診察時の会話で発覚! 還付金詐欺に気が付いた医師のファインプレー
おたくま経済新聞 / 2019年11月16日 10時0分
外来やクリニックで働いていると、顔なじみの患者さんとたわいの無いことを話すことがあります。今回、そのたわい無い話かと思っていたら実は患者さんが騙されていた!という、ツイートが注目を集めています。
この話を紹介したのは内科のクリニックを開業している、亮介先生。ある日、普段どおり顔なじみの患者さんを診察していました。しかしその日に限って少し違うことが……。
「いつも話が長いおばあさん、しんどいと来院、今日は機嫌が良くすんなり外来終了、今日はご機嫌ですね?って言ったらおばあさん『さっきね、市役所から電話かかってきて50万円医療費が帰ってくるって。このあと、お家に振り込むために市役所の人が通帳と印鑑取りにきてくれるの』と笑顔で…」これは明らかにヤバい……。と察した亮介先生。
「あかんそれはあかんやつやって説明するも聞かず、結局、こちらから警察に通報しておばあさんを説得、かえっていつもより時間取られたw」と、事の顛末を語っていました。
亮介先生によると、その後期高齢者の女性の患者さんは特に認知症の傾向もなく、内服薬はきちんと飲めているものの、普段は依存的な傾向で、しんどいだの眠れないだのと診断されている症状とはあまり関係のない、さまざまな症状を訴える不定愁訴がある様子。
このため、ひとしきり話を聞いてみると、それで満足するのか、安心して帰っていくのだそうです。月に1回の診察日にも必ず受診しており、年相応に認知能力に問題はないようですが……。
「私は騙されないわって」と、ずっと診察時に言っていたそうですが、結局は騙されていたことに全く気が付かないまま。通帳と印鑑を取りに来られる前に診察に来たことで、事なきを得ました。医師よりも「市役所の職員の言葉」の方が、高齢者にとってはパワーワードなのでしょうか……?
診察時に患者さんのお話を聞くのは、定期的に診察している状態と何らかの変わりがないかを確認したり、会話から出てくる小さな異変から思わぬ病気が発覚したりすることもあるから。なので、患者さんが予約だけの時や、あまり混んでいない時は、患者さんの世間話に付き合うこともしばしばあります。
特に高齢者は、だんだんと減っていく同世代の友人を見てはさみしく思い、特に女性はおしゃべりになりやすい傾向があります。亮介先生も、普段はしんどそうにしていて、愚痴っぽい話を延々としている患者さんが、何故かご機嫌でさっさと帰ろうとしていたので声をかけてみたところ、還付金詐欺の前兆に気が付いたそうです。
この一連の話に対するリプライには、ファインプレー!グッジョブ!などという声が飛び交う中、より一層の啓発が必要では?という声もありましたが、「最終的に警察官に言われて、私だけはひっかかるかって思ってたのにって」と、その患者さんは最後まで自分が騙されないことに妙な自信を持っていたようです。
あかんそれはあかんやつやって説明するも聞かず、結局、こちらから警察に通報しておばあさんを説得、かえっていつもより時間取られたw
— 亮介@内科開業医 (@ryosuke_radio) November 13, 2019
こうした、未だ続く特殊詐欺。裁判所を騙るハガキや電話で息子を名乗ってお金を取りに来る、百貨店や銀行を騙ってカードをだまし取る、医療費がATMで戻ってくる、などなどその手口はさまざま。そのターゲットになるのは、大多数が高齢者。普段から啓発活動に力を入れていたとしても、高齢者特有の頑固さや、「長いこと生きてきたんだから私は引っかからない」という謎の自信を持っている人も案外いるものです。
いわゆる「オレオレ詐欺」があまりにも認識され過ぎたために、こうした特殊詐欺は複雑化の一途をたどっています。今回はかかりつけ医が、患者さんの様子が普段と違うことから声をかけたことによって未遂で済みましたが、同じようなことは日本中のあちこちで起こっています。
もし、「お金が返ってくるからATMへ」「還付に必要なので通帳と印鑑を」などという言葉が出てきたら即詐欺と判断してもよいくらい。また、高齢者は連絡を取る人がだんだん身内だけや、ごく親しい人だけになるので、それ以外の電話番号からかかってきた電話は取らずに留守電にしておく、詐欺対策機能の付いた電話機に取り替えるといった対策も有効となります。
自分の親や祖父母が被害に遭わないうちに、具体的な対策を取るとともに、普段からの話題としてこうした実例を高齢者にお話しすることも良いかもしれませんね。
<記事化協力>
亮介@内科開業医さん(@ryosuke_radio)
(梓川みいな/正看護師)
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