関西では知名度抜群の大正義お菓子 植垣米菓「鴬ボール」知ってる?
おたくま経済新聞 / 2021年6月13日 9時0分
関西では知名度抜群の大正義お菓子 植垣米菓「鴬ボール」知ってる?
「『鴬ボール』って知ってます?」
とある日の編集部で不意に出た話題。
「え?なにそれ?」
このまさかの会話を耳にし、筆者は驚愕してしまいました。「鴬ボール」というのは、関西では「あれやんね~」と反応されるほどの知名度を有するお菓子なんです。
しかしながら、他の編集部員に写真をみせても「豆菓子の一種?」「ふ菓子かしら……」「おかき?」「聞いたことはあるけど実物をみたことがない」などの反応ばかり。どうやら「関西限定」の知名度だったもよう。
そこで「鴬ボール」とは一体何なのか。生粋の関西人の筆者がご紹介します。
筆者は兵庫県在住者。実は行く先々のスーパーで、「遭遇率」が高いのが今回紹介する鴬ボール。これはあくまで筆者個人の感覚ですが、置いていないスーパーを探すほうが難しいと感じるほどです。
ちなみに鴬ボールの製造元は、兵庫県神戸市に本社所在地を構える製菓会社「植垣米菓」。創業は1907年という、100年以上の歴史を持つ老舗企業です。
■ 「あられ~うえがき鴬ボール」のCMもよく知られている商品のパッケージの方からご紹介いたしましょう。
まず全体のレイアウトですが、中央部にデカデカと「鴬ボール」の商品名が記載。さらにその「上」に、鳥のウグイスがたたずんでいます。そこを「境界線」として、上部は全面を黄色に、下部には商品が隙間なく敷き詰められている……といったもの。ちなみにこれ、筆者の幼少期からバランス比はほぼ変わっていません。「鴬ボール」の商品名が、昔より大きくなったかな?といった程度。
そこから、左上に「うえがき」「あられ」と記された社ロゴ。実は植垣製菓は、「鴬ボール」が代表的な商品ではあるものの、それ以外にも、「オリーブの花」や「マヨネーズおかき」といった様々なあられ菓子を販売している企業。余談ですが、筆者はこの「マヨネーズおかき」が大好物のひとつ。機会があれば別途ご紹介したいレベルです。
パッケージの説明に戻ります。下部には、「化学調味料・保存料・着色料不使用」が左端に、「美味しさKOBEから」が右端と、このポジションで「謳い文句」と「地域性」を記載しています。
そして右側の「美味しさKOBEから」の上に描かれているのが、「かりんちゃん」「こりんちゃん」という植垣米菓(鴬ボール)の公式マスコットキャラクター。筆者(30代)の世代ですと、かりんちゃんとこりんちゃんが飛び跳ねながら、最後にナレーターが、「あられ~うえがき鴬ボール」のフレーズを発するというCMで目にしたキャラでもあります。朝7時台に放映するアニメのCM中に目にした「兵庫っ子」も多いでしょう。
■ 豆菓子の一種?いえいえ「米菓」ですそろそろ裏面も見ていきます。裏面には材料名とカロリーといった一通りが書かれているほか、左上は「かりんちゃん」と「こりんちゃん」の会話イラストが描かれています。
それによると「1930年の発売以来愛され続けているあられのベストセラー」。鴬ボールは今年(2021年)で発売92年。パッケージ表面に記載されていた「昔ながらのなつかしい味」という表記の“重み”も桁違いです。
ここまで紹介してきましたが、「『鴬ボール』というくらいだから、これは豆菓子の一種かな?」とおもっていた人でも、そろそろ正体に気づくかとおもいます。
鴬ボールは、主原料がもち米の「米菓」。他の使用原材料は、小麦粉・砂糖・植物油脂・食塩・水あめというシンプルなもの。本稿では先に製造元(植垣米菓)について触れているので、半ば“ネタバレ”していますが、初見ですと想像できないかも。
では、いよいよ商品を見ていきます。パッケージは「チャック付」になっているので、切れ目に沿ってチョキチョキ……チャックをさけて切っていきます。
現れたのは、茶色の球から白い球がにょきっと出てきたような形状の鴬ボール。改めてみると、独自性が際立っていますね。
■ 味わいは「かりんとう」さっそく食べて行きます。うーん、このあっさりした「白」に、濃厚な甘みの「茶」。この絶妙な味の掛け合わせこそ鴬ボール。味のイメージとしては「かりんとう味」。鴬ボールのHPでは「カリント風味の米菓」と紹介されています。
鴬ボールの両側にある茶色い部分は、小麦粉をまぶしたもち米が、油で揚げている最中に「はじけた」のが原因。その上で「茶」部分は、手で触れるとべたつきを感じるほどにコーティングされているからか、濃厚な甘さに。ここにさっぱり味の「白いの」が、黄金比で組み合わさっているため、思わず何個もパクついてしまいます。
そんな鴬ボールですが、先述の揚げる際の「はじける」という特徴もあって、戦前は「爆弾ボール」などと呼ばれていたそうです。それが戦後になり、平和が訪れたことで、現在の「鴬ボール」に改称されました。
「なぜ鴬か」という点については、これはお菓子の形状が、梅の花が開花しているかのように見えたため。そこから「梅にうぐいす」という連想から、鴬ボールに落ち着いたと言われています。
また「はじける」という表現は、現在ではおいしさが「はじける」という意で“解釈”。こちらはパッケージには記載されていないのですが、かつては植垣米菓のCMにて、「はじけるおいしさ」という「謳い文句」として使用されていたフレーズだったりします。
90年を超える「歴史」もあり、時代背景に合わせて都度その様相を変えていった鴬ボール。一方で、中身については変わらない味と形状だったため、特に筆者のような「兵庫っ子」にとっては、「懐かしの味」として各々の思い出の1ページに刻まれています。
「やけどこれ、関西以外では知られていないんやねぇ……」
と、冒頭の会話を思い出し、少しばかりの寂しさを感じた筆者。
そこで、「関西圏では購入方法はないのかな?」と思い、軽く調べてみたところ、植垣米菓ではオンラインショップも運営しており、そちらで購入できる模様。ちなみに鴬ボールは「ミニ」と呼ばれる小さめのサイズや、様々な味のバリエーションがあったりします。
そんな不思議ななつかしさを感じる銘菓「鴬ボール」。よろしかったら皆さんもいかが?
(向山純平)
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