国立科学博物館らが茨城に「科博廣澤航空博物館」開設 南極観測ヘリS-58を移送
おたくま経済新聞 / 2021年3月8日 16時30分
![国立科学博物館らが茨城に「科博廣澤航空博物館」開設 南極観測ヘリS-58を移送](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/otakuma/otakuma_20210308_08_0-small.jpg)
茨城県筑西市に移送された南極観測ヘリS-58(JA7201)
国立科学博物館は茨城県筑西市のザ・ヒロサワ・シティとともに、国立科学博物館が所蔵するYS-11量産初号機などの航空関連資料を展示する「科博廣澤航空博物館」を茨城県筑西市に設置することを2021年3月3日に発表。その展示資料としてYS-11に続き、南極観測ヘリのシコルスキーS-58を茨城県つくば市の収蔵施設から現地へ移送しました。
科博廣澤航空博物館は、羽田空港内の格納庫で20年ほど大切に保管されてきたYS-11量産初号機(JA8610)が、東京オリンピック・パラリンピック開催を前に移設を求められ、保管場所を検討していた国立科学博物館と、歴史的価値の高い展示物を設置したいと検討していたザ・ヒロサワ・シティとの希望が一致したことにより実現したもの。管理運営の主体となるのは、2021年3月3日に設立された一般財団法人「科博廣澤航空博物館」です。
茨城県筑西市のザ・ヒロサワ・シティ敷地内に作られる「新航空博物館」では、すでに羽田空港から移送され、組み立てを終えたYS-11量産初号機(JA8610:ひとまる)のほか、国立科学博物館が所蔵する貴重な航空関連資料が貸与され、展示されます。収蔵資料の移送第一陣として、海上保安庁が1958〜1959年の第3次南極観測から1961〜1962年の第6次南極観測にかけて運用したシコルスキーS-58(登録記号:JA7201)が、茨城県つくば市の筑波研究施設からザ・ヒロサワ・シティへ搬入されました。
南極観測では、1956〜1957年の第1次観測でベル47Gヘリコプターが飛行試験を実施しましたが、これは上空から状況を偵察するためのもの。国立科学博物館が所蔵するシコルスキーS-58は、物資と人員の輸送を目的として運用するために初めて導入された3機(JA7201・JA7202・JA7203)のうちの1号機(シリアルナンバー58-945)で、1958年に当時の新三菱重工(現:三菱重工)がノックダウン生産したもの。母船となった南極観測船宗谷(PL107)は、海上保安庁で初めてヘリコプター運用能力を持つ船となりました。宗谷は東京の船の科学館で保存されています。
S-58は海上保安庁から移管された1973年から2000年まで、東京・上野の国立科学博物館で展示されていましたが、地球館の完成にともなうリニューアルにより展示を終了。以降は筑波研究施設の収蔵庫に保管されていました。
また、これまで上野の国立科学博物館で展示されていた零式艦上戦闘機二一型改(「ラバウル工廠」で現地改造された第二五三海軍航空隊所属の複座偵察型)も、こちらで展示されます。現在は長年の展示による経年劣化や、1970年代の発見・修復時に実施された不適切な修復部分(マイナスネジを使うところプラスネジが使用されているなど)を修正・復元する作業が進められており、終了後に移送される予定です。
零戦関連の資料では、後期型(栄二一型装備機)用と推測されるプロペラ金型も展示予定。2010年10月26日〜2011年2月6日に開催された特別展「空と宇宙展―飛べ!100年の夢」で、初めて一般公開されて以来のこととなります。
さらに零戦や陸軍の一式戦「隼」などに使用された「二式一一五〇馬力発動機(栄21型/ハ115)」も展示されます。これは中島飛行機武蔵野製作所で1943(昭和18)年12月に製造された、陸軍向けの製造番号2828で、陸軍の木製特殊攻撃機「剣(キ115)」に搭載されていたもの。国立科学博物館では「剣」の機体も筑波研究施設の収蔵庫で分解状態のまま保管していますが、材質が劣化しており復元はほぼ不可能な状態です。
このほか展示予定となっているのは、戦後初めて日本人の操縦により空を飛んだグライダー「日本電建号(霧ヶ峰式鷹7号グライダー/登録記号:JA2001)」や、木村秀政教授の指導のもと日大理工学部が作り上げた人力飛行機「日大式ストークB」など。ストークBは加藤隆士さんの操縦で1976年12月31日に対空時間4分43秒0、1977年1月2日に直線飛行距離2093.9mと当時の世界記録を樹立しました。日本電建号は特別展「空と宇宙展―飛べ!100年の夢」以来の展示です。
ザ・ヒロサワ・シティには、ほかにもD51形蒸気機関車やEF81形電気機関車、寝台特急「北斗星」用24系25形客車、新幹線E2系電車、キハ30系気動車などの鉄道車両、クラシックカー、クラシックバイクなども保存・展示されており、総合的な「乗りものミュージアム」となりそうです。
これまでスペースの関係で展示・公開がかなわなかった貴重な航空機や資料が公開されるのは、産業遺産の継承や次世代育成の教育的観点からしても非常に重要なことといえます。科博廣澤航空博物館の開館時期は、今後詳細が詰められることとなっています。
情報提供:国立科学博物館/一般社団法人 科博廣澤航空博物館
(咲村珠樹)
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