泣き叫ぶ子どもはパニック状態 落ち着かせるための「方法」を示すカード
おたくま経済新聞 / 2019年8月21日 20時0分
たきれいさん(@kumokun8)提供
街中や買い物先、交通機関などのなかで泣き叫んでいる子どもを、保護者があやすことなく放置しているように見えること、往々にしてあると思います。あやさず放置していることに、不満や憤りを感じる人もいると思います。
しかし、その「放置」がなぜ行われているのか。その理由を示すカードが考案され、子どものパニックに困っている親を中心に関心が寄せられています。
このカードは、イラストレーターで3児の母でもある、たきれいさんが考案した物。たきさんのお子さん自身が発達に特性があり、子どもたちとどう接していけばいいのか模索している状態なのだそう。
そんなたきさんが考案したのが、「クールダウンお知らせカード」。「お子さんがパニックを起こした時、あやすのではなく、クールダウンさせることがあると思います。通りかかりの人に白い目で見られて胃に穴が空きそうな親御さんのために『クールダウンお知らせカード』を作りました」と、パニックになって泣き叫んでいる時の子どもを、周りの知らない人たちからみた様子、その知らない人たちに対し説明したくてもできない状態な保護者の様子、そして、「クールダウンお知らせカード」の実物画像をツイッターに投稿しています。
画像の1枚目には、子どもが大声で泣いており、隣でスマホをみている親の姿。周囲からは、「泣き声が気にならない?」「子どもよりスマホに夢中になっている?」「しつけするつもりがない?」「なぜ子どもから目をそらすの?」「育児放棄?」「周りの視線は感じない?」そんな周囲の声が親に向かって飛んできています。
しかし、2枚目の画像には、「一方、見た目は同じですが、事情がある親子もいます」と、1枚目の周囲の声たちに対する答えが。
あやしたり話しかけだけでは落ち着かない子もいる、子どもをクールダウンさせるために敢えて子どもを見ないようにしている、でも周りの視線は痛いほどに感じるし胃に穴が開きそう……。周囲の声に対して、声を大にして言いたい親の本音がそこにあります。
この状態を端的に伝えることができるように、と、「クールダウンお知らせカード」を紹介しています。A4サイズでプリントしてクリアファイルなどに入れて見やすいところにおけば、泣き叫ぶ子どもをただ放置しているわけではないことを伝えることができます。
この内容に、たくさんの反響が。「昔からダタを捏ねる子は置いて行くぞ!と言うのがありますがアレと同じですね」と、そういえば昔はそんなことを言われたような覚えがある、似たような方法を思い出す人や、「知的ハンデを持つ自分にも使える」「親御さんがまず理解することが大事だけど、それも含めて周りに分かりやすく周知させるために活用できそう」といった意見。
「発達障害のない子どもでも、『騒いでも相手にされない』『大騒ぎしても親は思い通りに動かない』とわからせることが、認知行動の観点では大切です」と、認知行動療法的な視点でのコメントなど、様々な反響が寄せられています。
お子さんがパニックを起こした時、あやすのではなく、クールダウンさせることがあると思います。通りかかりの人に白い目で見られて胃に穴が空きそうな親御さんのために「クールダウンお知らせカード」を作りました。 pic.twitter.com/eIpTwxbzp4
— たきれい(子育て模索アカウント (@kumokun8) August 16, 2019
■ 発達段階にある子どもが大人に求めているもの子どもは感情を言語化することが難しいものです。語彙力が育っていない上に感情と言葉が結び付きにくいうちは、怖い・嫌などといったマイナス感情を言葉に出して感情を処理することが上手くできず、しばしばパニック状態に陥り泣き叫んだり暴れたりします。
そんな時、無理に泣き止まそうとあやしたり触ったりするのは却って逆効果となることがほとんど。発達障害があればなおさらその傾向は高まります。
子どもであれば幼ければ幼いほど、大人の「普通」が通じないものです。時には、「どうしてこんな事で怒って泣くの?」と思わされることも多々あります。子どもにとっては不快なことで、しかしその不快を自己処理できる能力はまだありません。それが、泣き叫んだり、時には大暴れになるといった表現として出てしまうのです。ただ、大人になってしまうと、幼児の頃、自分が何を感じてどう表現していたかなんて、記憶に残るほどの大きな出来事でもなければ覚えてないでしょう。
だから、大人が子どもの幼さに上手く対処できる方法を考え、実践していくことが必要となってくるのです。パニックに陥った子どもを落ち着かせるために必要な、誰にも触れられない時間を作るのもその方法のひとつ。
発達障害などの脳の特性があると、快・不快の感情の揺れ幅も大きく、発達障害特有の感覚過敏により、音や光、触覚、嗅覚などあらゆる刺激に敏感に反応し、不快ととらえるものも多くなります。発達障害がある人が生き辛さを感じるのは、その感覚に対する過敏性も多分に影響しています。
■ 発達障害児がクールダウンの方法を学び取るまで実は、筆者の二人の娘も発達障害。中学生になり、思春期という難しい時期にありながらも、小学生の頃よりかはだいぶ落ち着いてきました。それは、「自分の感情が今どうなっていて、周りは自分に対してどうしてもらいたいのか」を少しずつ積み重ねて学び取ってきた結果。
自分の感情を言語化することができるようになり、「今は話しかけないで」「しばらく部屋にこもっていたい」という表現ができるようになったのは、精神面での成長とともに、娘たちに関わってきた大人たちが理解を示し、時には「こういう気持ちの時は、しばらく落ち着くまで自分を静かなところに置いてごらん」「感情がよく分からない時は、落ち着くところでしばらく静かにしてみたら」といった助言もあったから。
しかし、そうした大人たちがいる反面、強く怒れば大人しくなるという偏った考え方を持つ大人にも接してしまったがために、今でも怒号や大声、特に男性に対する強い恐怖と嫌悪感を持つようになってしまいました。
もっと早く、子どもたちの特性について分かってそんな大人から守ることができていれば……と、親としての後悔はつきませんが、こういった例もあるので、どうか周りの大人は大声で怒るのではなく、静かにスルーしてもらえると嬉しく思います。
<記事化協力>
たきれい(子育て模索アカウント)さん(@kumokun8)
(梓川みいな)
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