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酔いつぶれた若者が号泣 送っていった道すがらの会話に思わずもらい涙

おたくま経済新聞 / 2019年10月25日 11時56分

酔いつぶれた若者が号泣 送っていった道すがらの会話に思わずもらい涙

設置されたばかりのホームドアのある風景 ただすけさん(@tdske)提供

 自分がやっている仕事が回りまわって誰かの役に立っている……。そう誇りに思える仕事ってたくさんありますが、仕事がうまくこなせていない時は自信を無くし、叱責からうつ病にまで発展してしまうことも……。そんな世知辛い企業勤めのなか、あるツイートが話題を呼んでいます。

■ 俺役に立ってますか?生きてて良いすか?

 キーボーディスト・作曲家として活動している、ただすけさんが出会ったのは、一人の酔いつぶれた若者。その時のことを140文字以内に収めたのが以下のツイート。

「道端で飲み潰れてた見知らぬ若者を家まで送った時の話、かいつまむと「俺なんて世間の役に立たないんすよ…」『仕事何やってんの?』「駅のホームドア作ってる」『すげーよ!命を助ける道具じゃん!』「俺役に立ってますか?生きてて良いすか?」と号泣。職業に貴賤なし。ホームドア出来たね、おめでと」

 そしてツイートには、出来上がったばかりのホームドアがある駅の風景写真。この駅を知る人らからは、「この駅にはホームドアが本当に必要だったから、もう1人でもこの駅で命を落とさないように必要だったから、ありがとうございますって言いたい」「地元民としては作ってくれてありがとうの気持ちです」といったリプライがいくつも寄せられています。

 そして、ホームドアがなかったら今自分は生きてはいなかった、小さい子を持つ親としてはありがたい限りです、視覚障害者にとっても杖1本のみで駅を利用するときは命の危険と常に隣り合わせだからとても助かる、といった、様々な立場の人たちからも、ホームドアの必要性とありがたみを訴える声が。ホームドアが設置されたのがきっかけで、視覚障害者の社会参加も容易になり始めてきました。

道端で飲み潰れてた見知らぬ若者を家まで送った時の話、かいつまむと「俺なんて世間の役に立たないんすよ…」『仕事何やってんの?』「駅のホームドア作ってる」『すげーよ!命を助ける道具じゃん!』「俺役に立ってますか?生きてて良いすか?」と号泣。職業に貴賤なし。ホームドア出来たね、おめでと pic.twitter.com/ycCuFLOFqT

— ただすけ (@tdske) October 22, 2019

■ 叱られても、誰もが生きてていいんです

 会話の中で若者が発した、「俺役に立ってますか?生きてて良いすか?」という言葉。自信を無くし、自分自身にどうしたらよいのかも分からない……そんな印象を受けました。

 どうしてもその言葉が気になったので、ただすけさんにその当時の様子を聞いてみました。ただすけさんの住んでいる地域では夜になると酔っ払いが多く、酔いつぶれてその辺りに寝転がっていることもしばしばなのだとか。寒い時期には低体温状態で命を落としかねないので、ただすけさんも酔って寝ている人に声をかけることにはためらいはなかったのだそう。

 しかし、その時出会った若者は、あまり遅いとは言えない時間に、自転車置き場で不思議な姿の状態で寝ていました。事故か病気か?心配しながら声をかけたところ、泥酔状態。会話には応じてくれる様子だったそうで、家の場所を聞くとただすけさんの方角とほぼ同じ。

 そこで、若者を自宅近くまで送るその道すがら、話を聞いたそうです。若者はよく先輩から注意を受けることもあり、仕事に対して自信を無くしている様子。その日は、先輩に飲みに連れ出され、酒を飲みかわしながらも先輩からの叱責を受けたのだそう。飲みの席で先輩には怒られ、酒にも飲まれた状態で、自分はいったい何なんだろう……そんな気持ちに若者は飲み込まれていました。

 ただすけさんは話を聞き、「それは先輩のやり方については色々あるだろうけど、大事に育てようとしてんだよ。ただ怒ってるだけなら飲みに連れてかないよ?飲ませすぎなのはどうかと思うけどね、飲んでる最中に水もたくさん飲んどきなよ」と声をかけたものの、さてこの若者はいったいどんな仕事をしているのだろう、と気になりました。

 そこで、「報酬が発生してる時点で、誰かの為になってるもんなんだよ。仕事何やってるの?」と聞いてみたところ、ホームドアを作る会社で仕事をしているという返事。

 ただすけさんはそれを聞いて、「えっ?駅の?それって、地味~に人の命を救ってるんだよ。いちいち報道されないけど年間通して救われた命の数なんて数えてられないくらいだと思うよ」と話したのです。現に、先のツイートのリプライにも複数の「助かった、救われた」というコメントも出ています。

 ただすけさんが使っている最寄りの駅は、自殺で有名となっているというホームがあり、ホームドアの設置が具体的に決まった時には住民が早く設置されることを待ち望んでいたのです。若者に、この駅にも早く設置されて欲しいな、と話すと、「俺みたいなヤツでも人の役に立てるんですかね……?頑張ります……!」と号泣。

 若者の家に着くまでの約10分の間に交わした会話。その後、ただすけさんが久しぶりに駅に行くと、ホームドアが完成していたのでした。とともに、若者との会話がふっと脳裏によみがえったただすけさん。急に泣けてきて、思わずホームの写真を撮り、ツイートとともに投稿したのでした。

 ただすけさん自身も、先輩から様々なことを受け継ぎ、身に付けてきたひとり。「思い返せば自分にも人生を変える言葉を投げかけてくれた先輩達がたくさんいて、彼にとってもそうなる気付きの言葉になっていたら良いなぁと思ってます」と振り返っていました。

■ 仕事ができることと仕事を教えることの大きな違いと、経験値をどう生かすか

 仕事ができる人と、仕事ができる人を育てるということは大きく違います。若者の先輩も、もしかしたらできる様になって欲しい、という気持ちを込めての叱責だったのかもしれません。しかし、仕事ができない側としては、自分がなぜできないのかまで自分自身を上手く観察することが難しいこともあります。

 先輩としても、どう伝えたら後輩が成長できるのか、自信を持って仕事に打ち込めるようになるのか、分からないままな状態かもしれません。ブラック企業が取り沙汰されるなかで、先輩ももしかしたら職場のなかの何かと戦っているのかもしれません。

 戦った経験値を自分の下の世代にどう生かせるか、そして後輩である若者はただすけさんの言葉や先輩の言葉、叱責から何を得るのか……想像することしかできませんが、「職業に貴賤なし」。どうか、仕事で困難を感じて自信を無くしている人も、やっている仕事自体は胸を張っていいんだ、ということを忘れないで欲しいなと思います。

<記事化協力>
ただすけさん(@tdske)

(梓川みいな)

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