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「元祖段ボール猫神社」を覚えていますか?話題のその後

おたくま経済新聞 / 2020年10月18日 18時0分

「元祖段ボール猫神社」を覚えていますか?話題のその後

画像提供:尚輝*尾張のうつけ者さん(@hisasyu)

 猫をご神体とする段ボールでつくられた猫神社(以下、段ボール猫神社)。その元祖を覚えている方は、どれぐらいいるでしょうか?

 2017年にTwitterで話題になって以降、同じく猫をご神体とした段ボール猫神社を作る人が数多く登場。モノヅクリが得意なネコ好きさんの間では、ちょっとしたブームになっているといっても過言ではないかもしれません。

 元祖となった2017年の猫神社は、「みるくちゃん」というご神体が鎮座しておりました。あれから約3年。みるくちゃんは今年3月に虹の橋を渡り、あちら側へと旅だって行ったのです。

 本稿では、今に続く段ボール猫神社の「元祖のその後」についてお伝えします。

■ 出会いはスーパーに張られていた里親募集

 みるくちゃんは、Twitterユーザーの尚輝*尾張のうつけ者さん(以下、尚輝さん)家で飼われていた猫ちゃん。尚輝さん家とみるくちゃんの出会いは、今から18年ほど前のこと。スーパーに張られていた1枚の里親募集がきっかけでした。

 自宅から少し離れているけど、雑貨も扱う少し大きめなスーパーに尚輝さんのご両親が立ち寄った時のこと。ふと目に入った一枚の紙に、数匹の子猫の里親募集が書かれていました。

 実はこの時すでに先住猫の黒猫のペロくんがいる上に、小学生で手のかかる子どもが2人もいる状態。しかしどうしても気になる張り紙……。悩んだ末に引き取ったのが、後に「元祖段ボール神社の猫神様」となるみるくちゃんだったのです。

 尚輝さん家に来た当初のみるくちゃんは、生後3か月ほどで目やにがすごい状態でした。あまりに小さいがゆえに、色々心配もしたのですが、家族一丸となってのお世話と加療が実りなんとか完治。しかし、この時の影響からか生涯にわたって「そんなに目は良くなかった気もします」と尚輝さんは語っています。

 この出会いから15年たった2017年10月のある日の出来事。冒頭の猫神社誕生のお話しに繋がります。

■ 母作「段ボール猫神社」ができるまで

 もともと服作りや、日曜大工、ミニチュアフェイクスイーツ作りに、絵を描くことが好きだったという尚輝さんのお母さん。ある日わりと綺麗な段ボールがたまっていることに気がつきました。すると思いついたのが、その頃よく出かけていた神社。そこから、するする思考が繋がっていき……。

 モノヅクリ好き→猫も好き→綺麗な段ボールたくさん→猫が入れる神社!

 という流れから、早速社殿づくりに着手。構想からわずか2日ほどで、後にTwitterで話題となり未だ続く人が後をたたない初代段ボール猫神社が完成しました。

 そして尚輝さんの手により画像がTwitterに投稿され、あれよあれよと大きな話題に。この時の投稿は今でも伸び続け、記事執筆時点でRTが7万2千回を突破。いいねは13万回を超えています。

母が作成していた
ダンボール神社が完成しておりました。
御神体は15歳三毛猫のようです。
ちなみにお賽銭も自分で回収するスタイルの御神体です。 pic.twitter.com/jO2NsXx00k

— 尚輝*尾張のうつけ者 (@hisasyu) October 17, 2017

 当時の神社は、今も尚輝さん家に残されています。写真を見せていただくと、置かれているのはリビングの棚の上。今では、みるくちゃんの代わりに「夏目友人帳」のニャンコ先生がご神体をつとめ、同じ室内にある、みるくちゃん用の棚と同居する形で静かに置かれています。

■ 突然の別れ……そして、不思議な巡り会い

 それは、猫神社が話題になってから約3年後となる、2020年3月後半の出来事。

 ある日突然、みるくちゃんの食欲がなくなってしまいました。シリンジなどをつかって栄養補給をするものの、次第に動きも鈍くなり……。そのまま1週間後の3月24日の晩、しずかに眠るようにそのまま虹の橋を渡って行ったのでした。

我が家の三毛猫
みるくが先程18歳で永眠致しました。

Twitter始めた時から皆様に可愛がられて
幸せだったと思います。

神社猫としてたまにまだ回ってくるかと思いますが
その時は元気な姿を見てあげてください

— 尚輝*尾張のうつけ者 (@hisasyu) March 23, 2020

 この時の別れは突然だったといいますが、「18歳まで大きな病気もせずギリギリまで元気でいたね、と言われるぐらいには大往生でした」と尚輝さん。

 虹の橋の向こうには、先住猫でありお兄ちゃん的存在だった黒猫ペロくんが3~4年前、先に行ってしまったそうです。

 ペロくんのときも別れは夜。「どちらも看取ることが出来たのは凄くよかった」とも、尚輝さんは語っていました。2匹は向こうで会えたかな?

