アイデア色々!雪国のバラエティ豊かな信号機
おたくま経済新聞 / 2020年2月19日 16時0分
雪国名物の縦型信号機
今年は暖冬で少なめとはいえ、降る時にはそれなりに積もってしまう雪。道路の雪かきも大変ですが、その上にある信号機にも雪は積もります。手の届く高さではないので、いかに積雪の影響を少なくするか、様々な工夫をした雪国の信号機をご紹介しましょう。
雪国の車両用信号機は、雪の重みを減らすために縦型……という話はある程度有名なお話だと思います。しかしこれにも意外な弱点があるのです。なんと、太陽光の射し込みを防ぐフードに雪が積もって、その真上の灯火を隠してしまうのです。
縦型の信号機の場合、上から赤・黄・青の順で並んでいますが、真ん中にある黄色の庇に雪が厚く積もると、一番重要な赤の灯火が隠れてしまうのです。かといって、フードがないと太陽光が射し込んで、雪のない日に灯火が見づらくなる……悩ましい問題ですね。フードが長いタイプだと雪が積もる面積が増え、特に起きやすくなります。
その問題に対し、対策している地域もあります。一番上の赤灯以外のフードを短くするという手法です。
特に北海道に多い信号機で、これによりフードの上に積もる雪を減らして、真上の灯火を見やすくする狙いがあります。赤だけそのままの長さなのは、フードそのものの目的である日除けのためでしょう。一定効果は見込めたようで、主に北海道では平成初期から新設する信号機がLEDへ切り替わるまで、この仕様が標準でした。
この手法は新潟県の一部信号機でも採用。電球式で採用していた北海道とは違い、特にLEDの信号機に多く見られるのが面白いところです。
以前、LED信号機の灯火部分を透明カバーで覆った「カプセル型」の信号機をご紹介しましたが、こちらも進化を続けています。そもそもカプセル型とは、LED信号機が普及してから誕生したもの。発光時に熱を発する電球式信号機とは違い、LEDは発光面が熱くならないので、着雪すると溶けずに固まり、視認性が著しく低下する弱点がありました。
そのため北海道ではLEDの信号機の導入が非常に遅れ、現在でもLED化の進捗率がワースト1といった事態になっています。LEDゆえの弱点を克服するため、黒いフードの外側に透明アクリルのカバーを被せて着雪を防ぐ、カプセル型のフードが開発されました。
灯火面の空気の滞留を無くすことで、雪が付着する前に風で飛ばされる、といった仕組みです。黒い部分は日光の熱を集めて雪を溶かす効果があります。主に吹雪いた時に効果を発揮していたようです。
しかしカプセル型のフードは、灯火面の着雪は防げるものの、フードの上に雪が多く積もると直上の灯火が覆われてしまう弱点がありました。
試験設置はしたものの、この弱点がネックとなり、採用に難色を示した地域もあります。そこで新型のカプセルフードが開発されました。
当初はタマネギみたいな形をしていましたが、上の先端をクチバシみたいな形に伸ばし、灯火が覆われてしまう弱点を克服したのです。秋田県で試験設置されて以降、このタイプのカプセル型のフードを採用する地域が増えました。
しかし横設置だと、信号機の上に雪が積もってしまうという課題があるので、まだ完全に克服されたとはいえない状況。ちなみに縦型設置が標準の地域でも、信号機の上下に障害物があり、設置するスペースが足りない場合は横型で設置するケースがあります。
LEDの信号機には、フードがなく灯具が薄型のパネル状になったフラット型もあります。灯具を斜め下に向けて設置すると、傾斜が付いているため着雪にかなり強く、フラット型を指定していた地域もあったようです。雪にかなり強いイメージがあり、近年は縦設置から横設置に切り替えている地域も増えてきました。
このフラット型にも弱点があります。たしかに、傾斜で下を向いている灯火のある面には雪は付きません。しかし、上を向く形になっている裏面に雪が積もってしまい、雪が積もった灯具の重みで破損するリスクがあるのです。あちらを立てればこちらが立たぬ……といった感じですね。
縦型よりも横型の方が積もる面積も増えてしまい、信号機を付けている柱などに負担がかかってしまうので、フラット型も縦設置のままにしている地域もあります。
山形県は雪深い地域としてお馴染みですが、そこには独自の雪対策をした信号機が設置されています。パッと見た目は従来のフラット型LED信号機のように見えますが、赤灯の発光面にフィルム状のヒーターを付け、着雪対策をしているのです。車のリアガラスにあるデフロスターのような発想ですね。
ヒーターの分、電気代が通常のLED式よりも増えてしまうため、導入を渋る地域が多いなか山形は導入に踏み切ったようです。電気代が増えるといっても、旧来の白熱電球よりは安いようですけどね。
雪国の信号事情は、地域ごとに雪質も大きく違うために複雑ですが、そのぶんユニークなアイデアに富んだ信号機を発見できるので、信号マニアの筆者にとっては興味深い対象。まだまだLED信号機の雪対策は試行錯誤が続いているようなので、これからどんなスタイルの灯具が現れるか、今後とも観察を続けていきたい次第であります。
(ぜろえもん)
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