元スペイン空軍のミラージュF1戦闘機 民間企業の仮想敵機に改修
おたくま経済新聞 / 2019年11月26日 18時0分
改修が終わりアメリカ民間機登録となった元スペイン空軍のミラージュF1M(Image:Paramount Aerospace Systems)
南アフリカの防衛関連企業グループ、パラマウントは、アメリカの軍事訓練サポート企業ドラケン・インターナショナルから受託したミラージュF1M(元スペイン空軍)の改修において、最初の1機が2019年11月19日(現地時間)にアメリカで初飛行したと発表しました。
ドラケン・インターナショナルは、アメリカ国防総省など向けに、各種の訓練における相手役(敵方)を務める事業を手がける企業。よく知られているのが、戦闘機訓練での相手役(アグレッサー)です。アメリカにはドラケン・インターナショナルのほかにも、同じような訓練をアウトソージングで請け負う企業が存在します。
ドラケン・インターナショナルが保有する訓練機はミラージュF1Mのほか、チェコ製のL-159EとL-39、A-4Kスカイホーク(元ニュージーランド空軍)、MiG-21Bis(元ポーランド空軍)、アトラス・チーター(元南アフリカ空軍)など150機以上。訓練の内容に応じて、派遣する機種を選定しています。
スペイン空軍から退役したミラージュF1M(単座・複座)を、ドラケン・インターナショナルは22機導入しました。すでに1990年代後半、スペイン空軍によりレーダーやコクピット計器の改修を受けており、カラーLCDディスプレイによるグラスコクピット化やGPS、NATO標準の通信システム、デジタル敵味方識別装置などが装備されています。
しかし今後F-22やF-35などといった第5世代戦闘機との訓練を行うにあたっては、より現代の状況に即した装備に改修する必要があります。そこでミラージュF1の運用・整備経験の豊富なパラマウント・グループの航空部門、パラマウント・エアロスペースに近代化改修を依頼しました。2018年3月27日のことです。
改修作業は、ドラケン・インターナショナルのフロリダ州レイクランドにある整備場で実施。一旦機体を分解し、個体ごとの状態を見極め、それぞれに適した修復(レストア)作業とともに、新しい機器を導入し、アメリカの民間機としての登録申請を行います。このあたりは、中古車を整備して車検を通し、登録し直す作業に似ているかもしれません。
改修1号機の初飛行を受けて、パラマウント・グループUSAのスティーブ・グリーセルCEOは「ドラケンのミラージュF1改修プログラムをサポートでき、誇りに思います。パラマウントは、このミラージュF1の機体やエンジンのオーバーホールだけでなく、アビオニクスや作戦システムの近代化改修について、豊富な経験を有しています。ドラケンと協業でき、長期に及ぶ強力な連携を築けることに興奮を禁じ得ません」とコメントを発表しています。
改修が終わり、アメリカの民間機としての登録を済ませたミラージュF1Mは、新天地となるネバダ州のネリス空軍基地へ順次向かいます。現地では、アメリカ空軍の訓練に協力している13機のA-4、23機のL-159Eといった先輩格とともに、戦闘機パイロットの訓練相手となる予定です。
<出典・引用>
パラマウント・グループ プレスリリース
Image:Paramount Aerospace Systems/Draken International/USAF
(咲村珠樹)
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