次世代ヘリコプター  SB>1 ディファイアントが初飛行

ホバリングするSB>1ディファイアント(画像:Sikorsky-Boeing)

 シコルスキーとボーイングが共同開発している次世代型のヘリコプター、SB>1ディファイアントが2019年3月21日、フロリダ州ウエストパームビーチにあるシコルスキーの試験施設で初飛行を行いました。同日、シコルスキーとボーイングが連名で発表しています。アメリカ陸軍の「将来型垂直離着陸機(Future Vertical Lift=FVL)」計画に提案されている航空機としては、ベルとボーイングが共同開発しているティルトローター機、V-280ヴェイラーに続くものです。

 アメリカ陸軍が構想する、ヘリコプターなど垂直離着陸機を刷新するプログラム「統合多用途・将来型垂直離着陸機計画」の一部、現在のUH-60ブラックホークを置き換える汎用垂直離着陸機として提案されているSB>1ディファイアント。2018年12月26日に試作1号機が公開され、2019年1月末から地上試験が行われてきました。

 ライバルであるV-280ヴェイラーが、V-22オスプレイと同じティルトローター機であるのに対し、ディファイアントはこれまでのヘリコプターの延長線上にある航空機です。しかし通常のヘリコプターの約2倍となる速度と航続距離を実現するため、通常のヘリコプターならテールローターが装備されている機体後端部に、推進専用のプロペラを装備しているのが大きな特徴。メインローターの回転モーメントを打ち消すテールローターを持たないため、メインローターを上下で回転方向を逆にした「同軸二重反転ローター」としています。

 今回の初飛行では後尾部の推進プロペラは使用せず、メインローターのみで通常のヘリコプターのように浮上し、ホバリングや低高度での移動を行い、性能の試験を行っています。推進プロペラを使用して高速飛行する場合、メインローターの翅(ブレード)が回転して後方から前方に向かう際、飛行速度との合成速度が音速に近づくとブレードの効率が落ち、機体の片側での揚力が発生しなくなってしまうのを防ぐため、飛行速度に連動してローターの回転速度をコンピュータでコントロールする機構がついています。

 シコルスキーのダン・スプーア将来型垂直離着陸機計画担当副社長は、ディファイアントの初飛行を受け「ディファイアントのデザインは、敵性勢力の活動エリアにおける卓越した性能を発揮し、最上級の操縦性や生残性、そして汎用性を持ち合わせています。今日の初飛行の成功で、私たちは次に待ち受ける飛行試験を非常に楽しみにしています」というコメントを発表しています。

 ボーイングの将来型垂直離着陸機計画におけるプログラム・マネージャ兼担当副社長を務めるデイビッド・カッパースミス氏は「ディファイアントのパフォーマンス、スピード、そして能力は、戦場におけるゲームチェンジャーとなり、アメリカ陸軍にこの素晴らしい可能性をデモンストレーションするのを楽しみにしています」と語っています。

 V-280とディファイアントは全く異なる航空機のため、なかなか比較が難しい側面があります。速度性能や航続距離ではティルトローター機であるV-280がやや有利。しかしディファイアントは通常のヘリコプターの延長線上にあるため、整備員やパイロットがヘリコプターと同じように取り扱え、そして機体が幅を取らずコンパクト(V-280は飛行機並みの全幅を持つ)という利点があります。アメリカ陸軍では2030年代の戦力化を目指していますが、その時列線に並ぶのはどちらになるでしょうか。

Image:Sikorsky–Boeing

(咲村珠樹)

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