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MRIの吸着事故写真に騒然 医療関係者「うわぁぁぁぁぁ」

おたくま経済新聞 / 2020年2月3日 15時0分

MRIの吸着事故写真に騒然 医療関係者「うわぁぁぁぁぁ」

nyanko_toratarouさん(@nyanko_torataro)

 大きな病院などで受けられる検査の中に、MRIというものがあります。強い磁力の力で血管の細部まで見ることができる優れものですが、その分扱いも慎重にしないと大変なことに。その実際の状態がツイッターに投稿されて、あまりのことに見た人を震撼させています。

■ あっちゃならないけどヒューマンエラーは起こるもの

「私は技師になって #MRI #吸着事故 を2件経験しました

そのうちの2件分の写真があるので参考に見て下さい
こんな事になるので検査の際に金属の持ち込みは絶対しないで下さいね~( ̄▽ ̄*)ゞ

どちらも人海戦術で無理やり引き離しましたが……
それが叶わない時は1週間復旧にかかりますよ~」

 というツイートともに、2つの写真を投稿しているのは、診療放射線技師31年のnyanko_toratarouさん。医療関係者ならこの状態に思わず「うわぁぁぁぁぁ」と声を上げてしまう事態な2件の事故。一つはMRI室専用の車いすではなく、その辺で使われている車いすが見事に貼り付いています。折りたたまれた状態で、ぴったりと。

 もう一つの写真には、よく入院中の人が点滴をしながら移動するときに使う、点滴棒。こちらは、上下逆さま状態に足の部分がMRIの入り口にくっついてしまっています。

 この写真にMRIのことをよく知っている人たちからは惨状について色々な意見が。よくありがちなのは、看護師がポケットに入れているハサミが飛んで行った、MRIの点検業者さんがうっかり金属のドライバーを持ち込んで剥がすのに難儀した、など、ポケットの中味がすっ飛んでいくケース、ペースメーカー埋め込みされている人にMRIのオーダーが出たことがあり、妙な違和感とともにカルテを見たら「MRI禁」だったなどなど……。

 そして、頭髪の薄毛隠し用の粉末を「地毛です」と言い張った患者さんの頭から粉末がMRIへ吸い寄せられ、敢え無く故障……という話も。薄毛隠し用粉末には金属を使っているものと使われていないものがあるので、基本的には一律使用しない状態で検査を受けてもらうことになっている病院が多くあります。

 意外と盲点なのが、入れ歯。部分入れ歯など金属を使っていたり、総入れ歯でも強度を上げる意味合いで金属の骨格を中に入れて作られていることが多いため、病棟ではMRIチェックリストを作って患者さんに金属が付いていないか、カルテに過去の手術などで埋め込まれた金属などで「MRI禁」になっていないかなどをチェックしてから検査出ししていますが、外来から検査にやってくる人だと、うっかりヘアピンなど金属系の飾りなどを付けてきたりします。その前に検査技師さんが外すように説明しますが……。

 そしてご老体にありがちで忘れがちな存在である「湿布」。これも場合によってやけどの原因にもなり得ますので、全身何も貼ってない状態にしておいてくださいね。もちろん、エ○キバンなどの某磁石シールなんてもってのほかです。

■ 人力で丸1日、完全に電源を落とすと復旧に1週間かかるMRI

 さて、この写真の2つですが、それぞれ人力で剥がしたそうです。先に起こったのが点滴棒吸着事件。MRIはその磁気の強さ(磁束密度)を発する強さによって使い分ける病院もあり、現在の主流は1.5テスラ(T)と3Tの2種が主流。

 nyanko_toratarouさんが勤務する病院でもそれぞれ計2台が稼働しています。ちなみにエ○キバンなどの某磁石シールに使われているものは、一番強力なもので0.2T未満、小さくても磁力が強いと評判なネオジム磁石でも1Tをちょっと超える程度。おそらく日常使い用以上に大きな1Tの磁石があったら、強すぎて誰でも手軽に使えないことでしょう。それだけ、MRIの磁力は強力なのです。

 点滴棒の方は1.5Tの強さのMRIで15人がかりで引きはがしたのだそう。ただ、普通に人力で引っ張っても無理なので、業者さんに協力に入ってもらい、剥がしたのだそうです。ちなみに、事件は患者さんが持っていた点滴棒がMRI用のものと担当技師さんが勘違いして起こったもの。

 車いすの吸着事件の方では、倍の威力を持つ3TのMRIを稼働中に起こった事故。さすがにここまで強力な磁力だと、業者さんに協力してもらいながら引きはがす作業となるそうで、総勢30人、業者さんに対応してもらった金額とMRIの故障部分の修理代を合わせて、実に900万円以上が吹っ飛んでいったそうです……。ちょっと、いや、かなりいい車が買える金額。

 どちらの場合も、業者さんに見てもらいつつ剥がしている間に損傷箇所を確認、「業者到着までの時間と引き剥がしてから機械の調整があるので、大方1日は使用出来ませんでした」とnyanko_toratarouさん。

