アメリカ陸軍の装甲戦闘車両用次世代防御システム 正式試験へ
おたくま経済新聞 / 2021年2月17日 19時0分
MAPSによる対戦車ミサイル防御のイメージ(Image:Lockheed Martin)
ロッキード・マーティンは2021年2月16日(現地時間)、アメリカ陸軍の装甲戦闘車両を対象にした次世代防御システム開発計画で、まもなく開始される正式適合試験をサポートすると発表しました。対戦車ミサイルやロケット砲の攻撃に対し、破壊および回避をするこの防御システムは、同社の開発した「MAPS」が基本となっています。
現代の戦場において、戦車をはじめとした装甲戦闘車両は様々な脅威を相手にしています。かつては「戦車の敵は戦車」という時代もありましたが、現在は歩兵が運用する対戦車ミサイルなどの装備が発達し、物陰に潜んだ相手から攻撃されるというケースが多くなりました。
事前に相手を視認できない状況は、主導権を取れる攻撃側が有利。このため、早い段階で相手を見つける各種索敵機器だけでなく、ふいに攻撃された場合にダメージを回避する手段が重要です。
現在アメリカやイギリス、トルコなどの防衛企業が各種の防御システムを開発していますが、多くは迫りくる対戦車ミサイルやロケット砲弾に対し、着弾する前に直接破壊する「ハードキル」という手法がメイン。ロッキード・マーティンがアメリカ陸軍向けに開発した「MAPS(Modular Active Protection System)」は、飛んでくるミサイルのセンサーや誘導信号を狂わせ、進路をそらして回避するという「ソフトキル」を前提としたシステムです。
その仕組みは、センサーユニットで対戦車兵器の発射を検知し、コントローラーがその情報をもとに適した対抗システムを起動、対戦車兵器の着弾を妨害するというもの。物理的に破壊するハードキルの場合、一度使うとその場所は使えなくなるため、連続した攻撃に対応しきれない場合がありますが、ソフトキルであれば作戦行動中ずっと防御機能を使うことができるのがメリットです。
アメリカ陸軍ではM1エイブラムス戦車用の「トロフィー」、ストライカー装甲車用の「アイアン・カーテン」、M2ブラッドレー歩兵戦闘車用の「アイアン・フィスト」という3種類を構想していましたが、MAPSは組み換え可能なモジュラーシステムを採用しており、共通に使用することができます。もちろん、コンピュータシステムもオープンアーキテクチャを採用して、将来的な機能強化も容易になるよう配慮されています。
ロッキード・マーティンでこの計画を統括するデビッド・ローホール氏は「ロッキード・マーティンは2014年から、アメリカ陸軍と協力してMAPSの開発に取り組んでいます。以来、MAPSの基本キットは複数回の実射試験において、信頼性を示してきました。私たちは様々な戦闘車両への適用試験をサポートする準備ができていますし、陸軍が実戦化する判断を下す最終段階になったと認識しています」とのコメントを発表しています。
これまでMAPSは15回の実証試験を実施し、すべて回避に成功しているとのこと。現代の戦場では大規模な戦車戦の機会は少なく、歩兵や民兵を相手にした非対称戦闘が多くなっており、歩兵が使用する対戦車兵器から装甲戦闘車両の乗員を防護するこの種のシステムは、今後各国で採用が進むものとみられます。
<出典・引用>
ロッキード・マーティン ニュースリリース
Image:U.S.Army/Lockheed Martin
(咲村珠樹)
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