大正12年のカルピス瓶に時の浪漫を感じる……
おたくま経済新聞 / 2019年10月2日 14時0分
斉藤さん(@Tulpa_black)提供
2019年の今年はカルピスが販売されてちょうど100年。スーパーでは販売当時の復刻版カルピスのラベルと瓶が限定販売されるなど、新旧両方のカルピスのパッケージを目にすることもできました。そんな中、大正時代に販売された「元祖カルピスウォーター」ともいえるカルピスの空き瓶が見つかり、注目を浴びています。
この瓶を発見したのは、古いガラス製品をこよなく愛している、斉藤さん。古いガラス瓶や昔使われていたおはじき、瓶でできた目薬入れなど、古いガラス製品を収集するのが趣味。
ある日、斉藤さんは古ガラスが捨てられているところで発掘作業。色々と満足できる発掘品を手に入れ、さて帰ろうとした時、三角フラスコを細長くしたかのような無色透明の瓶を発見。一面には「カルピス」とエンボス加工が施されていました。
約15cmほどのその瓶は透明で所々に気泡も見られるもの。光に透かすと古い時代のガラス特有の歪みも確認できたそうで、とりあえず持ち帰ってみることに。
家でこの瓶をよく洗ってみると、さらに何か書いてありました。そこには、『定価金拾五銭』『名古屋駅 松浦』というエンボス加工が。一体いつのものなのか、斉藤さんは気になったのでネットで検索してみた結果、オークションサイトで超高額で取引されている模様。
さすがにこれはただの古瓶ではなさそう……考え、斉藤さんはカルピスのお問い合わせメールに画像とともに質問を送ったのでした。そして帰ってきた答えは、「1923年の6月に鉄道駅売り用の希釈されたカルピス(180ml 15銭)」とのこと。ちなみに、当時の瓶入りラムネは1本8銭。ラムネに比べるとちょっとお高め。
そんな歴史を持つ、カルピスの瓶を手にした斉藤さん、「もう95年前の瓶だってことに驚きを隠せねぇ…!!!」と、先に手にした瓶のツイートを引用してツイッターに投稿。見た人たちからは「なんかもう凄ぇとしか言葉が出てこない」「あと五年で一世紀ものですね」「時の浪漫を感じます」といった感想が。「カルピス」の書体が、現在のものとほとんど変わらないのも驚きです。
これについてカルピスさんから返信もらいました!
1923年の6月に鉄道駅売り用の希釈された「カルピス」(180ml 15銭)を発売していたけどこの瓶だって!!もう95年前の瓶だってことに驚きを隠せねぇ…!!! https://t.co/9H0hk4y14W
— 斉藤 (@Tulpa_black) September 26, 2019
このツイートの瓶について、カルピスの親会社である、アサヒ飲料さんにこの件で電話取材したところ、斉藤さんのツイートには間違いなく、お返事もそのように返しましたというご返答が。
最初にカルピスが販売されたのは、大正8年。当時から希釈用として売られており、1本400ml入りで1円60銭。180mlに水で希釈した場合換算すると10銭3厘。駅売りタイプの瓶入りカルピスのお値段は、ガラス瓶に入れて販売していた分を考えると妥当なところと言えそうです。
しかし当時のこの希釈用400ml入りは流石にお高い、多い、との声も多かった様子。翌大正9年には小さい希釈用カルピスも販売され始めました。またカルピスの原液は糖度が高く保存性がいいことから、逆に大正11年には大きな徳用瓶も発売されています。
そして、鉄道が一般的となってきたころには、駅弁と一緒に売られていたこともあったようで、汽車の窓から乗客がホームで箱を首からぶら下げて売り歩いている販売員から買っていた様だとのこと。鉄道用は最初から希釈してあり、そのまま飲めるタイプだったそうです。つまり「カルピスウォーター」の元祖といったところ。
今では考えられない光景ですが、昔の汽車は蒸気機関車の交代(蒸気のもとである水や燃料の石炭がなくなるため)など駅に停まっている時間も長く、乗車してから弁当などを欲しくなった乗客にとってはこの販売スタイルは馴染みのものでもありました。
ちなみに、名古屋には駅弁でよく知られている老舗に「松浦商店」というお弁当の製造販売会社がありますが、そちらの創業は大正11年の11月。もしかして、各地域での駅弁と一緒に、カルピスも売られていたのかもしれませんね。駅弁など鉄道の構内販売は許可制になっているので、瓶に入っている「松浦」は、この松浦商店のことかもしれません。
<取材協力>
アサヒ飲料
<記事化協力>
斉藤さん(@Tulpa_black)
出典ブログ:斉藤と隣の杞憂さん 拾ってしまったのも何かの縁
(梓川みいな)
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