NASA 未開封だったアポロ17号の月面サンプルをついに開封
おたくま経済新聞 / 2019年11月8日 9時0分
アポロ17号の未開封サンプルを開けるNASAの研究者(Image:NASA)
人類初の有人月探査計画だったアメリカのアポロ計画。6回の月面探査で数多くのサンプルを地球に持ち帰ってきましたが、中には未開封のものも。再び月を目指すアルテミス計画を前に、そのうちの1つが2019年11月5日(現地時間)研究者によって開封されました。
開封されたサンプルは、1972年12月7日に打ち上げられたアポロ17号のもの。アポロ計画唯一のサターンVロケット夜間打ち上げで、しかも月着陸船パイロットのハリソン・シュミット氏は、アポロ計画に参加した宇宙飛行士の中で唯一の地質学者という、非常に学術的な期待をかけられたミッションでした。
アポロ17号が着陸したのは、月のタウルス・リットロウ渓谷。アポロ14号と15号が着陸した「雨の海」から十分離れており、雨の海を形成した巨大隕石の衝突による影響を受けていない、より古い時代の岩石や土壌のサンプルを持ち帰ることが目的でした。また、宇宙放射線が生物に与える影響を調べるため、5匹のマウスも司令船に載せて月への往復を行っています。
アポロ17号のコマンダー、ユージン・サーナン宇宙飛行士とハリソン・シュミット宇宙飛行士は、月面で3回、計22時間3分57秒の船外活動を行い、月面車でのべ30km以上を走破しました。採集したサンプルはアポロ計画最多の約110kg。これと合わせ、月面での船外活動時間、月周回の回数も有人での最長・最多記録となっています。
アメリカが再び有人で月を目指すアルテミス計画を前に、今回初めて開封されたのは、サンプル番号「73001」と「73002」というもの。サーナン宇宙飛行士が月面をボーリング調査した際に採取した、約60cm分の地層サンプルです。
このサンプルが選ばれたのは、アルテミス計画において、どのような形でサンプルを採取したらいいのか、という方法を検討するため。特にこのサンプルは、タウルス・リットロウ渓谷で起きた地滑りの様子を解き明かす手がかりになる可能性があります。大気のない星で地滑りが起きると、どのようなものになるのかを地層の成り立ちから推測するというわけです。
地球帰還以降、真空パックされて保管されてきた「73001」と「73002」のうち、まず73002が11月5日にテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターで開封され、テキサス・オースチン大学のX線CT装置で内部の3Dモデルが生成されました。
NASAが公開した画像では、1974年に撮影された73002のX線画像と、今回作成されたX線CT画像が上下に並べて示されていますが、1974年撮影時にはボンヤリとしか写らなかった内部の土壌サンプルが、今回は粒状まで鮮明に描写されています。45年間の技術革新を象徴するかのようです。
開封されたサンプル73002は、酸化などの反応が起こらないよう、乾燥した純粋窒素が満たされた容器に移され、中身が取り出されました。これを4分の1インチ(6.35mm)ごとに分け、内容物を詳しく分析していきます。
これを担当するNASAのチャリス・クライシャー教授は「私はアポロ計画の話を聞いて育ち、それを追いかけるように宇宙に関するキャリアを積み重ねてきました。今ここで、次世代の月計画に貢献する研究ができる機会に恵まれています。このサンプル開封の一員になれて、非常な名誉であるとともに、責任の重さを感じています。私たちは歴史そのものに触れているわけですから」と、今回の研究に携わる気持ちを語っています。
サンプル73002に続いて、2020年の初め頃にはサンプル73001も開封される予定。アポロ以来およそ半世紀の時を経て、ようやく開封されたサンプルは、研究者にどんな発見をもたらしてくれるのでしょうか。
ちなみにNASAによると、月面車導入で行動範囲が増えたアポロ15号〜17号はサンプル採集量が非常に多く、今回開封されるアポロ17号のサンプル73001、73002以外にも、まだたくさんの未開封サンプルがあるとのこと。これらは今回のように、技術が発達した未来に詳しく調査できるよう保管されているのだとか。
アポロの遺産と、2024年以降にもたらされるアルテミス計画でのサンプル。現代の研究者だけでなく、未来の研究者にも提供され、月の謎を解き明かす材料となっていきます。
<出典・引用>
NASA プレスリリース
Image:NASA
(咲村珠樹)
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