全身麻酔の後の不思議感覚 体験談マンガに手術経験者「その感覚分かる!!」
おたくま経済新聞 / 2020年4月7日 15時21分
画像提供:Sayaさん(@EndowSaya)
病気や大ケガなどやむを得ず手術となるシーンは、人間生きているうちに何度もあったり全くなかったり。できれば避けたい全身麻酔の手術の後に体験する、形容しがたいような不思議な感覚をツイッターに漫画で投稿した内容に、まさにこの感覚!と多くの人が共感しています。
「ずっと前に全身麻酔した時の不思議体験。こんな感覚の方多いんじゃないかなと」と、その体験を1ページ漫画にしてツイッターに投稿した、ネットユーザーのさやさん。その体験とは……。
「では今から麻酔入れていきますね~。だんだん眠くなってきま~す」と説明を受けながら麻酔薬を投入されるさやさん。普段寝つきが悪いのでどんな感じで麻酔が効いてくるのか楽しみにしていました。が!
次の瞬間、トントンと手術室の看護師に肩を叩かれ、「さやさん、さやさん、終わりましたよ~」終わりました……!?!?!?状況が全く飲み込めない数秒のうちにさやさんの脳裏に浮かんだのは
「えっ?今から始めるんでしょ?今麻酔入れるって言ったよね?全然寝てないよ私ぜんっぜん眠くならなかったし終わりましたって何が?ジョーク?ツッコミ待ちなの?まだやってないやないかーいみたいな?あっでも何だろう喉がすごい痛い声が出せない言いたいことがいっぱいあるのにツッコめないえっ何?何?いつの間に私こんな」
などとパニックな脳裏だったにも関わらず、次の瞬間には麻酔が完全に切れていなかったのか、再度スヤァと入眠……。
普通に眠る、というと、眠気が来てじわじわと意識が遠のくという感じですが、麻酔によって「眠る」状態は、薬が直接脳の意識をつかさどる部分に作用して、スコンと深い無意識の状態にまで落とします。人によっては体も声も完全に弛緩しているのにうっすら意識が残る人もいたり、手術途中で麻酔がさめてくる場合もありますが、ちゃんと麻酔が効いた時は大体このような感じで、まるで自分だけ時間を止められたような感覚に陥る人も多い様子。
この漫画を見た人達からは「まさにこんな感じだった!」という声が多数寄せられています。麻酔科医からも「若い人にこのような状態となることが多いようですね」とお墨付きが。中には「私の場合は執刀医が『あっ美味しい和菓子屋見つけたよ』と他の人に言うの聞いて”えっ!どこ?”からの爆睡。今でもどこか知りたい」なんてのんきな雑談を聞き逃してしまい、今でも気になっている人も……。
ずっと前に全身麻酔した時の不思議体験
こんな感覚の方多いんじゃないかなと pic.twitter.com/VjhMqtJlY6
— Saya/ (@EndowSaya) April 4, 2020
9割方麻酔がかかっていても、人間の五感のうち聴覚が最後に落ちるので、意外とこういう事もあったりします。もちろん執刀中、集中するところではキチンと集中して手術をしていますが……完全に麻酔がかかって気管内挿管から人工呼吸器をセッティングしたり、ひと山越えて後は片付けるだけ、な状態の時などは割と雑談もあったりします。
慣れた外科医とチームの看護師たちとかだと、内臓の手術をしながら焼肉行きたいねー、などと話す事もあったり……。緊張し通しだと逆にミスを誘発する危険があるので、緊張と緩和のメリハリが必要だとはいいますが、慣れって怖い。
脱線してしまいました。筆者は混合病棟で整形外科や脳外科など、術前術後の管理を割と経験していましたが、同じくらい「こんな慣れは普通じゃないよな」と思う事は病棟勤務時代にしばしばでした……。
さやさんが受けた手術は、ケガに関係した形成外科的な手術だったそう。形成外科は美容整形とは違い、体の一部が生活するのに不便を強いられる状態になってしまっている時などに、健康な体の状態や見た目に近づけるべく整え、生活しやすくするのがお仕事。昔の手術の跡や、やけど跡のケロイドががひきつれて痛い状態や、骨折などによりゆがみが生じた状態を元に近い状態に治す、先天性の疾患である口唇口蓋裂や四肢の異常に対して、機能や形状を健康に近づける形成外科の仕事は、乳児から大人まで幅広い世代の患者さんの生活の質(QOL)を良くするためのものです。
さやさんに術前と術後についての感想を伺うと「全身麻酔は初めてでしたので、受ける前と後の変化というよりは全て新鮮に感じました。そして手術自体は麻酔と携わってくださるスタッフの皆さんのお陰で一瞬で済みましたが、術後の痛みが凄かったのが意外でした」との事。
体の一部を切り、形を整える訳ですから、麻酔が切れるにつれて麻酔薬で遮断されていた痛覚も戻ってきます。感覚が鋭い人であれば、かなりの痛みになる事もしばしば。そんな時は強力な痛み止めの作用がある坐薬や注射薬があるので、もし手術を受ける事があった時には遠慮なく、痛みが強い時に申し出てくださいね(なお、痛みが強くても血圧が低いと強力な鎮痛剤を使えない場合もあります)。
麻酔からの覚醒途中に謎の映像が脳裏をにぎわせたり、パニックになりすぎて酷い妄想や恐怖、記憶の混乱を感じる場合もあるかもしれませんが、そんな場合が起こっても大丈夫なように、看護師はかなりこまめに熱や血圧、呼吸状態や意識の変化などを観察していますので、その辺は安心してくださいね。
<記事化協力>
Sayaさん(@EndowSaya)
(梓川みいな/正看護師)
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