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子の急な発熱で休む後輩 見守る先輩が「子はいなくても子の気持ちは分かるから」

おたくま経済新聞 / 2019年5月23日 18時5分

子の急な発熱で休む後輩 見守る先輩が「子はいなくても子の気持ちは分かるから」

写真ACより

 働く親にとって、子どもの不意の病気は困り事の一つ。夫婦であればどっちが休んで看病するのか、病児保育は使えないのか、そして独りで育てている人はどこに、誰に頼ればいいのか……。特に育休明けなどで子どもが小さいうちはよく熱を出したりして、その都度保育園から呼び出されたりするものです。そんな子育て中の後輩の気持ちを汲んだ、ある職場の先輩の言葉がネット上で話題になりました。

 とある職場で働く、ひとりの女性(以下Aさん)。後輩には、育休から復職したばかりの後輩がいます。Aさんは夫婦二人で暮らしていますが、その後輩が早朝から起きて朝食作りや弁当作り、夕食の下ごしらえや洗濯などの家事と育児をこなし、子どもたちを別々の保育園に預けてから出勤している頑張り屋さんであることを知っています。都市部では、定員の都合で上の子と同じ保育園に預けられない場合があり、後輩さんもやむなく上の子と下の子を別々の保育園に預けて職場復帰を果たしたのだとか。

 そんな後輩の頑張りを尊敬のまなざしでAさんは見守っていました。しかしある日、後輩の子どもが朝から発熱。何と40度の熱を出し、職場に休みを申請する電話をかけてきました。それを受けたAさんの上司、Aさんに「どう思う?」と聞いてきました。どう思うって……。

 Aさんは自身の子がいないけど、自分が子どもの頃に感じたこと、思ったことを思い出しました。そして上司に伝えた言葉は、「私には子どもがいないので母親としての気持ちは分からないけど、子どもだった頃はあるから子どもの気持ちは分かる。熱で辛い中、目がさめてお母さんそばにいてくれたら嬉しいに決まっている」と。上司はその言葉を聞いて黙り込んでしまいました。

 上司は60代の男性で、お孫さんもいるそう。しかし、昭和の上司世代の働き方の考えと、現在の働きながら育児をこなすという環境は考え方の世代差が大きく存在しそう。普段は年齢差に関係なく対等に接してくれるという上司ですが、この時ばかりは復帰1週間で子が熱を出した後輩の育休復帰が早すぎたのではないか、人員の見直しを再考すべきなのか、自分がどう受け答えればいいのかという戸惑いもあって、Aさんに「どう思う?」という言葉が出てしまったようです。

 Aさんの当然といえば当然な言葉に思わず黙り込んだ上司。後輩がここまで頑張ってまでなお、仕事を続けていることに対してどう感じているのかは上司本人のみぞ知るという感じですが、子どもを持たない夫婦でも、自分が親ではなく子どもだった時の目線を思い出して答えるということは、子ども時代を過ごして大人になってきた全員ができることかもしれません。

 筆者も、子どもの時に熱を出したことが何度もあります。転勤族だったので、遠くにいる親にも、近所の人にも誰にも頼れない母。そんな状況下で、ある時どうしても下の子を行事に連れていかなければならない出来事がありました。タイミング悪く熱を出した私は、一人家でお留守番。当時、私はとても心細い思いをしたことを、この文章を見て思い出したのでした。また、自分が親になってから育休復帰後に子どもが肺炎を起こして入院した時の記憶も。「育休からの復帰が早すぎたのではないだろうか」と、病院のベッドで眠るわが子を見ながら一人自分を責めていたのです。きっと、保育園に行きはじめて熱をしょっちゅう出すようになった子を持つ親は、自分のことを責めていることが多いと思います。1週間、点滴を付けた生後7か月のわが子に寄り添いながらずっと考え込んでいた私のように。

 職場の人たちは、「まだ小さいうちだし、保育園に入れば色々病気拾ってるからしょうがないよ」と、Aさんのように私を気遣ってくれていました。子を持たない上司も。それが一番の救いになった事は、15年近くたった今でもはっきりと覚えています。

 まだまだ子を持つ親、特に母親に対して、職場の風当たりが厳しいところはたくさん存在します。仕事をするからには責任も伴いますが、キャリアアップしながらの子育てが、身内以外にも上手に頼りながらできるようになれると、社会的な人材も確保しながら次世代を育てることにつながるのではないでしょうか。

<記事化協力>
匿名希望さん

(梓川みいな)

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