アメリカ空軍 上限7700億円で無人機MQ-9調達5年契約を締結
おたくま経済新聞 / 2020年9月19日 9時0分
![アメリカ空軍 上限7700億円で無人機MQ-9調達5年契約を締結](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/otakuma/otakuma_20200919_04_0-small.jpg)
ネバダ州を飛行するMQ-9(Image:USAF)
アメリカ空軍は、MQ-9リーパー無人機を素早く部隊へ供給する目的で、メーカーのGA-ASIと「機動的調達法(ARES)」という特殊な形の契約を2020年9月17日付で締結したと発表しました。これは5年の契約期間中、上限74億ドル(約7755億5000万円)という予算総額のもと、最大年36機ペースでの調達を行う有期不定予算/不定数量契約です。
今回GA-ASIと締結した「ARES(Agile Reaper Enterprise Solution)」と呼ばれる機動的調達法は、空軍ライフサイクル管理センターのMQ-9計画事務局が作り上げた、今までにない調達の仕組み。運用部隊の現場に素早く必要な数量を配備するため、調達コストを平均化しつつ、柔軟性の高い機動的な発注・調達システムとして考案されました。
防衛装備品は基本的に「お店に売っているものを買う」訳にいかないので、契約ごとに数量と予算を設定し、生産してもらう形になります。そうすると、契約のたびに生産コストが変化するため、毎回装備品の単価が上下するだけでなく、実際に引き渡されるまでの時間もまちまちに……。これではメーカー側も発注側も、無駄が多くなりがちになるので、期間と予算の上限を設定し、ある程度の数量幅を許容した契約にしよう……というのがARESの目的です。
空軍はすでに、33億ドルという価格-数量曲線を持つ調達について、メーカーのGA-ASIと合意しています。この曲線に基づき、空軍は他国への有償軍事供与(FMS)分を含め、年間4~36機のMQ-9を調達できるというもの。この調達方法により、運用部隊へ機材が配備されるまでの時間が、約35%短縮できると試算されています。
この契約には、事前に価格設定済みの移動式地上管制局、地上データターミナル、そしてスペアとサポート機器が含まれます。契約内容がパッケージ化されているので、調達時の契約は1回で完了し、個別契約するのと比較して、各契約内容を詰めていく作業で時間を取られることがありません。
ARESの開発・策定に尽力した、中高度無人機(MAUAS)計画事務局の航空機製造マネージャ、アリシア・モラレス氏は「ARESができる前、通常の調達契約では締結するまで、380日ほど必要でした。今は予算が1度承認され、私たちが契約に関するアカウントさえあれば、2、3日で契約が締結でき、航空機が現場に配備されるのに26か月しかかりません」と、ARESによる契約締結から調達までの迅速さを強調しています。
MQ-9の生産・配備部門で資材担当リーダーであるニック・ジョーダン中佐は「今回の件は、計画に対し戦略的勝利をもたらすため、どのように部下を力づけるか、という大きなレッスンとなりました。ARESチームの多大なる努力の結果、現場へ実績ある装備品を迅速に届けるため、あらゆる継ぎ目を考慮して、変化する生産要求に素早く対応できる最高のものを編み出せたと思います」と、ARESが今後の装備品調達に変化をもたらすことを期待しています。
今回の契約で、外国向けの有償軍事供与(FMS)分として提供されるのは、NATOによる輸出承認がなされている、MQ-9Aダッシュ21とされるバージョンになります。MQ-9計画事務局では今回の契約を機に、同様のアプローチでそのほかの契約案件を締結することとしています。自衛隊の装備品調達契約も、このような方式が導入できると、調達予算の圧縮や防衛産業の維持に役立つかもしれません。
<出典・引用>
アメリカ空軍 ニュースリリース
Image:USAF
(咲村珠樹)
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