町を歩き、話をきけばきくほど知らない大阪との出会いが無限にある(深水英一郎氏寄稿)
おたくま経済新聞 / 2022年3月9日 15時0分
「それから」の大阪 著者:スズキナオ ききて:深水英一郎
こんにちは、深水英一郎(ふかみん)です。
今回は2月17日発売の新書「『それから』の大阪」(集英社新書)の著者であるスズキナオさんに著書をご紹介いただきます。東京から大阪へ移住したスズキナオさんが「知れば知るほどわからなくなる」という大阪の普段の顔とは?
【今回紹介してもらった本】
「『それから』の大阪」(スズキナオ著、集英社新書)2022年2月17日発売
【著者 スズキナオさんプロフィール】
1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。文芸「小説新潮」、WEBサイト「デイリーポータルZ」などを中心に執筆中。著書に「深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと」「遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ」(スタンド・ブックス)、「関西酒場のろのろ日記」(ele-king books)などがある。
https://twitter.com/chimidoro
——本日はよろしくお願いします。新著「『それから』の大阪」とは、どんな本でしょうか?
新型コロナウイルスがあっという間に世の中を変えてしまった2020年以降の大阪の町の様子について、東京からの移住者である私なりの目線で書いた本です。町を歩き、そこで出会った人に話を聞きながら取材を進めていきました。
2019年に「関西酒場のろのろ日記」という、大阪を中心とした関西の酒場をめぐり歩いた本を出版したのですが、その取材を通じて「自分の知らない大阪がまだまだ無限にある」ということを知りました。今回の“『それから』の大阪”で、もう少し大阪を知れた気がして、同時にさらにわからなくなってきた気もします。
——取材すればするほどわからなくなる……大阪って深いですね。スズキさんが東京から大阪へ引っ越したのはいつ頃でしょうか。
8年前に移住してきました。そういう者には、大阪にずっと住んでいる人にとっては当たり前と感じられていることが色々と新鮮に見えるところがあります。
立ち飲み屋に集まる常連さんたちの面白さとか、神社の参道やお祭りの縁日のにぎわいとか、公園とか駅ビルの独特の雰囲気とか、そういう、割と外には伝わりづらい大阪の面白さを感じていただけたら嬉しいなと思います。
——僕は九州出身なんですが、新卒で初めて働いたのが大阪でした。大阪駅前で昼飯を食べてたんですが、ビジネス街のビルの中がエキゾチックな雰囲気で驚きました。
大阪へ観光に来ると、道頓堀のグリコ看板の辺りを歩いてたこ焼きを食べたり、USJに行ったり、といったことが中心になるかと思います。それはそれですごく楽しいことには違いないのですが、この本を読んでいただくと、もう少し普段の、生活感のある大阪の雰囲気を面白く感じていただけるのではないでしょうか。
大阪では2025年に「大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)」の開催が予定されており、それに向けてここ数年で町の様子が変わっていくことと思われます。今だからこそ書き留めておける大阪の雰囲気があるのではと思います。
——これらの文章を書くきっかけというのはあったのでしょうか?
もともとは「お笑い!コナモン!道頓堀!」というような、観光地的としての大阪のイメージとは違う、平常運転の大阪の魅力が伝わるようなものを書きたいと考えていました。東京の友達が大阪に遊びにきた時、私はどちらかというとコテコテの大阪じゃなく、シラフの大阪を見てもらいたいと思うことが多く、そういった思いがきっかけになっています。
しかし、そのつもりで準備をしていたところでコロナ禍となり、こうなったら今の状況を記録しつつ、そこで生きている人たちの雰囲気や町のムードを書き残していこうと、方向を少しシフトしたという流れでした。
——今後書きたいものってありますか?
以前、自分の文章を読んで下さった方に「元気がない時でも読める文章ですね」というような感想をいただいてすごく嬉しかったんです。
ハイテンションなものに触れるのももちろん楽しいことですが、「ちょっと疲れたな」と感じている人にも読んでいただけるようなテンション低めの紀行文を書いてみたいと思っています。なにより私自身が最近疲れ気味なので(笑)
——テンション低めの紀行文ですか!なんだか癒やされそうです(笑) 今後のご予定は?
本書「『それから』の大阪」が出版された後はしばらく大きな予定はないのですが、文芸誌「小説新潮」で連載している「家族が一番わからない」や、WEBコラムサイト「デイリーポータルZ」での記事執筆などを頑張って続けていきたいです!
——ひきつづきご活躍楽しみにしています。本日はありがとうございました。
(了)
【ききて・深水英一郎 プロフィール】
真冬の釣堀に落ちたことがあります。
そんな私も今は著者に著書を紹介してもらう「きいてみる」企画を進行しています https://kiitemiru.com/
個人のちからの拡大とそれがもたらす世の中の変化に興味があります。
ネット黎明期にインターネットの本屋さん「まぐまぐ」を個人で発案、開発運営し「メルマガの父」と呼ばれる。Web of the Yearで日本一となり3年連続入賞。新しいマーケティング方式を確立したとしてWebクリエーション・アウォード受賞。元未来検索ブラジル社代表で、ニュースサイト「ガジェット通信」を創刊、「ネット流行語大賞」や日本初のMCN「ガジェクリ」立ち上げ。スタートアップのお手伝いや執筆をおこなっています。
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