ボールペンの線上を超えられない「ダニ」の生態が面白い
おたくま経済新聞 / 2019年5月14日 12時19分
画像:島野智之さん(Twitter:@mitesproto)より。
暖かい季節になると、ベランダなどのコンクリートで見かけるようになる赤いダニこと「カベアナタカラダニ」。体長1mm前後のこのダニは、見た目とは裏腹に実は人間を刺したりすることはほぼないダニなのだとか。そのカベアナタカラダニで実験した動画が、彼らの知られざる生態を教えてくれています。
「今年もカベアナタカラダニとボールペンで遊ぶ季節になりました」と、白い紙の上に、カベアナタカラダニを乗せて、赤いボールペンでダニのまわりをくるくるナルト状に円を描いていきます。そうすると、なぜか、カベアナタカラダニはそのボールペンの線上を超えようとしないという不思議な現象が。
今年もカベアナタカラダニとボールペンで遊ぶ季節になりました。 pic.twitter.com/Rvag6aP6Vk
— 島野智之(ダニ研究者+原生生物研究者)Satoshi SHIMANO (@mitesproto) May 7, 2019
この動画をネットで紹介したのは、ダニ研究者の島野智之さん。なぜ線上をこえようとしないのか、原因を聞いたところ、カベアナタカラダニの化学生態は全くデータが無く、明確なことはわからないそうですが、ボールペンのインクの中に、ダニが嫌がる何らかの忌避成分が入っていると思われるとのこと。
カベアナタカラダニは、オスがいないといわれており、メスがメスを生む単為生殖。春の暖かい季節に卵が孵化し、梅雨の時期にはその寿命を終えるという儚い存在。来年の春に卵から孵化する自分の娘達には会えません。屋上の捕食者が入ってこられないような隙間や、コケが生えた場所などを上手く活用して、主に花粉を食べながら暮らしています。あの派手な色を見かけると思わずゾワッとしてしまいがちですが、彼らも短い生涯を自由きままに生きているだけなのだと思うと、ちょっとダニに対する見方が変わったように思いました。
ちなみに、ダニというと人間にとっては厄介な存在として知られていますが、広く知られる習性には少し誤解があるようです。よく布団やベッドで寝ていると腕や足などに、2つの赤い痕をみつけると「ダニに刺された!」と思う人が多いと思いますが、実はダニの仕業と断定できないそうです。主に、人を刺すダニは、鋭い触肢が一対あるツメダニ類だと考えられているそうですが、その大きさは0.3~0.5mmほど。2つの刺し口の距離がだいたい2mmほどなのに対し、ダニの大きさと照らし合わせると、4匹分にもなるため、必ずダニが原因であるとは考えづらいそうです。もちろん、ダニにとって人間の皮膚は硬いため、爪痕を残そうとすると2回刺すこともあります。しかし、このような場合には 2つでは済まず、何回か刺し傷が残ることも考えられるとか。一口にダニといっても、何だか奥深いですね。
<記事化協力>
島野智之さん(Twitter:@mitesproto)
科学バー「ダニマニア宣言 やっぱりダニが好き!」(著:島野智之)
(黒田芽以)
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