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車の免許返納問題に妙案 「免許証返納式」で大団円となった話が話題

おたくま経済新聞 / 2019年7月25日 7時7分

車の免許返納問題に妙案 「免許証返納式」で大団円となった話が話題

政騎さん(@renrumasaki)

 年とともに落ちてゆく瞬間的な判断力や瞬発力は、時として大事故に繋がります。高齢者の交通事故を未然に防ぐために、免許の返納を家族が求めてもなかなか応じないことも多々あります。そんな家族のひとりが計画した「返納式」で、返納した本人も含め家族全員が幸せになったというツイートが話題になっています。

 80歳近くになる義父が免許の返納に渋っていたという、ネットユーザーの政騎さんが、義父の免許返納に至るまでの顛末を一連のツイートにまとめています。

「ちょっと私も嬉しかったので書くんですけど、おとうさん(お舅さん)が免許返納してきたお話
80歳近くなって運転も心配になってきたので免許返納しないとね、とおかあさん(お姑さん)がおとうさんに言うんだけど『なんでだ、俺は運転する、なんで俺が運転しちゃいけないんだ』ってずっと譲らなかったの」

「ずっと説得してたんだけどなかなか頷いてくれないらしくて…それでもこの間やっと火曜日に返納してくるわって話がまとまったんだって でも当のおとうさんはやっぱりまだ納得出来ないような様子で だから私は『免許返納してきたらお祝いだね!』って言ったの そしたら『お祝い?お祝いしてくれるの?』」

「多分おとうさんからすれば免許返納は運転できなくなってかっこ悪いとか、そういうマイナスのイメージなんだろうなって だから返納することは先を見据えたとても良いことなんだと伝えたくてお祝いだねって言ったの そしたら、それからは何も言わずに無事に返納してきたって」

「無事に返納してきたおとうさんに表彰状を用意した 『あなたは長い間~無事に完走しました またその先見の目を持って免許を自主返納されました ここにその素晴らしき決断を表彰します』ケーキと一緒に額に入れた表彰状を渡したらすごく喜んでくれて『こんなのは初めてだ、涙が出ちまうなぁ』って」

「ケーキを食べながら表彰状みて、何度も嬉しいなぁって言ってくれたのが私も嬉しくて おかあさんも『あんた良かったねぇ』って喜んでくれて 用意して良かったなと思ったし、なにより気持ちよく返納してくれてよかった」

 と、一連の出来事をツイッターに投稿しました。この出来事を読んだ人たちからは、「一応支援マニュアルがあるけど実際は難しい。これは本当に素晴らしい理想の対応」「北風と太陽のようなお話」など、その対応の方法を称賛する人、「何で返納したくないのか、こっちも考えるべきだったね」「私も『なぜ返したくないのか』をちゃんと考えて話し合いしていけたら……と思いました」と、返納する当事者の気持ちを汲むということに対して考えを寄せる人も。

ちょっと私も嬉しかったので書くんですけど、おとうさん(お舅さん)が免許返納してきたお話

80歳近くなって運転も心配になってきたので免許返納しないとね、とおかあさん(お姑さん)がおとうさんに言うんだけど「なんでだ、俺は運転する、なんで俺が運転しちゃいけないんだ」ってずっと譲らなかったの

— 政騎 (@renrumasaki) July 23, 2019

 高齢者にとって、車の免許証は長年使い続けてきた資格。買い物や通院など、車がないと大変な地域に住んでいる人にとって、車の運転ができるかどうかは死活問題にもなってきます。これまでに大きな事故もなく過ごしてきた高齢ドライバーにとって、無事故でこれまで過ごしてこられたことは、それ自体がその人にとっての自信・プライドであり、免許の返納はそのプライドを揺るがしかねない出来事になり得ます。

 しかし、そのプライドを尊重し、これまでの無事故を称えてねぎらうことは、高齢ドライバーにとって、プライドを傷つけることなく大役を果たせた、という気持ちを生む効果があると言えましょう。

 実はこの方法、認知症のドライバーにとっても有効な手段。できるだけ盛大に、免許を無事返納できたことを祝い、返納を示す賞状などを目につくところに飾っておくことが、認知症のある人にとって効果的なのです。認知症があると、昔の記憶や癖が残って最近の事は忘れてしまうというのは日常茶飯事。しかし、感情だけは最近の事でもはっきり覚えている場合も少なくありません。

 実際にこの方法を試したという人を、看護師である筆者が老人施設勤務時代に見てきましたが、返納祝いを済ませた後も車のカギを探そうとする人に対して、「この前返納祝いしたよね」と、賞状や写真を見せる事で、「あぁ、そういえばそうだったな」と納得してくれるようになったのだとか。

 実際、認知症を患うと、ついさっきの出来事を忘れてしまう、いつも通いなれているはずの道で迷子になる、服の前後も分からなくなってしまうなど、できる事がどんどんできなくなってきて、不安が強くなりがちです。

 そんな状態の中で、「危ないから」「事故を起こすから」と、正論だけどもネガティブな言い方をすると、その不安が余計に煽られて怒りや頑固さといった状態に繋がってしまいます。しかし、その不安を和らげるように、今回のようにポジティブな考え方で返納への方向性を示すことは、「安心して返納できる」という気持ちにつながっていきます。

 年を取ると、今まで出来ていたことに対するプライドと、加齢によりできなくなってくることへの不安や恐怖がだんだん大きくなっていく人が多いです。できてきたことを肯定しながら、不安や恐怖に対して緩和的な態度や言葉を家族で考えて声をかけていく事が、免許の返納にも大きく役に立つことでしょう。

<記事化協力>
政騎さん(@renrumasaki)

(梓川みいな/正看護師)

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