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おでんの餅巾着が1.5倍 親子の愛ゆえに起こった「善意の交差点での接触事故」

おたくま経済新聞 / 2019年11月4日 12時0分

おでんの餅巾着が1.5倍 親子の愛ゆえに起こった「善意の交差点での接触事故」

旭志織さん(@gokigenYo_asahi)提供

 老いゆく親の姿を心配する子、老いても子のことをいつも想う老親。そんな親子の心配と善意が交差した結果、思わぬ事態になってしまったという状態に「親子愛ゆえのいい話」とツイッターで話題になっています。

■ 善意のすれ違いが起こしたこと

“ここ数年、実家滞在中におでんが出た時は、しれっと餅巾着を食べ尽くすようにしてた。

両親共に高齢だから、餅が何となく心配で…

んで今日の実家の夕食はおでん。
そこには目測で例年の1.5倍の餅巾着。

「あんたコレ好きみたいやけん多めに入れた」と母。

善意の交差点は、時々接触事故が起きる。”

 と、帰省時の出来事をツイッターに投稿したのは、千葉のプロレス団体・2AW所属プロレスラーの旭志織さん。旭さんの両親は福岡、旭さん自身は千葉在住ということで、帰省もそう頻繁にはできない距離。そして、旭さんのお父様は79歳、お母様は77歳と、高齢者ならではの事故が起きやすくなるお年頃。

 高齢の両親がお餅を食べることに心配した旭さんは、好物を作って迎えてくれる両親のことを思い、おでんの時は餅巾着を両親が食べる前に、何気なくさりげなく鍋の中から消し去っていってました。

 が、母の息子に対する観察眼は年をとっても衰えません。旭さんの親思いの行動が、「餅巾着は息子の好物」だと思ったようで、いつもよりも多めに入れてしまったという事態に。言葉を添えずに起こした善意が、思わぬ形となって返ってきてしまいました。

 ツイートを目にした人たちからは、「いい話だなぁ……」「やっぱり母は子供をよくみてますね」「愛の誤解あるある(笑)」と、ほほえましく思った様子。一方で、「気恥ずかしくても本音をちゃんと伝えて置かないと痛い目にあうという教訓ですね」「もう口に出してはっきり言うしかないですね」と、言葉で伝えることは大事、というコメントも。

ここ数年、実家滞在中におでんが出た時は、しれっと餅巾着を食べ尽くすようにしてた。

両親共に高齢だから、餅が何となく心配で…

んで今日の実家の夕食はおでん。
そこには目測で例年の1.5倍の餅巾着。

「あんたコレ好きみたいやけん多めに入れた」と母。

善意の交差点は、時々接触事故が起きる。

— 旭志織 (@gokigenYo_asahi) October 29, 2019

■ 老親への思いと心配

 旭さん自身「もともと、あまり年寄り扱いされることを好まない両親なので、直接言葉で伝えるのではなく、物理的に危険のあるものを無くしてしまえば!という思いでの行動だったのですが…逆効果でした」と振り返っています。

 旭さんに話を聞いてみたところ、ご両親とも、昭和10年代生まれ。昔気質で頑固な所も多いのですが、性格は基本的に温厚で、たまに帰省すると旭さんの好きなものを作ってくれたり買い置きしてくれてたりと、体を張って頑張っている息子さんを大事に思っている様子。

 元警察官のお父様は、数年前に脳出血で倒れて以来、右半身に麻痺がある状態。家屋内はバリアフリー改修したものの、片麻痺により何とか自力での歩行は可能なものの、やはり介助が必要な部分もあり、食事中にむせて咳き込んでしまうことも多いのだそう。

 片麻痺により、顔の半分や嚥下(えんげ:飲み下す)機能の片側半分が麻痺してしまうと、食べたものを上手く飲み込みにくくなり、食道に行かずに気道の方へ流れ込んでしまうため、むせてしまうことも増えます。その結果、誤嚥性肺炎という厄介なことにつながったり、餅による窒息もあり得ます。旭さんが心配なのはその辺り。

 幸い、お母様は年齢相応に健康ではありますが、年とともに咀嚼(そしゃく:もぐもぐする)機能の衰えや、嚥下機能は意識しないとどんどん衰えていってしまう世代。年より扱いされたくない両親を思って、高齢者に起きやすい事故の話をあまりしにくい部分もあったのかもしれません。

