世界中の学生のアイデアが集結 「SPORTS CHANGE MAKERS」最終プレゼン開催
おたくま経済新聞 / 2021年8月24日 16時30分
「SPORTS CHANGE MAKERS」最終プレゼン開催
2019年から始まった「SPORTS CHANGE MAKERS」プロジェクト。「スポーツとテクノロジーで、あらゆる壁を超えろ!」をテーマに、世界中の学生からアイデアを募集していましたが、その最終プレゼンテーションが8月23日に1部と2部に分けて開催されました。
記者は今回1部にオンラインで出席。1部では中国チームとアメリカチームが自ら考えたアイデアを披露しました。
パナソニックが国際オリンピック委員会(IOC)や国際パラリンピック委員会(IPC)の協力のもとスタートさせた「SPORTS CHANGE MAKERS」。最終プレゼンテーションにはアドバイザーとして、国際パラリンピック委員会副会長デュエイン・ケール氏、IOC Young Leaderのジェマイマ・モンタグ氏が登場。
その他にも、空手アメリカ代表の國米櫻氏、車椅子フリースタイル選手のアーロン・フォザリンガム氏、認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表でプライドハウス東京の代表でもある松中権氏、ITジャーナリストの林信行氏、パナソニック株式会社常務執行役員の松岡陽子氏が、アドバイザーとして参加していました。
■ 中国チームは「インテリジェントタンデム電動アシスト自転車」最初のプレゼンは中国チームのソウ・タンズイさん、コ・ゲツさん、リン・セツジさん。発表したアイデアは、異文化コミュニケーションを簡単に楽しめる「インテリジェントタンデム電動アシスト自転車」でした。これは「LINK」というマッチングアプリを使って異国の人と知り合い、2人乗りのタンデム自転車に乗って交流を深めるアイテム。
そもそも、今回のアイデアは数年前に街を歩いていた時、韓国人の少年に薬局の場所を聞かれたことがきっかけ。その際にお互い相手の言葉を理解することができなかったため、翻訳アプリを使わなければいけなかったとのこと。
そこで言語の違いによって異文化コミュニケーションが上手く行えないという課題(バリア)を解消するために考えたのが今回のアイデア。オリンピックやパラリンピックなどの国際的なイベントの際に、地元の人たちと交流して、その国の文化を経験したい旅行客などをターゲットにしているそうです。
インテリジェントタンデム電動アシスト自転車は、健康的な移動手段であり、運転免許証も必要ないので誰でも利用可能。またバイクや車と違い、素晴らしい街の景色を360度ゆっくり楽しむことができます。
さらにオートパイロットシステムで乗る人の安全を確保。リアルタイム翻訳機も装備しているため言語の問題もクリアしています。そして、開催国での思い出を記録できるVlog(撮影)機器も搭載されています。
利用方法は「LINK」に好きなスポーツや音楽、目的地などの情報を入力するだけ。すると共通の趣味や目的地などを元にAIシステムがマッチしたユーザー同士を引き合わせます。あとは2人でインテリジェントタンデム自転車による旅を楽しむのみです。たしかに、これなら言葉が通じない異国の人とも交流を深めることができますね。
最後に中国チームは「『LINK』によって、オリンピックやパラリンピックの精神で異文化が出会って交流し、集まることを願っています」と話していました。
このアイデアに松中氏は「とにかく早く試してみたい」と興奮気味で称え、モンタグ氏も「言葉のバリアを超えることができ素晴らしい!」と絶賛。オリンピックの選手村でも使えるのではないか?と、新たな可能性も示唆していました。
一方、デュエイン氏は良いアイデアと認めながらも、自身が車いすで生活をしているということもあり、そういう人たちのことも考えて、現在のアイデアに創意工夫を加えていっていただきたいとアドバイス。林氏も「2人乗りの車いすでは出来ないか?」とアイデアを出していました。
これらの意見に対して中国チームは「新しいアイデアをたくさんいただいてビックリしている。本当に感謝しています」と言い、今回のプロジェクトに参加した意味があったと笑顔を見せていました。
■ アメリカチームは「Immersi-Vision Visor」続いてアメリカチームのティモシー・グエンさん、ジョシュア・サンチアゴさん、ジャスティン・アンダーソンさんが登場。アメリカチームが提案したのは聴覚障がい者をターゲットにした、聴きたい情報をビジュアル化するヘッドセット「Immersi-Vision Visor」。
これは障がい者の方はあまり試合を観戦しに行かない(行きたがらない)ということに注目し、聴覚障がい者の方たちに試合観戦を楽しんでもらうことを目的としたアイデア。試合会場にいる観衆の感情を投影することにより、現場の雰囲気を視覚化するヘッドセットを作ったとのこと。
ちなみに、なぜ聴覚障がい者の方に絞ったかというと、知り合いに聴覚障がい者の方がいて、その人も試合観戦を楽しめないでいたそうです。今回はその知り合いの方にも協力してもらいながら作ったと、経緯を説明していました。
試合会場で「Immersi-Vision Visor」を付けると、悲しみを表した青、怒りを表した赤、不快感を表した緑、愛情を表したピンクなど、色分けされた絵文字が表示されます。
さらに選手データや得点などもテキストボックスを用いて見られる他、言語設定のオプションもあり、英語やスペイン語、日本語やドイツ語などに変換することも可能。音が聴こえなくても、これなら没入感があり、一緒に試合を楽しむことができるかもしれません。
アメリカチームのプレゼンを見終わった松岡氏は、「絶対に実現してほしい!健常者でも見たい!」と力強くコメント。アーロン氏も「これによって多くの人が助けられる。選手も使えるようになれば良い」と話していました。
ただ、林氏は選手データなどの情報をテキストボックスなどで出しすぎると、逆に興味がそがれてしまう可能性もあると指摘。出てくる情報をユーザーがカスタマイズできるようにすることも考えてみてはどうかとアドバイスしていました。
國米氏はアメリカチームのアイデアに共感するとともに、「これを視覚障がい者や他の障がいを持った人にも活用できるか?」と質問。アメリカチームは「アップグレードしていけば、どんな障がいを持った人にも対応できると思う」と回答していました。これは本当に楽しみです。技術の進化に期待したいですね。
■ 2部では日本チームと欧州チームが発表なお、1部から約4時間後に行われた2部では日本チームが子どもたちのために、記録したアスリートの「動き」を遊具や設備として体験できる公園のアイデアを、欧州チームが競技のルールや知識が乏しく十分に楽しめない人のために、レフェリーの動きや判定を翻訳して視聴者に競技の面白さを伝えるアプリのアイデアを披露しています。
今回の最終プレゼンテーションでは、学生たちのアイデアだけにとどまらず、アドバイザーたちがいろいろな意見や可能性を加えたことで、新たな展開も次々に生まれていきました。これら最終プレゼンテーションのようすはYouTubeチャンネル「Channel Panasonic – Official」にてアーカイブ配信中。学生たちの挑戦を詳しくみることができます。
取材協力・写真提供:パナソニック株式会社
(取材:佐藤圭亮)
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