 この別れがあってから、しばらくたった6月頃のある日の出来事。尚輝さんは仕事の帰り道に、なんとなく捨て猫がいないかと3キロぐらいの距離を歩いて帰っていたそうです。でもなかなか見つからずに帰宅。「見つからないのは逆に良いことだ」と話してた矢先の6月18日に、なんと5匹もの子猫との出会いが待っていました。

 その日の夜のこと。母方の叔母から「(叔母の)会社の前にへその緒つきの子猫5匹が捨てられてて期間限定で預かって欲しい」という連絡が尚輝さん一家のもとに入りました。「へその緒つき」ということもあり、ことは一刻を争います。もちろん答えはOK。

■ ごね勝ち?2匹も引き取ることになったワケ

 5匹すべてが尚輝さんのお家にやってきました。しかし、うち2匹は「先天性と思われる衰弱や突然死」ですぐに虹の橋を渡ってしまい、残りの3匹はというと……「すったもんだ、騒動もありつつ生後1日ぐらいからミルクをあげ、離乳食も卒業し今ではそのうちの2匹は我が家で1匹は母の友人が引き取ってくれスクスク我が物顔で闊歩しています」とのこと。

生後1日から育ててると
日々出来ることが増えて来ることに
感動するんだけど
もはや保護猫飼育というより
これは子育て
3匹の子育てレベル pic.twitter.com/ngj4Hyow7j

— 尚輝*尾張のうつけ者 (@hisasyu) July 22, 2020

 今では元気に成長してるそうです。とはいえ、記事執筆時点で4か月といったところ。これからもっとやんちゃ盛りになることでしょう。

 ちなみに、尚輝さんのご両親は「終生飼育」を考えると、ペットを飼えるのは「みるくの時点で(自分たちの年齢的に)最後」と考えていたそうです。

 それなのに何故2匹も引き取ることになったのか?聞いてみると「私(と若干弟)がどうしても2匹がいいとごねたからです(笑)」と笑いながら教えてくれました。

 「私と弟が元々仲良い姉弟なので猫も叶うなら全員、難しいなら2匹は必ず兄妹で引き取りたい」と5匹いる頃からごねたそう。最終的には「姉弟で家を出る時は連れて出て行く」と宣言して、ごね勝ちしたそうです。

 こうして家族の一員となったのが、茶トラの胡桃ちゃんとサビ猫のシャルルちゃん。

 名前には「うちの子はみるくのようにスクスク長生きしてくれるよう、黒猫ペロみたいな頭のいい子になるよう(かぎ尻尾や色もお揃いだったので)」と願いを込め、胡桃ちゃんは「みるく」ちゃんの名前を逆読みすることから名付け、もう1匹のシャルルちゃんには黒猫ペロくんの名前の由来が「長靴をはいた猫」で知られる童話作家のシャルル・ペローであることから名付けられています。

 「先代の血は繋がらないけども仲の良かった兄妹から今の血の繋がった兄妹へ名前も引き継いでもらっています」と語る、尚輝さん。

 里子に行った子も遊びにくることがあり「兄妹が顔をあわせることが出来るのが嬉しいです」と今の状況を教えてくれました。

■ みるくちゃんは猫とヒトの縁結びの神様?

 実は、元祖段ボール猫神社が話題になった当時も編集部では記事にしています。その当時、記事化の条件で尚輝さんから「保護猫についても少しでいいです触れて貰えませんか?」という願いを託されていました。

 みるくちゃんが元捨て猫ということもあり、全国の捨て猫や保護猫たちの幸せを願ってのことでした。そこで、当時の記事では、尚輝さんの願いも説明した上で保護猫たちの状況にも触れ、『みるくちゃんの御利益はもしかしたら新しい家族との「縁結び」かも』といった具合で紹介していたのですが、今回改めてみるくちゃんとの出会いから現在までを聞くうちに、もしかしたらみるくちゃんが新しい猫ちゃんたちの縁を結んでくれたのかな?と、考えてしまいました。

 尚輝さんのふとした思いつきの子猫さがしや、みるくちゃんが虹の橋をわたって約3か月後という悲しみが少し癒えかけているタイミングでの出会い。単なる偶然かもしれませんが、もし「猫とヒトとの縁結びの神様」がいたら、素敵ですよね。

 ちなみに、最初に話題になって以降、数々の段ボール猫神社が誕生していますが、尚輝さんによると「今でも引用RTで「コレ参考にしました!」など、お話しはしたことありませんが作ってくださった方で通知欄に来た方は拝見させて頂いており、その都度母にも見せるとそこにいる猫ちゃん達に「可愛い~!」と言ってます」と、楽しんでいるそう。

 元祖からはじまり、あちこちで作られるようになった段ボール猫神社。ブームが続くとともに、保護猫や捨て猫たちにも、もっと幸せな縁が広がっていくといいですね。

<記事化協力>
尚輝*尾張のうつけ者さん(@hisasyu)

※初出時、一部表現にゆらぎがありました。お詫びして訂正いたします。

(宮崎美和子)

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