 ちなみに、MRIは簡単に電源を落とすことができません。一度完全に電源を落としてしまうと、機械を冷却している液体ヘリウムガスを一度完全に抜く「クエンチング」という作業を経て、ヘリウムを再度充填させてからの電源投入、調整が必要になるので、電源を落とさずに見積もった額である約900万円越えの3~5倍の費用が発生するのだそう……。そしてツイートにもあったように、この全部の手順が完了し、再度使えるようになるまでには約1週間程度かかることが多いわけです。

 かくして何とか30人がかりでクエンチングを行うことなく、磁場調整だけ(約900万円越え)で車いすを剥がし終えることができたわけですが、何故こんなことになったかというと、足が不自由な患者さんの検査終了後に、MRI専用の車いすでなく、病棟から持ってきたものをうっかり患者さんの元へ持って行ってしまったのが原因だとか。

 こうしたうっかりミスは、案外あるものです。酸素を吸う必要がある患者さんにはMRIの前室にボンベを置き、酸素用のチューブの長いのを持参して検査してもらうのですが、うっかりMRIの機械の部屋にボンベを持って踏み入れたら、瞬間でMRIに激突していきます。車いすの場合も、やはり一瞬の出来事だったとのこと。

私は技師になって #MRI #吸着事故 を2件経験しました

そのうちの2件分の写真があるので参考に見て下さい
こんな事になるので検査の際に金属の持ち込みは絶対しないで下さいね~( ̄▽ ̄*)ゞ

どちらも人海戦術で無理やり引き離しましたが・・・💦
それが叶わない時は1週間復旧にかかりますよ~😱💦 pic.twitter.com/LwpEvcMyLf

— nyanko_toratarou (@nyanko_torataro) January 30, 2020

■ あっちゃならない事故再発の防止に向けて

 薄毛隠し用の粉末をつけている場合、細かい金属の粉が機械の内部に入り込んでしまうためにMRIが完全に使えなくなる恐れもあります。設置費用を含めると数十億単位のものもある医療機器を、「自分の薄毛を隠さずにちゃんと説明通りにしておけば……」と悔やんでも、機械も薄毛も戻りません。患者さん側にお願いしたいことは、事前に説明を受けた時に渡される説明用紙をよく読み、自分が金属を付けていないか、体内に金属が入っていないかをよく確認して欲しい、ということです。

 タトゥー・入れ墨に関してはそれぞれの病院で説明が違う場合があります。体に直接彫る場合は、金属成分が含まれる顔料を皮膚の中へ埋め込んでいくような形になるので、背中に大きな絵が描かれている人だと、そのままMRIを受けた場合、塗料を濃くしてあるところが金属と反応してやけどになる場合も無きにしも非ずです。眉毛のアートメイクに関しても病院によって説明が違うことがありますので、当てはまる人は医師や検査技師に聞いてみてください。

 病院側でもうっかりによるミスを防止するために、事故防止委員会を開くなどしてマニュアルの作成や、再発防止対策を行っています。nyanko_toratarouさんのところでは、事故後の会議で、「点滴スタンドについては認識しやすいようにMRIに持って入れる点滴スタンドは黒と黄色のテープでゼブラ柄にして分かりやすく細工を、3TのMRIでは、銀行のATMで見かける列を整理するテープを張るポールで入り口を封鎖するように設置(入室時技師がテープを外して誘導する)しました」と、それぞれに対する事故防止策を行っています。

 こうした事故防止は各病院でも行っており、筆者が病棟勤務時代には病棟勉強会で、このようなMRIの事故とクエンチングにどれだけの費用が掛かるか、などのビデオ講習を受けました。酸素ボンベが野球のピッチャーが投げたボール並みの速さでMRIに飛んでいく様子には、思わず背中がぞわっとしたものです。もう20年くらい前になりますが……。

 筆者は看護師としてMRIへの検査に患者さんを送り迎えしたことも、脳ドックで自分が受けたこともありますが、患者さんの介助で入った時は、顔なじみの技師さんから「ポケットの中味も名札も全部置いて行け~」と。当時はポケットの中味がぐちゃぐちゃにならないように整理用のインナーポケットの中に全部入れていたのでハサミもペンもインナーポケットごと置いて、名札を外すだけでOKでしたが、患者として検査を受けた時は、検査着に着替えました。ブラのホックもGパンの金属ボタンもNGなので……。

 血縁者に脳血管疾患や心疾患がある人は、遺伝により同じような疾患を起こす可能性が他の人より高くなります。いつMRIのお世話になるか分かりません。患者さん側はこうしたことも踏まえて、皮膚や下着類に金属が入っていないか、体内に金属が入るような手術は受けていないかなどを医療関係者に伝わりやすくしておくと、救急搬送されて情報が少ないときでも診察や検査がスムーズになる場合があります。

 そして、病院に勤めていて、MRIの検査にかかわることが少しでもある人は、検査出し用のマニュアルの再読や、患者さんに金属の有無がないかを改めて確認する癖を付け、MRI非対応のストレッチャーに患者さんを乗せたままMRI室に突っ込んでいかないよう、充分に注意してくださいね。

<記事化協力>
nyanko_toratarouさん(@nyanko_torataro)

(梓川みいな/正看護師)

【お詫びと訂正】
本文中、一部事実と異なる表現がございましたのでお詫びして訂正いたします。
2月3日 18:20
2月4日 10:50

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