■ 年齢と衰えを自覚してもらう難しさ

 70代は、自身の衰えを実感しつつも、まだ受容できない人が多い世代。電車やバスで席を譲ろうとしたら、「人を年より扱いするな!」と怒ってしまうのもこの世代が多いものです。そして、脳出血という大病の後に残る後遺症は、自分の体が今まで通りに動かないというショックと、今まで通りに動かないことに対して受容しきれない部分も多く、リハビリが上手くいかなかったり、自暴自棄になってしまうことも多くみられます。

 旭さんのお父様は、大病後に自宅を改修したり、リハビリを行うことで自力での歩行ができるまでにはなったものの、昔気質で頑固な性格ゆえに、物理的に危険と思われることを無くしていく方向でと旭さんは行動していた様ですが、結局は逆効果となってしまっています。

 親を思うあまり、逆に上手く伝えられなかったり、衰えを指摘するのに躊躇してしまうという話は、実はどこの家庭でもありがち。結局は、衰えている本人が自身の老いを自覚しないと、思わぬ事故につながってしまうことにもなりかねないのです。

■ 年齢を普段の会話に出して老いを少しずつ認識してもらう

 「お母さんさ、60代の頃に比べて70代の今ってしんどいやら疲れたやらって言葉が増えたよね」実際にこんな言葉を出すと、「えぇー?そうだったかしら?」となるのは大体どこの家でもありがちな会話。「最近血圧が前よりも高いって健診で言われちゃって……」とか、「骨粗しょう症だから転ばないように言われたわ」などという言葉がでてきたらしめたものです。

 年を取るにつれ、何かしらのちょっとした症状は出やすくなるもの。ちょっとでも「腰が痛い、膝が痛い」という言葉が出るようなら、「年が年だからしょうがないけど、整形外科で湿布もらってきたら?」と、年齢と出ている症状、健診などで医師から言われた言葉などを絡めて衰えを少しずつ指摘していくことで、年相応の老いを認識してもらう、この繰り返しをさりげなくちょくちょく話すことで、徐々に「この年だから仕方ないのか……」と受け入れられるようになってきます。

 また、老親と同世代の人が実際に遭遇した話をそれとなくしても効果があるかもしれません。「うちの近所で良くしてくれてるお母さんと年が近いおばちゃん、この前転んで腕の骨折って大変なことになってたよ」とか、「高血圧を自営業だから忙しいって放っておいた人、結局脳出血になっちゃって3日3晩、ICUで生死をさまよっていたの」という話は、実は筆者も割と使いがち。

 筆者は看護師として呼吸器と整形外科の病棟、内科外来、老人施設と渡ってきましたが、なまじ自分が見てきただけに、その話を聞いていた筆者の親は、70代に上がったあたりで老い支度を始めるようになりました。よほど生々しく聞こえていたのもありそうですが……。長距離運転が好きな実父(71)も、その母親(=筆者の祖母)の法事に車で長距離移動をするのをラストランと決めたようで、以降は3ナンバーセダンから軽自動車に乗り換えて、免許の返納も考え始めているようです。

■ 普段からの親子の会話がカギとなる

 これから老いていく親を前に、どう話を切り出せばいいか分からない人もきっと多くいると思います。特に大病を患ったことがない人ほど、こういった話はなかなか切り出しにくいもの。面と向かって「もう年だから終活考えないとだね」と言うのは結構な高さのハードルです。

 しかし、年を取るにつれていつ何が起きてもおかしくないのは事実。なので、近所の噂から新聞などに載っている高齢者の事故を引合いに、話を広げていくというのは子どもができる親孝行のひとつかもしれません。普段から親の体調をそれとなく聞き、「そりゃ年だから」という言葉をさりげなく交えつつ気遣う、という姿勢で会話を広げることで、親からしてみても「この子は自分のことを大事に考えてくれている」ということが伝わりやすくなるかもしれませんよ。

 特にこれからの季節、お餅を食べる機会も増えてきます。「まだ年なりだけどしっかりしているし」と思っていたら、のどに詰まらせたという事例は毎年起こっています。毎年起こる窒息事故を自分の親が起こさないようにするためにも、「70過ぎたらお餅は丸ごと入れないで切って使うと、のどに詰まりにくくなるから安全が増すんだって」なんて話を普段からしておきたいですね。

<記事化協力>
旭志織さん(@gokigenYo_asahi)

(梓川みいな)

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