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花火の軌跡が描く「火の鳥」写真家長瀬正太の作品が群馬とニューヨークで展示

おたくま経済新聞 / 2020年1月23日 14時29分

花火の軌跡が描く「火の鳥」写真家長瀬正太の作品が群馬とニューヨークで展示

長瀬正太さんの「Baby bird garden #1」(長瀬正太さん提供)

 夜空に開く打ち上げ花火。その時カメラを動かすと、幻想的な「火の鳥」が舞っていた……。Twitterでも人気の写真家長瀬正太さんが手がける、花火から生まれる「火の鳥」写真の展示が2020年2月から4月にかけ、群馬県前橋市とニューヨークで行われます。

 通常、打ち上げ花火の写真撮影をする場合、カメラを三脚などに固定し、花火が開くタイミングを見計らって2~5秒程度の長時間露光を行います。これにより、花火の「星」と呼ばれる火の粒が大きく広がる軌跡を写し込むのです。

 長瀬正太さんが手がける「火の鳥」写真は、打ち上げ花火を撮影する長時間露光の間にカメラを動かし、星の軌跡で絵を描く感覚で生まれるもの。カメラの動きのほか、風によって花火が流されるため、2つとして同じものはなく、撮影を終えるまでどのような姿になるか分かりません。


 花火が描く「火の鳥」と長瀬さんとの出会いは、2015年の前橋花火大会(群馬県)でした。前橋花火大会では花火の煙が滞留し、見にくくなってしまうことを防ぐため、花火師さんは打ち上げ場所を2つに分けて交互に打ち上げる方式をとっています。

 最初はカメラを三脚に据え、通常の手法で撮影していた長瀬さん。打ち上げ場所が変わるたびにカメラの向きを直していたのですが、途中から三脚から外し、手持ちの状態で撮るようになりました。

 もちろん、三脚に固定していないので数秒間の露光中、どうしても手ブレが発生します。長瀬さんは、どうせなら手ブレを味として「露光中にピント位置をずらし、意図的にアウトフォーカス状態を作ると、花火がまるでイソギンチャクの触手のようになる」という作画法を試してみることに。

 そのうち、ピント以外にずらして撮影できるものはないかと考え、装着していたズームレンズの焦点距離も露光中にずらす「ズーミング(露光間ズーム)」も重ねてみました。そこから誕生したのが、作品のプロトタイプとなる「火の鳥#0」です。

 長瀬さんはさらに試行錯誤を重ね、打ち上げ花火の露光中にカメラを意図的に動かし、前衛写真の「ライトペインティング(Light Painting。ライトドローイングとも)」のような手法で撮影するように。こうして生み出されたのが、打ち上げ花火の「火の鳥」作品群です。現在まで発表されたのは10数点。このほかに30点以上の作品が発表を控えているといいます。


 これまで活動拠点である群馬県を中心に、関東甲信越で開催される花火大会に足を運び、作品を作ってきた長瀬さん。撮影の上で好みの花火を伺うと、花火が開いたのち、散った星からさらに小さな星に分かれるもの(花火師用語で「星散」)や、星の色が変化していくもの(花火師用語で「変化菊」「変化牡丹」)、そして色違いの星が同心円状に広がる「八重芯(二重芯)」や多重芯の大玉(一般に「尺玉」とも言われる10号玉以上を指す)を挙げてくれました。

 色の面では、黒色火薬本来の橙色をした「和火」に、古から伝わる時間のようなものを感じるとのこと。また「火の鳥のイメージとしては、やはり赤(主にストロンチウム化合物の炎色反応を使用する)も好み」と話してくれました。

 長瀬さんの「火の鳥」作品は、まず2020年2月8日から3月15日まで、群馬県前橋市のアーツ前橋(前橋市千代田町5-1-16)で開催される特集展「前橋の美術2020-トナリのビジュツ-」に3点を展示。3月7日の14時30分~16時には、長瀬さんが来場してのギャラリートークも開催される予定です。

 アーツ前橋での特集展に連動した長瀬さんの個展「火の鳥展」も、群馬県前橋市のギャラリーあーとかん(前橋市上新田町680-12)で3月7日~15日に開催予定。こちらでは17点の作品が展示され、初日の3月7日はアーツ前橋でのギャラリートーク終了後、そのほかの会期中は長瀬さんご本人が在廊する予定とのことで、作品についての質問や、感想を直接伝えることもできます。

 また、アメリカのPIER94(711 12th Ave.)で2020年4月23日~26日に開催される「ARTEXPO NEW YORK」にも、告知フライヤーにもなっている「火の鳥#5」が1点(このほか別紙カタログにて13点)展示されます。

 ARTEXPO NEW YORKは、今回で42年の歴史を誇るアートイベントで、かつてはアンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、ロバート・ラウシェンバーグ、リロイ・ニーマンといった現代アートの巨匠も参加。世界中からバイヤーが集まり、その場で作品の買い付けも行われるという世界最大規模のアート・トレードショウです。

 長瀬さんは展覧会を前にした心境を「私の火の鳥は、夜空を大きな紙とし、花火をインクとし、カメラを筆として使って描いた写真です。そこには私の想像通りに描けたものは1枚もなく、全てが私の想像の外側から飛び込んできたイメージです。そんなイメージが観てくださる方の頭の中に何を生み出し、どのような世界へと広がっていくのか?それが今から楽しみで仕方ありません」と語ってくれました。

 夜空に舞う幻想的な「火の鳥」の数々。観た人々のイマジネーションの世界で、どのように羽ばたくのか楽しみです。

<記事化協力>
長瀬正太さん(@syouta0002)

(咲村珠樹)

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