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有名だけど…てなもんやの「あたり前田のクラッカー」って何なん?実は本名「前田のランチクラッカー クラックス」さん食べてみた

おたくま経済新聞 / 2021年6月25日 9時0分

有名だけど…てなもんやの「あたり前田のクラッカー」って何なん?実は本名「前田のランチクラッカー クラックス」さん食べてみた

昭和が生んだ名フレーズ「あたり前田のクラッカー」を食す。

 昭和を代表する名フレーズのひとつ、「あたり前田のクラッカー」。この記事を読んでいる方も、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。令和になった現在も、販売展開されているロングセラー商品から生まれたフレーズです。

 しかしながら、肝心の「前田のクラッカー」の商品自体についてはご存じない方も多いのでは。最近では商品自体をみたことがない、という人も珍しくありません。そこで今回は実際の商品を手に入れつつ、取材の中で偶然知る事となった「前田のクラッカー」のトリビア交えて紹介していきます。

■ 今ではスーパーにひっそりと置かれている「前田のクラッカー」

 さっそく商品の確保に入る筆者。ちなみに前田のクラッカーの製造元は、「前田製菓株式会社」という企業。大阪府堺市にあり、創業100年を超える老舗企業です。

 私事ですが、筆者は関西在住者。なので、「地の利」を考慮すれば容易に手に入る!……と、当初は思っていたのですが、「そうは問屋が卸さない」模様。大小問わず何軒ものスーパーを回ることに。ロングセラー商品なのに……。

 そしてお店を回ること数軒。ついに「前田のクラッカー」を発見!しかしそこでも、とくにコーナーを設けられているわけでもなく、ネームプレートすらなしで、ひっそりと在庫品が数品置かれているのみでした。さ、寂しすぎる!

かつて一世を風靡したクラッカーも今ではひっそりと置かれていました。

■ レトロ感漂うパッケージ 中にはたっぷりのクラッカー

 ということで、購入したクラッカーを手に帰宅した筆者。

商品を確保し帰宅。

 そういえば「前田のクラッカー」というフレーズが世に知れ割ったのは、今から60年近く前(1962年)にTV放映された前田製菓の一社提供番組「てなもんや三度笠」。

 主人公であるてなもんやコンビの、「あんかけの時次郎」がアバンタイトルにて、故・的場達雄氏や故・原哲男氏との丁々発止のやり取りの後、最後に「俺がこんなに強いのは『あたり前田のクラッカー』」というフレーズを発したことで「あたり前田のクラッカー」が世に広く知られることとなったのです。

てなもんや三度笠でもおなじみのポーズ。

 なお、「あんかけの時次郎」を演じたのは、後に「必殺シリーズ」にて「中村主水」、「はぐれ刑事純情派」にて「安浦刑事」を好演した往年の名優 故・藤田まこと氏であります。

 うんちくはこの辺にしてパッケージの確認に入りましょう。

 商品全容はというと、左上に「前田製菓」の会社ロゴ。さらに「三時のおやつは、いつも前田のクラッカー!」というキャッチコピーが記されています。でもその後の「前田の」「ランチ」「クラッカー」「クラックス」という文字が少しスペースをあけて記載されており、どう繋げるのかわかりません。

 「前田のクラッカー」と続けるのが正解???正しい商品名はなんだ……。前田製菓のHPで正式商品名を確認してみると……なんとそこには、「ランチクラッカー クラックス」の文字。

 たしかにパッケージに書かれた文字を繋げると「前田のランチクラッカー クラックス」と読むことができます。前田製菓の歴史でも、1955年の項目で「大衆化商品『ランチクラッカー』」誕生と記載。

 どうやら我らが知る「前田のクラッカー」は、「前田のランチクラッカー クラックス」というのが本名のようです。

 意外な事実に驚かされましたが、この点についてはまだ少し疑問が残っています。実は食べた後に記事を書きながら、前田製菓さんに連絡をとり取材を行っています。その内容は最後に紹介します。

レトロ感を感じさせるパッケージ。「フルカラー」でのお披露目です。

 さて、引き続きパッケージをみていきます。文字はそれぞれ白フチで縁取りをして、「前田の(赤字)」「ランチ(水&白)」「クラッカー(水)」の商品名表記。どれも歴史を感じさせる独特の書体となっていますね。さらに右下には「おかげさまで前田製菓100th」という記載。前田製菓は、公式HPを確認したところ創業が1918年(大正7年)。どうやらこのデザインは2018年の100周年を記念した年以来使用されているようです。

