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ADHDのためのアプリ「ルーチンタイマー」 作ったのは「自分が困ってたから」

おたくま経済新聞 / 2019年11月3日 16時0分

ADHDのためのアプリ「ルーチンタイマー」 作ったのは「自分が困ってたから」

ルーチンタイマー編集画面

 発達障害について、少しずつテレビでも特集が組まれるなどして認知が進んでいっています。発達障害の中でも多い「ADHD」のためのスマホアプリが今、にわかに注目されています。今回は開発者に話を聞きました。

■ すぐに気が散ってやらないといけないのにできないのがADHD……

 ADHDは、注意欠陥多動性障害の略称。その名の通り、注意力が平均的な人よりも散漫になりやすく、目についたもの、気になったことの方にすぐ気がそれてしまい本来やるべきことが果たせない状態。気がそれやすいために、あちこち動き回って落ち着かず、衝動的な行動が多いのがADHDの人の共通点です。

 ADHDの中でも、衝動性が特に高い、多動性が高い、衝動性も多動性もあまり強くはないが極度に注意力が散漫になりやすい、といったさまざまな特性がありますが、本来やるべきことを遂行するためには、この特性は大きな障壁となります。

 この特性を抱えている人は、遅刻をしやすい、片付けが極端に苦手、課題や提出物がうまく捗らずに遅れて提出する、あるいは提出しなくて済むような悪い回避行動(捨ててしまう、嘘をつくなど)にはしり勝ちです。そのため、周囲の環境に合わせた行動が苦痛となる人も多くいます。

■ ADHDを持つ人が欲しいのは、「声掛け」

 一日の生活は、時に分刻みの行動で構成されるところがあります。朝の支度や学校や職場から帰った後にするべき行動など、ライフサイクルによってそれぞれ変わってくるものの、平均的な人であればその分刻みの行動パターンを自分の中でルーチン化し、時計を見ながら行動することができます。

 しかし、ADHDがあると、朝起きて顔を洗う前に目の前のスマホに目が行き、そのままベッドから出ることができずに朝の支度が遅れる、食事の時にテレビがついていたらそのまま時間を忘れて見入ってしまう、といったことで社会生活に支障をきたすことになります。

 その「脇道にそれてしまう」状態に効果的なのが、時間ごとにやるべきことを声掛けしてもらうこと。「ルーチンタイマー」は、ADHD当事者が設計、デザインをしています。

■ ADHDと気づいてからアプリを手掛けるにいたるまで

 このアプリを企画・デザイン・グロースしているのは、自身がADHDの当事者であるNanaさん。Nanaさんは、寝坊をしたわけでもないのになぜかいつも遅刻をしてしまう、という状態が小学校から大学までの間、ずっと続いていました。朝の支度のルーチン作業がなかなかうまくいかず、毎朝慌ててダッシュで登校するという状態が続くことは、Nanaさんにとっての大きな困りごと。

 支度をしようと行動し始めても、他のことに気がそれてしまい、結局バタバタと家を飛び出してしまうという生活がずっと続いていました。Nanaさんは大学在学中にADHDと診断され、そこで同じような生きづらさを抱えている人たちと出会い、生き辛さを共有したのでした。

 大学生当時のNanaさんは、アプリやWebサービスの開発に興味を持っていました。「ITで日常のこまったことや悩みを解決している開発者たちと関わるうちに、わたしもこの見えにくい生き辛さをアプリの力で解決したい」、Nanaさんは同じような生きづらさ・困りごとを持っている人たちと、自身のこれまでのことを重ね合わせたことで、アプリの開発へと進んでいくことになります。

■ 怒られずにせかされずに済む、アプリの「ルーチンの読み上げ機能」

 「ルーチンタイマー」は、発案したNanaさんが企画・デザインを行い、プログラム開発と要望のあった機能の実装を、Nanaさんの婚約者でもある大将さんが担当。2019年3月にiOSアプリとしてリリースされ、以来少しずつアップデートを重ねて現在に至るわけですが、使ってみた人たちからは、「シンプルで使いやすい」「ダラダラしがちな自分にピッタリ」といった評価を受けています。さらに、ユーザーのひとりがツイッターにてこのアプリを紹介したところ、発達障害界隈を中心に大きく話題となりました。

 ADHDの特性が強い子どもは、使ったものを元に戻す、宿題がいつまでも終わらない、学校などからの提出物をため込んでしまうなど、親から見ると、つい口酸っぱく怒ったりせかしたりすることばかりが目につきやすいのですが、アプリ内の「ルーチンの読み上げ機能」を使うことで、今自分がやるべきこと、その次にすべきことを分刻みで設定でき、毎日使えるようにタイマーをかけられるため、いちいち親が口酸っぱくイライラしなくても済む設計。

 もちろん、自分で特性を理解してアプリを自分で使える年齢であれば、親元を離れて生活するときでも読み上げ機能でルーチンをこなしていけるようになれます。

 スマホの時計アプリなどの他のタイマー機能は、アラーム音と入力された文字が出るだけなので、アラームが何を意味して鳴っているのか忘れてしまうこともあります。しかし、タイマーにセットした文字を一つ一つ音声で読み上げてくれることで、「何かアラームが鳴ってる」から、「今はこれをする時間なんだ」とやるべきことが明確になります。また、途中で気が散ってしまってもすぐに戻れるように一定のタイミングで残り時間を読み上げる機能もあるので、軌道修正がしやすいのも特性持ちにとってはありがたいところです。

 やるべきことをつい忘れてしまう、手順がわからなくなってしまうというADHDの特性に、この読み上げ機能が効果を発揮しているわけです。複数のタスクがあると混乱してしまいがちなADHDの特性にとって、やるべきことをやるべき順番に声で知らせてくれるというのは、他のことに気がそれっぱなしになることを防ぐことができますね。

■ 今後の展開について

 現在はiOS版のみですが、11月中にはAndroid版もリリース予定とのこと。また、ユーザーから要望があった機能を今後もアップデートを重ねていく予定だそうです。

 iOSとAndroidの両方が出そろうことで、さらに多くの人が使えるようになります。今後は、営業で外回りに行くときにも、1件あたりの時間と移動時間などのタスクをセットするといった使い方など、時間管理を効率よくできるようになりそうですね。

ADHD向けのアプリ、「ルーチンタイマー」!
うっかり遅刻や、作業途中で別のことをしてしまうなど、ADHDあるあるな問題を解決します。朝の支度などのいつものルーチンの各作業時間を登録するだけで、完了まで音声でアナウンス!https://t.co/kwjgLXcl0Q#遅刻防止 #ADHD #ADHD対策 #発達障害

— ルーチンタイマー@Android版は11月中 (@RoutineTimer) March 23, 2019

<記事化協力>
Nanaさん(@nana_freecolor)
大将さん(@taishoizm)
ルーチンタイマー公式ツイッター(@RoutineTimer)

(梓川みいな)

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