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知ってほしい!ライブでも「イヤーマフ」 音に過敏な人や子供の耳を保護するために使われることもあるんです

おたくま経済新聞 / 2019年6月13日 7時0分

知ってほしい!ライブでも「イヤーマフ」 音に過敏な人や子供の耳を保護するために使われることもあるんです

しょうゆさん(@silyouyusilyumi)提供

 大規模なロックコンサートやライブハウスでのライブ。大音響で体中に音を浴びる感じはとても最高なんですが、音が大きいゆえに気を付けないといけないのは、耳の保護。特に感覚が過敏な人には舞台のライトや、大きな音響で疲れてライブどころではなくなってしまう事があります。そんな敏感な耳を保護する「イヤーマフ」をたくさんの人に知ってもらいたい、という呼びかけがツイッターで話題になりました。

 ライブに行きたいけど、聴覚過敏で不安、イヤーマフを付けていきたいけど誤解されそう……。そんな思いをツイートしたのは、歌い手好きの“しょうゆ”さん。しょうゆさんは、「ひきフェス、浦島坂田船夏ツに参戦する者です。私は聴覚過敏を持ってます。ライブに行きたい気持ちはみなさんと変わりません。大きい音や苦手な音から耳を守るためイヤーマフをライブ中も付ける場合があります。当日ヘルプマーク、聴覚過敏シールを貼って参戦します。どうかご理解ください」と、イヤーマフの写真、聴覚過敏マークの画像、そしてヘルプマークの画像を一緒に付けてつぶやいています。



 ツイート中の「ひきフェス」とは、中高生女子を中心に絶大な人気を持つ「まふまふ」さんが主催する、「ひきこもりでもLIVEがしたい!ひきこもりたちでもフェスがしたい!」というコンサートの事。「浦島坂田船夏ツ」は、同じく人気歌い手集団の「浦島坂田船」が開催する夏のツアー。小学校高学年の女子から若年層を中心に、どちらも絶大な人気を誇っています。

 しかし、しょうゆさんは、ライブツアーへの参戦は今回が初めてとの事。外部の不快な音をシャットアウトして自分の聴覚にちょうどいい状態に音量を調節してくれるイヤーマフが、ヘッドフォンと間違えられて他の曲を聴いているのではないかと誤解されるのではないかという心配があります。

 このツイートが拡散されると、「了解です、私もひきフェス参加します!楽しみましょう」「把握しました! 拡散しか出来ないのですが、ライブ楽しんでください」「ひきフェス参戦です 教えていただいたおかげで 長い事生きてきて 初めて知る事が出来ました! ありがとうございます」と、同世代を中心に、幅広い世代から「楽しんできて!」というリプライが。

ひきフェス、浦島坂田船夏ツに参戦する者です。私は聴覚過敏を持ってます。ライブに行きたい気持ちはみなさんと変わりません。大きい音や苦手な音から耳を守るためイヤーマフをライブ中も付ける場合があります。当日ヘルプマーク、聴覚過敏シールを貼って参戦します。どうかご理解ください。#拡散希望 pic.twitter.com/xLPmtEUYfl

— しょうゆ@ひきフェス参戦 (@silyouyusilyumi) June 8, 2019

■ イヤーマフは海外のフェスでも子どもに使われている

フランスライブで一番好きな写真。YMCKは音楽のディズニーランドになりたい。誰が聴いても見ても楽しくてワクワクして、知れば知るほどハッピーになれる。この小さなお2人はとっても笑顔だった。すっごく可愛かった!だから思い描いていたものに自信が出た。最高な幸せなショット。 pic.twitter.com/QoTqdogUJN

— YMCK 栗原みどり (@midori_kurihara) June 1, 2017

 海外のライブ事情をみてみると、屋外型の親子でも参加できるフェスなどでは割と低年齢層を中心にイヤーマフを付けてライブを楽しませている傾向がある様です。これは、低年齢層の耳は大人よりも大音量に慣れていないために耳を傷める事を考慮しての措置。日常の会話レベルの音量(聴きやすい音量)が40〜60デシベルであるのに対し、ロックコンサートなどでは100〜120デシベル以上の大音量となるので、2時間くらい続くフェスなどでこの大音量に晒され続けると「音響外傷」「騒音性難聴」などの状態に陥ってしまうことが知られています。

 日本国内を中心に、世界各国でもコンサート活動を行っているチップチューン(ピコピコ系ゲーム風音楽)ユニット「YMCK」は、フランスでの野外フェスの時に、子どもたちがステージにかぶりつき状態でライブを見ているのをステージ上で見ていました。ボーカルの栗原みどりさんは「この小さなお2人はとっても笑顔だった。すっごく可愛かった!」と、イヤーマフを装備した子どもたちの笑顔に嬉しそうにしていました。

■ 国内でのライブ時の聴覚保護の動き

 国内では、「ASIAN KUNG-FU GENERATION」(アジカン)のゴッチこと、後藤正文氏が、2018年7月18日付のブログで、「アジカンからのお願い」というタイトルでイヤーマフの必要性について言及。ライブ会場での貸し出しや、子ども連れにはあらかじめ準備をして欲しいと呼びかけています。
【関連記事】ライブでの子供の耳を保護を!アジカンが「子供向けにイヤーマフを貸し出し」

 また、子どもだけでなくとも長時間の屋内型フェスやギグなどで大音量に晒されていると、大人でも聴覚障害を引き起こしますし、実際にバンドマンの中でも騒音性難聴に悩まされている人も少なくないようです。このため、ライブ会場では、物販用グッズとしてライブ用耳栓を販売するバンドも増え始めてきています。

■ イヤーマフや耳栓は「楽しくライブの時間を過ごすためのツール」

 国内でのこうした聴覚保護に対する取り組みはまだ始まったばかりで、認知度も低い現状。若い世代が耳を傷めて難聴となると、年齢が上がるにつれて難聴が悪化していく事も多くあります。こうした事態を防ぐためには、イヤーマフやライブ用耳栓などで、自衛をしながらライブを楽しむ事が第一選択となります。特に歌い手さん関連のライブは若年層の参加率も高いので、親が率先して聴覚保護の取り組みを行うのが望ましいと言えるでしょう。もちろん、ライブの醍醐味である音の迫力と振動は、イヤーマフをしていても問題なく体で受け止め、堪能することができます。

近年では親子でフェスやライブに参加する人も増えてきました。アジカンも親子でライブに参加している人が多くなり、親子2世代で楽しんでもらえている、と肌で感じたことから、イヤーマフの貸し出しを行っています。子ども、特に小さな子どもには、ライブ用の耳栓は耳の大きさに合わず、ライブ中に外れてしまったり、しっかりとはまっていなかったりということがあり得ます。このため、幼児から小学生にはイヤーマフが推奨されます。親子でライブ参戦を考えている人は、子どもが将来、耳の聞こえに困ることがないように対策を整えることが大事といえます。

 体全体で音を受けつつ耳は守る。そしてその場の雰囲気で盛り上がる。無防備な耳を守りながらでもライブは十分に楽しめるので、ライブに参加する側、ライブを運営する側、双方が理解を持って楽しめるようになることを願っています。

<参考>
学校保健ポータルサイト 耳の健康|第12回「児童生徒の耳・鼻・のどの健康」

<記事化協力>
しょうゆさん(@silyouyusilyumi)
YMCK 栗原みどりさん(@midori_kurihara)

(梓川みいな/正看護師)

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