 ちなみに前田のクラッカーこと「ランチクラッカー」は1955年(昭和30年)の5月生まれとなっていました。人間年齢なら本稿執筆時(2021年6月2日)で満66歳(数え67歳)なので、周年も66周年(67年目)です。

右下に記された「100th」の文字。製造元の前田製菓の創業年は1918年とのこと。

 裏面も見てみましょう。使用原材料は特段変わった点はありません。ホームアドレスが「atarimaeda」となっているのは、前田製菓が「あたり前田のクラッカー」というフレーズをとても大切にしている証なのでしょう。

裏面には、「atarimaeda」と記されたHPの記載も。

 また、内容量は85グラムなんですが、実は今回筆者が購入したスーパーでの販売価格はなんと税込み84円。つまり1グラム約1円という換算、驚きの安さです。「特売かな?」と思い、念のため、前田製菓の販売サイトも確認したのですが、それでも税込み108円の模様。

■ ホッと安心する味わい

 では、実食です。パッケージを開封してみると、中にはクラッカーがぎっしり。枚数はひいふう……16枚!これで100円強で販売展開しているのは驚き。

パッケージ内には16枚ものクラッカーがぎっしり。

 クラッカーはどんな感じかな?ふむふむ、あまり塩がまぶされていませんね。それに、少し触った程度では“かす”が出ません。手が汚れないのはイイ!

しっかりとした焼き目に少量の塩が特徴的。

 いつまでも見つめていても仕方ないので、食べてみましょうモグモグ。お、これはしっかりとした歯ごたえです。料理バサミで断面を見ても生地がぎっしり。また、味わいはというと「非常にシンプル」。でもホッとするんです。

 恐らく基本は、昔からずっと変わらない味わいなのじゃないでしょうか。記事を読んでいるかたにも想像つく範囲の味です。でもだからこそ長年愛されているのかな?という気がします。変わったものより「変わらないでずっとあるもの」に人はどうしても戻りがち。

 奇をてらった味や料理、お菓子に人はつい注目しがちです。でも何故か気づくと手にとってしまう……戻ってしまう、変わらずあることに安心するのは昔ながらの商品。たった一口で安心させられる何かが「前田のクラッカー」にはありました。

断面を見てもクラッカー生地がびっしり。

 ただし……!まぶされている塩が少ないのもあり、人によっては物足りなさを感じるかもしれません。とはいえそこはクラッカー。色んなものと組み合わせる楽しみがあります。次では色んなものと組み合わせてみました。

■ 色々組み合わせて食べるのもおススメ

 ちょうどおやつ用に用意していた、チーズにカルパス、ビッグカツにバニラアイスがあったのでこれらと組み合わせていきます。

 ではまずはポピュラーなチーズから。クラッカーの上に少しのせて……モグモグ。

まずはチーズとの組み合わせ。

 ん、これはうまい!クラッカーが、生地が縁の下の力持ち的存在となって、“コラボ相手”を下支えするようになっていますね。チーズの場合、スライスタイプのがいいのかなと思いましたが、今回のベビーチーズや6Pチーズといったタイプの方が、より味が伝わっていいのかもしれません。「可食部分」的観点でいうと、今回のベビーチーズタイプがよりいいかも?

 他もどんどんいってみしょう。いけ!カルパス!モグモグ……

次はカルパスを検証。

 ムム!これもグッドな組み合わせです。カルパスの濃縮した味わいを、これまた前田のクラッカーが下支え。ちなみに筆者が今回購入したカルパスは、スーパーやコンビニで「箱買い」も可能なんですが、これは無限ループなるやつ!

 ただ丸型なので、スライスタイプのソフトサラミの方が安定性ではいいかもしれません。とはいえ、「コスパ面」では優秀な組み合わせです。

 さてお次はビッグカツ。これはクラッカーを巻くスタイルでいってみましょうモグモグ。

ちょっと挑戦的にビッグカツ。挟むスタイルで検証。

 おっ、意外にこれもいいですね。正直チャレンジングなチョイスだったのですが、悪くない組み合わせです。味の補強と結着的要素から、クラッカーとビッグカツの間に、とんかつソースをかけておくといいアクセントになりそうです。当初はビッグカツを半分にカットして、クラッカーの上にのせようとも想定していましたが、ダイナミックに巻いていくスタイルも面白い食べあわせでした。

 そうこうしているうちに、最後の味変アイテム。趣向を変えてスイーツ系のバニラアイスにしてみました。ちなみに選定理由は、筆者のひらめきです。果たしてその結果はいかに……モグモグ。

