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新型コロナウイルスって結局ナニモノ? 怖がる前に敵を知ろう

おたくま経済新聞 / 2020年1月27日 16時31分

新型コロナウイルスって結局ナニモノ? 怖がる前に敵を知ろう

コロナウイルス・国立感染症研究所より

 中国で発生した新型コロナウイルスによる騒ぎ。丁度中国の旧正月にあたる時期に発生したため、感染者が感染に気付かないまま、あるいは発症していたかもしれない状態で長期休みの旅行を楽しもうと国外に出たために、日本でも発症者が出ています。この新型コロナウイルスについて、詳しく解説してみます。

■ 動物から感染するとメンドウなやつになるコロナウイルス

 ウイルスと一口で言っても、その数は膨大です。細菌よりも小さいウイルスには抗生物質は効果がありません。そのため、ウイルスに感染した場合は隔離してウイルスが暴れるのを落ち着くまで対症療法をするしかないのが現状です。

 さて、コロナウイルスを含むウイルスは非常に多くの種類がありますが、人間に感染するコロナウイルスとしては、最初にヒト→ヒト感染として発見された4種類、動物→ヒト感染で重症化する2種類の計6種類がこれまでに確認されています。

 風邪の10~15%(流行期35%)はヒト→ヒト感染の4種のコロナウイルスが原因の一つとなりますが、それ以外のウイルスでも風邪症状を起こすので、コロナウイルスだけが風邪ウイルスではないのです。もう何十年も前から「風邪に効くワクチンが開発されたらノーベル賞もの」と言われているのも、多種のウイルスが風邪症状の原因となるから。この4種は感染しても普通の風邪症状で終わることが多いため、特に鑑別せずに対症療法のみとなります。

 そして過去に、SARS(サーズ・重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)や、MERS(マーズ・中東呼吸器症候群コロナウイルス)が、動物→ヒト感染で重症肺炎となる2種類として確認され、大きな問題となったのは記憶に新しいところです。この2種は基礎疾患がある人や免疫力が低下している人に対して高確率で重症肺炎を引き起こすものとして、感染症法において二類感染症に分類、感染者は感染症指定医療機関への入院措置となり、結核患者並みの病棟で感染拡大防止と治療が行われます。

 今回中国で発生した新型コロナウイルス感染症も、SARSやMEASと同じく動物からヒトへ感染となっているところは各報道の通り。今回の新型コロナウイル感染症も、1月28日時点で「指定感染症」に指定する方針との報道。SARSやMEASと同じ扱いとなります。

■ ところでコロナウイルスってどんなヤツなの?

 生活環境の中には、特に病原体とならないウイルスも存在していますが、コロナウイルスはじめインフルエンザウイルスや人に害を与えるウイルスのほとんどが厄介な構造になっています。

 ウイルスの核を覆っている表面には「エンベロープ」というバリアみたいなもので覆われており、ウイルスによってエンベロープを構成しているたんぱく質が違っています。このエンベロープは脂質でできた頑丈な二重構造。そして核の中に含まれているRNAとエンベロープの外側ににょきにょきしているトゲトゲのたんぱく質の種類によって、コロナウイルスの中でも細かく種類が分かれてきます。

 SARSもMEASも動物からヒトへの感染が原因であり、今回の新型コロナウイルス感染症も同様に動物からの感染との見方が高いですが、こうした事は感染源となっている動物に濃厚接触した人間がウイルスを体内に取り込んでしまった、いわゆる「人獣共通感染症(ズーノーシス)」によるエンベロープ変異が原因と見られております。動物のコロナウイルスの種特異性は高く、種の壁を越えて他の動物に感染することは殆どないと言われていますが、過去にも起きている通り、野生動物に対する濃厚接触は非常に危険です。

 ちなみに、このトゲトゲしたにょきにょき出ているたんぱく質の形態が王冠“crown”に似ていることからギリシャ語で王冠を意味する“corona”という名前の名前の語源なのだとか。

■ 新型コロナウイルス、かかるの怖いんですけど

 コロナウイルスのエンベロープは頑丈だしウイルス自体は直径約100nm(ナノミリメートル)ととんでもない細かさなので、患者のくしゃみや咳などからの唾液の飛沫、会話時に飛んできた唾液の飛沫にうっかり接触してしまうと、潜伏期を経て発症します。患者から2mくらい距離があいていれば飛沫による感染はまず起きないとみられているので、結局は人ごみに出ない、空港や混雑している公共交通機関を避ける、という自衛策が最良となるのです。

 その辺で売られているマスクには、100nmが余裕で通り抜けてしまうので、患者(予備軍)が飛沫を飛ばさないために使用するのと、満員電車内や密着してしまうくらいの人ごみの中へどうしても出ないといけない場合に、感染者から出る飛沫を直接吸い込むなどしないようにするためには有効です。なお、使用後のマスクは再利用せず、都度新しいものと交換し、使用後のマスクの外側に触れないように処分、手洗い後に新しいマスクを装着するのがベターです。

 これまでの各報道では、潜伏期間を長く見積もって2週間としている様子。そしてインフルエンザのように突然激しい症状が出ない、数週間くらいは普通の風邪症状が続く、そしてインフルエンザの検査ができるような迅速検査キットもワクチンも開発されていない状態。空港などでの水際検査ではスルーされる事も考えられます。

 まだ詳しく調べている段階である新型コロナウイルス感染症、発症者の多くは基礎疾患に呼吸器疾患や免疫不全などがある、高齢者で免疫力が低下している人などが発症しやすいと言われています。

 今のところ一般市民ができる予防策としては、次の2点などがあります。

・人が密集しているところにはなるだけ行かない。
・帰宅したら必ずまず丁寧な手洗いを。うがいは最初にぶくぶくうがい、2回目以降はガラガラうがいを正しく行えば水道水で充分効果があります。

 基本は普通の風邪やインフルエンザ対策と大差ないです。報道に不安を煽られるかもしれませんが、テレビに向かってヤジを飛ばすよりも、冷静に動向を確認し、収束するまで落ち着いて動向を見守りましょう。

<引用・参考文献>
国立感染症研究所 コロナウイルスとは
首相官邸 新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~
他多数

(梓川みいな/正看護師)

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