空母セオドア・ルーズベルト 新型コロナウイルス禍から任務に復帰
おたくま経済新聞 / 2020年6月6日 15時0分
「Don’t Give Up The Ship」の旗を掲げる空母セオドア・ルーズベルト(Image:U.S.Navy)
艦内で新型コロナウイルスの感染が拡大し、グアム島で予期せぬ足止めを強いられたアメリカ海軍の空母セオドア・ルーズベルト。現地時間の2020年6月4日にグアムを出航し、インド太平洋地域における通常任務に復帰したとアメリカ海軍が発表しました。
2020年1月17日にカリフォルニア州サンディエゴを発ち、インド太平洋地域での任務の途中にグアムに立ち寄った後、乗組員の新型コロナウイルス感染が明らかになった空母セオドア・ルーズベルト(CVN-71)。一種の閉鎖環境である艦内で感染が拡大し、急遽グアムに引き返して感染者を病院に収容するとともに、感染が確認されなかった残りの乗組員も隔離されました。
入院した乗組員の代わりとなる人員の異動が発令され、同時に艦内では徹底的な洗浄・消毒が実施されました。隔離期間が終了した乗組員も復帰し、船を動かす訓練を経て、航空機を受け入れての運用試験をグアム近海で実施したセオドア・ルーズベルトは、最終的に任務への復帰が認められました。
いよいよ任務に復帰する、ということになり、セオドア・ルーズベルトのマストには「Don’t Give Up The Ship(船を諦めるな)」の旗が掲げられました。これは米英戦争中の1813年6月1日、ボストン港沖でアメリカ海軍のフリゲート「チェサピーク」がイギリス海軍のフリゲート「シャノン」に捕獲された際、瀕死の重傷を負ったチェサピーク艦長のジェイムズ・ローレンスが乗組員を鼓舞した有名な言葉です。
このローレンス艦長の言葉は、戦友のオリバー・ハザード・ペリー(黒船で日本に来航したマシュー・ペリーの兄)が1813年9月の「エリー湖の戦い」で、アメリカ艦隊旗艦のローレンス(戦死したローレンス艦長にちなんで命名)に旗として掲げ、友の魂と一緒に戦い勝利した、というエピソードで伝説的なものとなりました。空母セオドア・ルーズベルトが任務復帰のため、グアムを出航した6月4日がローレンス艦長の命日だというのもまた、意識されたものなのかもしれません。
セオドア・ルーズベルト艦長のカルロス・サルディエッロ大佐は「インド太平洋での任務に復帰することは、我々にとって大きな節目となります。この日を迎えるまでの使命は、船を元の状態に戻し、そして乗組員たちを復帰させることでした。そして今、我々は乗組員の健康を維持し、安全で、戦闘への備えが万全な状態にあります」と語っています。
新型コロナウイルスの感染拡大を経験し、セオドア・ルーズベルトでは再度の感染を防ぐため、万全の対策が講じられています。任務中、乗組員はマスクを着用し、ソーシャルディスタンシング(適切な対人間隔の確保)の原則に基づいて、適切な間隔を確保しています。
サルディエッロ艦長は「セオドア・ルーズベルトが海での任務に復帰することは、希望とインスピレーション、そして国力の象徴です。そして新型コロナウイルス感染症から回復した乗組員たちは、ウイルスに対する勝利の象徴ともなります。彼らは陸に残り、最高の医療体制のもと、治療を続けています。これを支えているグアム海軍基地、グアム海軍病院、そしてカリフォルニア州キャンプ・ペンドルトンの医療施設の皆さんに感謝しています」ともコメントしています。
グアムを後にした空母セオドア・ルーズベルトとその空母打撃部隊(CSG-9)は、今後インド太平洋地域の平和と安定を維持するための哨戒活動に入ります。
<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)
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