アメリカ空軍 アフガニスタンのCOVID-19患者を移動隔離システムでドイツへ
おたくま経済新聞 / 2020年4月14日 9時38分
ドイツのラムシュタイン空軍基地に到着した新型コロナウイルス患者と救急救命航空輸送チーム(Image:USAF)
アメリカ空軍は2020年4月11日(現地時間)、アフガニスタンの新型コロナウイルス感染症患者を3名、4月10日に医療設備の整ったドイツへ移送したと発表しました。移送には感染を防止するための移動隔離システム(TIS)が2014年以来初めて使用されています。
新型コロナウイルスは世界規模で感染が拡大しています。長く続く戦乱で医療設備が破壊されたアフガニスタンでも患者が発生し、人工呼吸器が絶対的に不足しているため、重症化した場合は手の打ちようがありません。
このアフガニスタンで、アメリカ政府の業務請負業者が新型コロナウイルスに感染しました。医療設備の整ったドイツにあるアメリカ軍の医療施設で治療を行うべく、アメリカ空軍が移送を担当することになったのです。
アメリカ空軍には、他者への感染や機内の汚染を防ぎつつ、伝染性感染症の患者を安全に移送する「移動隔離システム(Transport Isolation System)」、略してTISと呼ばれる装備があります。軽量なアルミ合金製のフレームと防水性の高いビニールでできたTISは、2014年に西アフリカで発生したエボラウイルス感染症の人道支援に使用するために開発されました。
航空輸送用の「463L」というパレット規格に適合するように設計されたTISは、C-130輸送機やC-17輸送機で空輸することが可能。システムには空気を浄化するHEPAフィルターが備えられており、空気感染する病原体も外部に漏れないような作りとなっています。
このTISを運用するのは、専門の訓練を受けた救急救命航空輸送チーム(CCATT)の兵士。医官や看護師、呼吸療法士などで構成された、高度救急救命の専門家です。CCATTではTISのほか、個人用の隔離ポッドを使用した患者搬送の訓練を重ねています。
今回、アフガニスタンから新型コロナウイルス感染症の重症患者をドイツへ移送する「REACH 725」と呼ばれる任務は、4月8日に始まりました。24時間以内に患者を収容するTIS2セットの移送準備を整え、アフガニスタンへ向かいます。
命令を受けたのは、イリノイ州スコット空軍基地にある第618航空作戦センター(618th AOC)。アメリカ空軍ではこのような事態を想定して、3月下旬からラムシュタイン空軍基地の第86輸送航空団とサウスカロライナ州のチャールストン統合基地において、TISを派遣する即応体制を敷いていました。
第618航空作戦センター司令官のジミー・キャンラス准将は、派遣されるクルーに対し、電話会議システムを使って最新のCOVID-19患者移送プランに沿った情報を提供。キャンラス准将は「この計画が発令されて数時間のうちに、REACH 725のクルーは、3名のCOVID-19患者をアフガニスタンから4000マイル離れたラントシュトゥール地域医療センターへ安全に移送するプロセスを検証しました」と語っています。
アフガニスタンで患者を収容したC-17は、4月10日夜にドイツのラムシュタイン空軍基地に到着。無事3名の患者をドイツ西部のカイザースラウテルン近郊にある、アメリカ軍ラントシュトゥール地域医療センターへと搬送しました。
アメリカ空軍の空中給油機・輸送機部隊を統括する航空機動軍団(AMC)司令官、マリアンヌ・ミラー大将は「この歴史的な任務を完遂した部下たちを誇りに思います。今回のREACH 725は、航空機動軍団の優れた即応性を示すものであり、この世界的なCOVID-19の流行に関係する支援要請に、迅速に対応できることを証明するものとなりました。人々の希望を実現したい、という志は空軍兵士たちの血に深く息づいており、困っている人々のために尽力する部下の姿に、私は深い畏敬の念を抱いています」とコメントし、今回の任務に携わった人々を称賛しています。
航空自衛隊にも「機動衛生ユニット(AMES)」というコンテナ式の“空飛ぶICU”があり、急患搬送に利用されています。軍用輸送機ならではの汎用性と機動力は、このような任務でも持ち味をフルに発揮しています。
<出典・引用>
アメリカ空軍 ニュースリリース
Image:USAF
(咲村珠樹)
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