パリ・エアショウで電動飛行機のデモフライト
おたくま経済新聞 / 2019年6月14日 7時0分
パル・エアショウで展示される電動飛行機アルファ・エレクトロ(Image:PIPISTREL)
パリ郊外のル・ブルジェ空港を会場として、2年に一度開催される世界最大級のエアショウ、パリ・エアショウ(正式名称:サロン・ド・ブルジェ)。2019年は6月17日~23日に開催されます。これにフランス民間航空総局(DGAC)とフランス航空連盟(FFA)が共同出展するブースで、すでに市販されている小型の電動飛行機が展示されることになりました。同時に、実際に飛行してのデモンストレーションも行われる予定です。
この電動飛行機はスロベニアの航空機メーカー、ピピストレルが開発した2人乗りの小型機「アルファ・エレクトロ」。同社の2人乗り練習機「アルファ・トレーナー」を電動化したもので、全長6.5m、全幅10.5m、最大離陸重量は550kgと、非常にコンパクトな機体レイアウトとなっています。価格は12万5000ユーロ(約1530万円)。
原型となったアルファ・トレーナーは、80馬力のRotax 912 UL2エンジンを積んで最高速度120ノット(時速222km)で飛行しますが、アルファ・エレクトロではエンジンルームに最大出力60kW(定格50kW)のモーターと345~365V/21kWhのバッテリーを搭載しています。最高速度はエンジン版より少々劣る100ノット(時速180km)ですが、超過禁止速度は135ノット(時速250km)と共通です。
気になる航続距離ですが、標準で1時間(リザーブで20分程度)、巡航速度80ノット(時速144km)での航続距離は平均130kmほど。通常の飛行訓練やちょっとした移動など、およそ軽飛行機が使われる場面においては必要十分なものといえます。離着陸に必要な距離は270mと短く、多くの飛行場や場外離着陸場を利用できます。
充電に必要な時間は85~265V/45~65Hz/3kWの電源を使用した場合、6時間で95%まで、フル充電までは8時間。急速充電器を使用すると45分で95%、70分でフル充電が完了します。この点では電気自動車とあまり変わらない感じです。そして3次元の空間を移動する飛行機にとって、飛行するにつれて燃料が減る、ということがないため、最初から最後まで機体の重心位置が変化しないというのも大きな特長でしょう。
エンジン版のアルファ・トレーナーでは最大50リットル(平均36kg)の燃料を搭載して、巡航速度108ノット(時速約194km)で飛行すると1時間あたり13.6リットルの燃料を消費します。その分燃料タンクが軽くなり、重心位置も変化してしまうのですが、電動飛行機の場合は変化せず、操縦の感覚も一定していることがメリットとしてあげられるのです。
今回の出展にあたり、ピピストレルはフランス民間航空総局の特別な許可を得て6月17日、パリ郊外トゥシュ・ル・ノーブル飛行場からパリ・エアショウ会場のル・ブルジェ空港まで、パリの中心部を横断する飛行を行って会場入りする予定。排気ガスを出さず、静かな電動飛行機の特徴をパリの人々に知ってもらうデモンストレーションと位置付けています。また、会場でのデモフライトも会期中の毎日午後に予定されています。
この電動飛行機アルファ・エレクトロはパリ・エアショウの後、8月22日~31日にフランスのシャトールーで開催される、第30回エアロバティック世界選手権でも展示予定。フランスでは温室効果ガスのひとつである二酸化炭素排出量を削減するため、化石燃料の使用を抑制する方針を打ち出しており、2019年6月12日には国会で2030年までに二酸化炭素排出量を37.5%削減し、2040年までに化石燃料を使用する自動車の販売を終了する法案が可決されています。再生可能エネルギーも、現在フランスの電力消費(27.8TWh)の6%に当たる15.1GWhが風力発電によるもの。これは天然ガス火力発電と同等、石炭火力の5倍に相当します。風力発電は、今後数年のうちに1.34TWhまで増強する計画が実行に移され、2030年までに再生可能エネルギー比率を32%に引き上げる予定。脱炭素社会を目指すフランスの考えを表すものとして、今回の電動飛行機展示が行われることになります。
<出典・引用>
ピピストレル プレスリリース
フランス エコロジー・持続可能開発・エネルギー省 プレスリリース
Image:PIPISTREL
(咲村珠樹)
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