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意外と知られていない抗うつ薬で太る現象 「私はこれで○○Kg太りました」

おたくま経済新聞 / 2019年10月18日 20時0分

意外と知られていない抗うつ薬で太る現象 「私はこれで○○Kg太りました」

まるるんず@メンタルヘルスVtuberさん(@marurunzmemo)

 今やうつ病に始まる精神系の疾患は、ひと昔前に比べると随分とカミングアウトしやすくなりました。しかし、未だに残る偏見や理解の無さによる心無い言葉も残っています。周りの言葉に振り回されて自己嫌悪に陥るうつ病の人も多い中、あるツイートに共感する人が続出しています。

 このツイートは、漫画家でうつ病を5年ほどかけて克服した、錦山まるさんの発言集botである「まるるんず」さん。メンタルヘルスVtuberとしても、メンタルヘルスのお悩み相談動画を配信しています。

 まるるんずさん、「精神病薬の副作用で太ることあるんだけどあまり知られていない。僕は副作用で20kg太った。けどそんなこと知らないのか精神疾患=運動習慣ないと決めつけているのか『運動習慣つけて痩せた方がいいよw』とか平気で言う人がいる。作用があるから太っても何とか耐えてるんだよ。これマジで広まれ」とツイート。

 このツイートはYouTubeのまるるんずチャンネルで、Vtuberのまるるんずさんも回答していますが、数か月飲み続けたら二ケタ台まで体重が増えた、といったリプライが続々と集まっています。ちなみにこのツイート、botによる自動投稿なので、リプライをすると様々な種類の猿の名前が返ってきます。おみくじも引けるのだとか……。

 薬の副作用とはいえ、体重の増加は自覚できるだけに、この状態を受け入れるのはなかなか難しいもの。体重が増えたのは薬の副作用である事を家族や周囲に話しても「ゴロゴロして食べているだけだからでしょ」と取り合ってくれないことも多く、自分が太ったこと、うつになった事について自己嫌悪に陥り、病状が悪化することも。

精神病薬の副作用で太ることあるんだけどあまり知られていない。僕は副作用で20kg太った。

けどそんなこと知らないのか精神疾患=運動習慣ないと決めつけているのか「運動習慣つけて痩せた方がいいよw」とか平気で言う人がいる。

作用があるから太っても何とか耐えてるんだよ。これマジで広まれ。

— まるるんず@メンタルヘルスVtuber (@marurunzmemo) October 15, 2019

 周りの人が薬による副作用と理解して「こればかりは仕方ないよ」や、「元気になってからダイエットでもいいんじゃない?」と言ってもらえると、少しは救われる気持ちになるかもしれません。

 しかし実際、薬を飲み始めて1か月もたたないうちにどんどん体重ばかりが増えていく状態になってしまう(体質によって個人差があります)ので、やはり薬を飲んでいる当事者としてはつらいものがあります。うつ病そのものと、薬の副作用についての理解者がいるだけで少しは救われるのですが……。

■ うつ病の状態は怠けて見えるけど、決してそんな訳ではない

 うつ病の状態に陥ってしまった場合、果てしない無気力と無力感、憂鬱や悲しい・つらい気持ちに取り囲まれて身動きが取れなくなってしまいます。こんな状態だと、ダイエットどころではありません。

 起き上がろうとするとめまいに襲われるので、ずっと布団から出られない。お風呂に入る気持ちも、疲れてしんどいから入る気にならない。料理を作ろうという気持ちも萎えるので、ほぼ食べられるものだけ食べて、やっとの思いでトイレだけは行けて……といった状況に。

 実は筆者もこの状態に陥りがち。自分自身を世話できない「セルフネグレクト」な状態は続きます。外で運動やダイエット、ジムなんて、とてもそんなやる気分になれない状態。運動した方がいいのは分かっているのに。朝ちゃんと起きて太陽の光を浴びることがうつ病に効果があるって分かっているのに……。それすらもできず、引きこもっていく自分に嫌気がさす時も多くあります。

 うつ病歴は8年くらいになる筆者、一旦寛解まで持ち込めたものの、ストレスの原因が家庭内という状態なので逃げるに逃げられず、精神科への通院を繰り返しています。薬の相性がなかなか合わず、その中でちょっと効果を感じた薬は、体重がたった2週間で5kgも増えたんです。

 薬を飲んだ翌日くらいから、今までに感じたことの無い飢餓感というのか、とにかく何か食べないと我慢ができない状態。食欲中枢がぶっ壊れた、という感覚でした。

 その薬を処方された次の診察で、主治医にそのことを相談すると「この薬はよくこういう事があるんですよ。他のに変えましょう」と薬を変えてくれました。まだ2週間飲んだだけだったので、悪影響もなく、すぐに変えることが出来ましたが、効果がよく出て体重よりも薬を使い続けることを選択した場合、投薬量を少しずつ減らしていきながら他の薬に徐々に変えていく必要があります。

■ 精神科系の薬の使い勝手と自分でやめてしまうことの危険

 精神科系の薬というのは、急にやめてしまうと「離脱症状」という、手や体の震え、だるさ、全身がビリビリした感じなど、様々な症状が出る以外に、時には突然錯乱状態に陥り、自害・他害となることもあります。要するに、ゆっくり薬を減量していかないと、時には命にも関わる様な危険もはらんでいるのです。

 精神科医はその危険を熟知しているので、早い段階で副作用が出た場合は、すぐに他の薬を提案できます。精神科系の薬は、徐々に増やし、減らす際も少しずつ、少しずつ、離脱症状を極力出さないように見極めながら減らしていきます。これが早い段階だと、元々少ない量で出していた薬を減らすのも早く減らせるので、早めに手を打つことが出来ます。

 うつを脱するためには、何よりも発病の素因となるストレスから離れることが最優先事項となりますが、特にストレスを自覚しなくてもうつを発症することもあります。そしてうつに対して自身も周りも理解がないと、誰も気が付かないことがあり、「最近あの人妙に暗い」「何で前よりも怠けるようになった?」程度にしか受け止められません。

 症状が出ている本人も「何で最近こんなにやる気が出ないんだろう、無気力が続くのだろう」と気持ちが暗くなるだけで、受診に至らず病状はどんどん悪化していきます。最悪、錯乱状態になって暴れだしたり、自殺企図となる状態に。こうなってくると通院での治療は困難となるので、精神科の病院に入院となってしまいます。

■理解が進むことで救われる人はとても多い

 大事なのは、うつ病に対する理解を誰もが持つこと。ストレスの多い社会の中で、誰もがうつ病を発症してもおかしくない状態です。また、自分の「~であるべき」「~しなければならない」という「べき思考」に囚われ過ぎてしまうこともうつ病の発症原因のひとつ。

 この場合、いわゆる「認知の歪み」が発生している状態なので、自分の行動を縛る「べき思考」を自分の中から取り払う必要があります。カウンセリングやうつ病同士のグループディスカッションなども有効ですが、その「べき思考」の奥には自分をどこかで否定している部分があるので、そこに気が付くと解決につながる場合もあります。

 うつの人も、そうでない人も、自身の「べき思考」のフィルターを外して理解を深めていくと、より誰もが居心地の悪くない状態になるのではないでしょうか。

<記事化協力>
まるるんず@メンタルヘルスVtuberさん(@marurunzmemo)
錦山まる@マンガでわかるうつ病のリアル連載中さん(@nishikiyamamaru)

(梓川みいな/正看護師・うつ病当事者)

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