コミケのサークル参加初心者へ!事前告知の重要性を説くツイートが話題
おたくま経済新聞 / 2019年8月1日 20時0分
サークル宣伝の重要性を訴えるほっけ様(@nukosama)さんのツイート
もうすぐ夏のコミックマーケット(コミケット/コミケ)。ちゃんとしたサークルさんは、すでに新刊の入稿を済ませていることと思います。でも、実はここからがサークルにとっての勝負どころ。そんなことを実感させるツイートが話題を呼んでいます。
2019年はオリンピック・パラリンピックを控え、東京ビッグサイト最大の東展示棟が使えずスペース数が減少するため、4日間の変則日程となるコミックマーケット。企業ブースも離れた青海展示棟を使用します。
今回「夏コミの宣伝をおろそかにしている夢見がちな方に届け」というメッセージとともに漫画をTwitterに投稿したのは、漫画家のほっけ様(@nukosama)さん。「電撃ツイッターマガジン」で「専門学校JK Ctrl+Z(やりなおし)」を、そして「つぶやきGANMA!」では、ぬこー様名義で「無常のふでこさん」を連載しています。
夏コミの宣伝をおろそかにしている夢見がちな方に届け pic.twitter.com/Gn1QoA5Ysf
— ぬこー様とほっけ様C96土曜日ア-35a (@nukosama) July 28, 2019
ほっけ様さんが漫画で示した場面は、7月26日に発売された、アニメ・漫画系専門学校生の厳しい現実を講師としての経験から描く「専門学校JK Ctrl+Z」第1巻から抜粋されたもの。初サークル参加を果たした辻堂ゆきが浴びる「コミケの洗礼」です。
初めてサークル参加したゆきは、作り上げた自分の本に自信満々な様子。しかし、彼女にはひとつ、忘れていることがあったのでした。自分のサークルを周知するための宣伝活動をしないまま、即売会にやってきていたのです。
初参加ですから、会場にやってきた参加者は誰も、ゆきのサークルを知りません。作者は誰で、どんな作風で、どんな本を出しているのか、事前情報が全くないのです。
最初の頃はスペースの前を通り過ぎる人に愛嬌を振りまく余裕のあったゆきも、誰も自分のスペースで足を止めてくれない時間が続き、へたり込んでため息をつきます。こんなはずじゃなかった……。
よりによって、お隣のサークルさんは早々に新刊が完売した様子。心なしか気を使われているのか、ゆきのスペースの方を見ないようにしてるようです。ゆきはだんだん「サークル参加した動機」を見失っていくのでした。
参加サークル数が1万に届かなかった昭和の時代ならいざ知らず、直近の2018年冬(コミケット95)では3日間で3万5000サークルが参加するほどに肥大化した現在のコミケットでは、事前にある程度存在を宣伝しておかないと、スペースをチェックしてくれないといっていいでしょう。初参加であればなおさら。
このツイートには、ほっけ様さん自身がリプ欄で「俺だ!!!!!!!!」と自虐的にオチをつけています。詳しくお話を伺うと、今から10年ほど前の2008年9月のこと。イラスト投稿サイトで有名になっていたほっけ様さん。そのネームバリューで、即売会では何もせずとも本がさばけていたそうです。
この状況に油断した訳ではないでしょうが、以降いい加減な宣伝ばかりしてしまったせいで、数年後には、さばける量が全盛期の10%にまで落ち込んでしまったといいます。最後には「1冊100円でたたき売りしたら売れるかな?」と価格を激安設定にしたら、逆効果で余計にダメになってしまい、大泣きした経験があったとか。このことから、まずは真面目に漫画に取り組もうと心に誓ったそうです。
そして宣伝の重要性という点では、コミックス第1巻が発売されたばかりの「専門学校JK Ctrl+Z(やりなおし)」が、まさにいい例だといえます。実はこの作品、一度は「専門学校JK」として、連載が打ち切られた作品だったのです。
ところがこの作品、ひょんなことで状況に変化が訪れます。きっかけは、作者のほっけ様さんが自身のTwitterアカウントに投稿した「親戚やご家族に夢見がちの方がいらっしゃれば、ぜひこの漫画をおススメしてください」という「専門学校JK」宣伝漫画付きツイート。
親戚やご家族に夢見がちの方がいらっしゃれば、是非この漫画をおススメしてください。 pic.twitter.com/2IWHtL8vDd
— ぬこー様とほっけ様C96土曜日ア-35a (@nukosama) September 30, 2018
このツイートで電子版コミックスの存在を告知したことで、電子版コミックスの売り上げが上がったといいます。紙の書籍の場合、まとまった数がないと印刷できませんし、在庫管理の面でもスペースを取りますが、電子版だと注文数にかかわらずリアルタイムで対応できるため、より柔軟に作品を届けられるのです。
『悲しい』打ち切り漫画がなくなるかもしれないので漫画にしました。 pic.twitter.com/Mwkn6tdUi8
— ぬこー様とほっけ様C96土曜日ア-35a (@nukosama) October 18, 2018
そして2018年12月。「専門学校JK」は新たに「専門学校JK Ctrl+Z」として復活。ついにコミックス第1巻発売に至ります。
この経験をほっけ様さんは「編集さん的には売れてうれしい反面、編集さん自身の宣伝手法が間違っていたということでかなり落ち込んでいました」と振り返りつつ、手法としては「いやらしくならないように魅力を伝えて売り込む必要があって、それには作家自身が生々しい声を発することがベストなんだと思います」と語っています。
復活してからは作者からの発信で積極的に宣伝しつつ、編集さんも通常と違う方法で宣伝しているんだとか。ただ「不思議なのは時間かけて用意した宣伝より思いつきでパッと流した宣伝の方がバズリやすいです」という面も感じているそうです。筆者も数回バズツイートの経験がありますが、確かに無意識にツイートしたものほど反響が大きいですね。
現在も「専門学校JK Ctrl+Z」の舞台になっている、大手アニメ・漫画系専門学校で講師を務めているほっけ様さん。クリエイター系の学校でありがちなことなのですが、この作品に登場するような、成功する夢ばかり見て作品作りがおろそかになっている学生さんは一定数いるようです。
そんな学生に対し、ほっけ様さんは「夢は見たり語ったりするんじゃなくて、ちゃんと追いかけろ」とアドバイスしているんだとか。まず作品を形にし、自分から全力で「私はここにいます」と声を上げない限り、ほかの人は存在に気づきません。そこがスタートであり、評価されるのはその後なのです。
実際に自分で手を動かし、作品を作り、やる気を持って前に進めた学生は、みんなプロになれたとほっけ様さんは言います。自分の作品を見つけてもらうため、その存在をアピールしないと埋もれてしまうのは、コミケットも同じ。ほっけ様さんのツイートは、自分自身で未来を切り開く重要性を感じさせてくれます。
さて今度の夏コミ、あなたのサークルの新刊はなんですか?
<記事化協力>
ぬこー様とほっけ様(@nukosama)さん
(咲村珠樹)
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