最後は趣向を変えてのバニラアイス。

 うんめー!めっちゃいけるやん!!!ひんやりとしたバニラアイスが、クラッカーを引き立たせる構図になっています。そういえばパフェなどでは、コーンフレークとアイスクリームを一緒に食べますが、考え方としてはそれに近いかもしれません。アイスのフレーバーとしては、酸味のあるストロベリーあたりでも面白いのではないでしょうか。

 と、気づけば、「16枚!?」と感じたクラッカーをあっという間に完食。いやいやこれは、なかなか素晴らしい商品ではありませんか。だからこそ、今も細々とでも販売され続けているともいえますね。

 また、この商品の特筆すべき点は価格面。筆者は長く食品関係の仕事に従事していたので、食料品を評する際に、価格面で評価するのは失礼にあたるかなと思い極力しないのですが、「前田のクラッカー」の場合は、そこも敢えて評価すべき点に感じます。今回の食レポのように、食べ合わせをする「楽しさ」が容易に実践できる。それもまたこの商品の大きな魅力のひとつではないでしょうか。

 だからこそ、前田のクラッカーの「現在位置」は寂しくも感じます。

 実は弊社では以前、「平成生まれが『この人は昭和生まれだな』と感じる言動ベスト15」という記事を配信したことがあるのですが、そこで堂々の1位に選ばれたのが、「あたり前田のクラッカーと言う」。

 質問の仕方からするに、懐古的な意味合いも含まれていますが、逆に言うとそれだけ「世間」に浸透をしている証拠でもあります。そう考えると、「全盛期」レベルの復活は難しくとも、「商品」としてももう少し知れ渡ってもいいのでは。

 せめて「お膝元」である関西では、もう少し目にする機会を増やしてほしいところです。

■ 執筆中、気づいた疑問を前田製菓に聞いてみた

 先述の通り、今回試食したあと記事を書いていくうちに少し疑問がでてきました。それは、「てなもんや三度笠で、藤田さんが手に取っていた『クラッカー』の商品名は本当は何なのか?」ということ。

 てなもんや三度笠は、放映回数が300回を超える長寿番組だったのですが、その大半が白黒放送。なので「俺がこんなに強いのは『あたり前田のクラッカー』」というフレーズを映したシーンも、商品の判別が難しくあります。

 さらに、放映当時は、ビデオテープが大変高価な商品だったために、現存する映像もわずか。今回記事を書くうえで、過去映像をみていたのですが、どうしても手に持っている商品の商品名がぼやけていてわからない!それに思い込みで書くわけにもいきません。

 ならば「製造元」である前田製菓に聞いてみよう!と問い合わせてみました。

 「まず始めに、藤田まことさんが手に持っている姿が有名な商品は、『前田のランチクラッカー クラックス』で間違いございません」

 開口一番そう答えたのは、今回取材に応じてくれた前田製菓広報担当。続けて、意外な事実も教えてくれました。

 「“あたり前田のクラッカー”というフレーズは、てなもんや三度笠 放送中に生まれたもので、当時は商品名ではありませんでした。小さな小判型をした現在の『あたり前田のクラッカー』は、当時の商品名は『前田のバタークラッカー』なんです」

 なんという新事実。ちなみに、前田製菓側としても、放映当時の社内事情を知る人間が少なく、確認するのに困難を極めたそうです。

 その上で、「ここからは、社内で聞き取りを行った内容からの推測となってしまいますが」と前置きをした上で、「クラックス」の由来も教えてもらいました。

 「『てなもんや三度笠』が爆発的な人気を誇り、藤田まことさんが口にする“あたり前田のクラッカー”が世間の皆様の広く知れ渡ったため、当時の担当者が商品名として残そうと、看板商品の1つである『前田のバタークラッカー』の名前変えたのではないかと考えます」

 「『クラックス』の意味については、謎に包まれておりますが、てなもんや三度笠放送当時は付いていなかったようです」

 「おそらく『ランチ』が、直訳すると『昼食』という意味で一般的に使用される言葉でもある為、差別化を図る為に付けたのではないかと考えられています」

 最後の最後で意外な事実を知ることができました。それにしても「クラックス」の意味は前田製菓さんでもわからなかったとは……。気軽に食レポ!と最初は思っていたのですが、記事を書くうちに調べていくと「あれ?」とおもうことが出てきてしまい……。気になるとどうしても調べずにはいられない性格なんですよね。

<取材協力>
前田製菓株式会社

(向山純平)

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