ヴァージンの空中発射ロケット母機 イギリス空軍の戦闘機パイロットを採用
おたくま経済新聞 / 2019年10月5日 15時0分
ヴァージン・オービットのロケット空中発射母機パイロットに選ばれたスタナード大尉(Image:RAF Crown Copyright 2019)
イギリスのロケット打ち上げ会社、ヴァージン・オービットとイギリス空軍は2019年10月3日(現地時間)、ヴァージン・オービットの空中発射ロケット母機のパイロットに、イギリス空軍の戦闘機パイロットを選抜したと発表しました。
ヴァージン・オービットとイギリス空軍のパートナーシップにより、発射母機パイロットとして選抜されたのは、マシュー・スタナード大尉。ユーロファイター・タイフーンのパイロットで、現在は研究開発を行う第41飛行隊のテストパイロットを務めています。
ヴァージン・オービットは、ヴァージングループを率いるリチャード・ブランソン氏によって設立されたロケット打ち上げ会社。空中発射型のロケットを使って、小型衛星を打ち上げるサービスを行います。
空中発射型ロケットの利点は、最も推力が必要な発射台から離昇するプロセスを省けること。これにより、同規模の衛星(ペイロード)を打ち上げる場合、地上からに比べて小さいロケットで目標の軌道へ到達させることができます。また、搭載機器に悪影響を与える雷や風など地上の天候に左右されず、雲の上から打ち上げが可能なのもメリット。
発射母機となるのは、かつてヴァージン・アトランティック航空で運航されていたボーイング747-400(製造番号:32745/登録記号:N744VG)。「コスミック・ガール」という名前がつけられています。
このB747-400の主翼付け根に設けられたパイロンに、全長70フィート(約21m)の小型2段式ロケット「ランチャーワン(LauncherOne)」を装着。高度3万5000フィート付近(約1万600m)で打ち上げを行います。
ランチャーワンはアルミ合金製だったこれまでのロケットと違い、カーボンファイバーの複合素材で作られているのも大きな特徴。300kg~500kgの衛星打ち上げに対応しています。また、ノズルなどエンジン部分の加工は、日本のDMG森精機が開発した工作機械(レーザ加工機)で行われています。加工速度は従来よりも10倍速いものだとか。
発射母機パイロットに選ばれたスタナード大尉は、イギリス政府とロケットの打ち上げ基地となるアメリカ政府の認可が下りるのを待って、2020年から空軍に在籍したままヴァージン・オービットに出向する予定。まずはB747-400の操縦資格を取り、その後ランチャーワンの打ち上げ任務に携わることになります。
スタナード大尉は「これまで空軍では、トーネードとタイフーンに乗ってきましたが、ヴァージン・オービットの宇宙計画に参加するというのは、本当にユニークな機会となります。この計画は、私たちの宇宙に関する認識の境界を押しのけるもので、それに携われるのはまさに特権です。多くのものを学び取って、それを空軍に持ち帰りたいと思います」と抱負を述べています。
ヴァージン・オービットでは現在のところ、24機のランチャーワンを生産し、衛星打ち上げビジネスに参入する予定。NASAの小型衛星プロジェクトも、ヴァージン・オービットの打ち上げサービスを利用することを表明しています。
テクノロジーの発達により人工衛星はコンパクト化が進み、それに見合ったサイズの打ち上げロケット需要は高まっています。より安価な打ち上げ手段として、ヴァージン・オービットの空中発射ロケットは有力な選択肢のひとつとなるでしょう。
<出典・引用>
イギリス空軍 プレスリリース
ヴァージン・オービット プレスリリース
Image:Virgin Orbit/RAF Crown Copyright 2019
(咲村珠樹)
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