アメリカ空軍の「ロボット警備犬」現場での実証試験開始
おたくま経済新聞 / 2021年1月8日 15時0分
アメリカ空軍の歩哨犬(K-9)とロボット犬Vision 60(Image:USAF)
軍では様々なロボットが実用化に向けて試験されていますが、アメリカ空軍で警備犬の補助として期待されているロボットが、実際の基地警備任務における可能性を探るべく、イリノイ州スコット空軍基地で実証試験が始まっています。犬のように吠えたり噛んだりはできませんが、さて、どうなるでしょうか。
基地に不審者が立ち入らないよう、巡回警備する任務を「歩哨(ほしょう)」といい、兵とともに任務に従事する犬を歩哨犬といいます。アメリカではコードナンバーから「K-9(ケーナイン)」とも呼ばれ、ハンドラーと呼ばれる兵士とペアを組み、敷地を巡回して警戒・監視にあたっています。
歩哨任務は24時間体制ですが、兵士も歩哨犬も生き物。普段の生活サイクルと異なるシフト制や、体調の都合もあり、犬にとってはハードな仕事環境といえます。
アメリカ空軍航空戦闘軍団(ACC)の研究室では、全領域戦闘(All-Domain Warfere)における機動的な戦力展開に役立つ新しい概念やテクノロジーを研究する中で、歩哨任務の負担を軽減する方策を検討。その一環として、ロボットを補助的に使用する試験を実施することになったといいます。
実証試験に供されるのは、ゴースト・ロボティクス(Ghost Robotics)の開発した4脚歩行ロボット「ビジョン(Vision)60」。犬とほぼ同じ大きさで、各種センサーを搭載して自律制御で動きます。
この研究に携わるマルコス・ガルシア上級曹長によると「本物のK-9(歩哨犬)と置き換える目的ではありません。単に歩哨任務に投入する数を増強するものであり、場合によっては犬の命を守ることさえできるかもしれません。研究チームでは、爆弾の捜索に役立てたり、通常の巡回歩哨に使用することを想定しています」とのこと。
特に海外展開先では、仕掛け爆弾などのテロに警戒する必要があり、場合によっては歩哨犬や兵士が怪我をしたり、命を落としたりする危険があります。このロボットは低コストで、兵士や犬の命を危険に晒すリスクを低減してくれるものと期待されています。
スコット空軍基地の警備を担当する第375警衛中隊のジャスティン・ハンロン曹長は「1番のセールスポイントは、ロボットが消耗品であるのに対し、我々はそうではない、ということです。ロボットが壊れた場合、部品を交換すれば任務に復帰できますが、人間はそう簡単にはいきません。ここで重要なのは、兵士たちを無用の危険から守ることなのです」と、ロボットを活用する利点を語っています。
このビジョン60は毎秒7フィート(時速約1.1km)で進むことができ、これまでの試験結果によると、空中を進むドローンや車輪式、装軌式よりも優れた走破性を有しているとのこと。複合センサーでは高解像度の可視光・赤外線映像を伝送でき、兵士は安全な場所から映像を確認し、異常を見つけた際に急行する体制をとるという仕組みを想定しています。
ガルシア上級曹長は今回の実証試験について「私たちは使命に燃えるイノベーターの集まりであり、現場の兵士たちは多くの素晴らしいアイデアを持っています。私たちはそれらのアイデアを集め、空軍の未来へと結実させたいと考えています」との希望を口にしています。
アメリカでも少子化は進んでおり、軍の中核となる若い兵士は貴重な存在になりつつあります。アメリカ空軍は今後も無人のロボットをうまく活用し、任務における実効性を向上させる取り組みを進めていくとしています。
<出典・引用>
アメリカ空軍 ニュースリリース
Image:USAF
(咲村珠樹)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
“最強戦闘機”F-22「ラプター」アップグレードを開始! センサー強化で「防御力が大幅アップ」
乗りものニュース / 2025年1月28日 11時42分
-
管理業務のロボットフレンドリー化を目指す取り組み「ロボットとセキュリティシステムの連携」実証実験に成功
PR TIMES / 2025年1月22日 10時45分
-
ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローンを「撃墜」し、ウクライナに貢献した「まさかの生物」とは?
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月14日 20時35分
-
本当に精鋭部隊なのか…「プーチン軍に誤発砲」「戦死すれば顔を焼かれる」ウクライナに送られた北朝鮮兵の末路
プレジデントオンライン / 2024年12月30日 17時15分
-
北朝鮮で「将軍様」に重大事件か…突然の厳戒態勢に国民困惑
デイリーNKジャパン / 2024年12月29日 14時26分
ランキング
-
1フジテレビの記者会見に広告主は「説明不十分」、CM再開見通せず…春商戦控え減収必至
読売新聞 / 2025年1月28日 7時45分
-
2「Xを担当して約9年、お知らせです」MKタクシー公式アカウントの「中の人」が報告 お祝いの声、続々
まいどなニュース / 2025年1月28日 7時20分
-
3iPhoneでSafariを閲覧していたら「安全ではありません」と警告が……危険なサイトなのでしょうか?
オールアバウト / 2025年1月27日 20時35分
-
4医師に聞く「肝臓から脂肪を減らす」朝食の選び方 コンビニで売っている商品でも対策できる
東洋経済オンライン / 2025年1月28日 8時0分
-
5外国籍でも「日本の免許」簡単に取得、なぜ? 「ホテルの住所」でOKは変わらずも…条件変わった? 「外国免許切替」の現状とは
くるまのニュース / 2025年1月27日 9時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください