アメリカの新型空母ジェラルド・R・フォード 航空機の運用試験開始
おたくま経済新聞 / 2020年1月20日 19時0分
ジェラルド・R・フォード(CVN-78)に着艦するVX-23のF/A-18F(Image:U.S.Navy)
アメリカ海軍の新型空母ジェラルド・R・フォード級1番艦、ジェラルド・R・フォード(CVN-78)が、大西洋上で空母としての性能を確かめる試験を2020年1月16日(現地時間)に開始しました。この試験で、電磁カタパルトや新しい着艦装置などをチェックします。
ジェラルド・R・フォード級空母は、1960年代に設計されたニミッツ級空母に代わる、新世代の原子力空母として、数々の新機軸を設計に盛り込んでいます。各所で自動化・省力化が進められ、数百人規模で乗組員を削減したほか、原子炉の出力やレーダー能力なども向上しています。
空母として重要な、航空機の運用能力も向上。搭載機数も最大90機と増加し、新しい発着艦システムを採用し、単位時間あたりの出撃機数も向上しています。
発艦システムでは、従来の蒸気式カタパルトに代わり、リニアモーターを利用した電磁カタパルト(ErectroMagnetic Aircraft Launch System=EMALS)が採用されました。艦の推進(蒸気タービン)にも使用される蒸気圧を利用する蒸気式カタパルトでは、発艦のたびに蒸気をシリンダーに充填し、航空機の重量ごとに蒸気圧を調整する時間が必要です。
これに対しEMALSは、原子炉で作られた電力を利用したもの。電気なので蒸気を充填する必要もありませんし、発艦する航空機の重量に応じて出力をきめ細かく、しかも瞬時に調整することが可能。発艦の間隔が短縮され、より短時間に攻撃隊の発進が完了するわけです。
このほかにも着艦拘束装置も新しいAdvanced Arresting Gear(AAG)となっており、単位時間あたりでより多くの搭載機を着艦できるように改良されています。今回の航空機運用試験では、この2つの装置を実際に使用し、航空機運用を実施します。
最初に着艦したのは、第20評価試験飛行隊(VX-20)所属のE-2Dアドバンスド・ホークアイ。続いて同じくVX-20所属のC-2Aグレイハウンド、第23評価試験飛行隊(VX-23)所属のT-45ゴスホーク、F/A-18E/Fスーパーホーネット、E/A-18Gグラウラーが着艦しました。
着艦機のうち、F/A-18E/Fは2018年1月に試験で発着艦したことがありましたが、残りの機種はこれが空母ジェラルド・R・フォードへの初着艦。飛行甲板とともに、新しい着艦拘束装置の感触も味わいました。
着艦に続き、EMALSを使用した発艦試験も行います。これまでカタパルト発艦シーンに、情景としてのアクセントをもたらしてくれた蒸気の湯気がないので、なんだか少し味気ない気もしていきます。しかし、将来はこのような光景が当たり前になるんでしょうね。
空母フォードの飛行長(エア・ボス)、メーディ・アカセム中佐(コールサイン:メトロ)は「昨年後半にかけて、我々はニュージャージー州のマグワイア・ディックス・レイクハースト統合基地で、EMALSやAAGを搭載した空母での運用に備えた訓練を行なってきました。その集大成が、今飛行甲板上で展開されているんです。とてもエキサイティングですよ」と語っています。
空母ジェラルド・R・フォードでの航空機運用試験は、様々な条件のもと2020年3月まで続けられる予定。この試験をクリアすれば、いよいよ遠洋航海での運用試験に移ることになります。
<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)
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