中古で見つけたPostPetで思い出す 20年前のIT事情あれこれ
おたくま経済新聞 / 2020年1月26日 7時0分
「PostPet Kids」のホーム画面(スクリーンショット)
メールソフト「PostPet」と聞いて懐かしく感じる方は、インターネット普及期をリアルタイムで生き抜いてきた世代でしょうか。そんな「PostPet」の子供向け版「PostPet Kids」を久々に使い、当時のネットやIT事情を思い出しました。
生まれた時から充実した通信環境が整備されている世代とは違って、人生の途中からそれまで存在していなかったインターネット文明の波が押し寄せてきた世代の筆者。モモをはじめ、かわいいキャラクターがメールを運ぶ「PostPet」は「パソコンやインターネットは詳しい人たちが使うもの」という先入観を払拭してくれた、筆者にとって最初のIT革命でした。
そんな「PostPet」の子供向け版「PostPet Kids」の中古品が、260円(税込)で売られているのをとあるお店で発見。懐かしさのあまり、ロゴ入りケースだけでも道具箱として活かそうと思って購入したのですが、脳裏に歴代ペットたちが走馬灯のように現れ、再び召喚してみたくなりました。
ちょうど手元にサポート終了でジャンクになるWindows7マシンがあったら、インストールしてみたくなるのが人情というもの。どうかな〜、動くかな〜とセッティングしてみたところ、あっさりと起動!動作保証はないため、メーラーとしてではなく、デスクトップマスコットとして愛でることに成功したのでした。PostPet Kidsならではの「おえかきちょう」でも遊んでみましたよ。
そういえば今は意識せずに操作できているマウスですが、最初はペットを撫でるマウス操作もうまくできずに「殴る」というコマンドになってしまったことも。「ポコッ」という音とともに痛がるペットに動揺し、思わず画面に向かって「ごめんっ!」と謝ったものでした。久しぶりにポストペットで遊んでいたら、すっかり忘れていた過去の様々な思い出がよみがえりました。
■Y2K問題西暦1900年代のコンピュータープログラムは、容量を圧縮するために設計時の設定によっては西暦の下2桁のみで年がカウントされていて、2000年が「1900年」や「00年」と認識されて誤作動を起こすのではないか、と騒がれたIT業界の黒歴史。多くのIT技術者が動員され、昔に書かれたプログラムのコードを確認して修正しました。最終の動作確認として顧客のところに泊まり込み、2000年の年明けまでシステムを監視していた場合もありましたっけ。
人類が未経験だった、黎明期ゆえの騒動。未知への懸念は経験とともに解消されていくことを考えると「どうなってしまうんだろう……」とあの年の元旦を迎えた私たちは、最初で最後の歴史の生き証人なのかもしれません。
■パソコンから固定電話の呼出音今では常時接続が当たり前になっているネット環境ですが、わが家ではWindows Meの途中まではメールの送受信やインターネット閲覧の度にいちいち「ダイヤルアップ回線」で接続していました。接続するためのソフト(今で言うアプリ)を起動し、待つことしばし。
するとWindowsの効果音ではなく、リアルな「トゥルルル……トゥルルル……プチッ(繋がった)」という固定電話と同じ音がするという、最新機器でありながらのアナログ感。ネットサーフィン中に家族が家の電話を使うと接続が途切れるなんてこともよくありました。
通信速度にいたっては一般的なアナログモデムが33.6〜56Kbpsと、最高1Gbpsの光ファイバー接続が当たり前になった今と比べると、オリンピック選手と小学生の徒競走くらいの体感差だと思います。しかし、比較する文明がまだ存在していなかったので、それが当たり前でした。
■最大容量1.44MBの記録媒体当時の私が関わったパソコン環境での外部記録媒体は、公私ともに容量最大1.44MB(2HD)の3.5インチフロッピーディスクのみ。現在のスマホで撮影した写真が1枚あたり3MBくらいなので、桁外れの小容量です。
データ量によっては1枚のディスクに収まりきらず「○○のバックアップNo.1」のようにナンバリングして分割保存するため、途中でフロッピーディスクが足りなくなるという苦い経験から、大量のストックをしていた人も多いのでは。
後に登場した大容量記録媒体によってお役御免となった膨大な量のフロッピーディスクの廃棄処分経験があるとすれば、記録媒体の過渡期を生きた証ではないでしょうか。とはいえ、今の記録媒体も将来どうなっているか分かりません。クラウドへのバックアップも、また時代が変われば別の方法に変わるのかも。
■ブルーバック改良が重ねられた現在のコンピューターでは、操作中にいきなり画面がフリーズして、そのまま復旧せずに全ての作業が水の泡なんて惨事は少なくなりましたが、歴代のWindows95、98、Meくらいまでは、プライベートだけでなく職場でも、これが現れたら高確率でどうにもならない真っ青な画面、通称「ブルーバック」を前に文字通り青ざめたものです。
サポートセンターに泣きついても解決することはほとんどなく、パソコンとはそういうものと「悟り」が必要な時代でした。繋いだ周辺機器も、パソコンとの「相性」が悪いと認識されない、といった状態でしたね。
……と、知らない世代の方には過ぎた時代のことなので興味がないかもしれませんが、実はこういったコンピューターとの生活は、昭和の漫画や小説で既に見ていた未来でもありました。そのため実際に体験した時に、初体験であるにも関わらず懐かしいような気持ちになるという特殊な感覚、いわゆる「レトロフューチャー(懐かしい未来)」とも表現すべき人類初の経験でした。
次は、インターネット過渡期の混乱を知らない世代の方々とも一緒に迎える、AIや自動運転がレトロフューチャーだと思います。まさか映画「ターミネーター」のように、人間を敵とみなしたAIから攻撃を受け、崩れたビルの瓦礫の下に身を潜めながら「初めてなのに懐かしい」なんて思っていませんように……。
※「PostPet Kids」の画像は、実際のソフトからのスクリーンショットです。
※初出時、アナログモデムの速度を「54Kbps」と誤記していました。54Kbpsは、電力会社(50Hz地域)の基幹系PCMリレーで使われていた通信速度(1フレーム長90ビット×12フレーム)です。
(佐伯プリス)
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