批評を書くための教科書をめざした——著者にきいてみる(深水英一郎氏寄稿)
おたくま経済新聞 / 2022年3月17日 13時30分
批評の教室 著:北村紗衣 ききて:深水英一郎
こんにちは、深水英一郎(ふかみん)です。
今回は、新書「批評の教室 ――チョウのように読み、ハチのように書く」著者の北村紗衣さんに著書の紹介をしていただきます。
▼書籍DATA
「批評の教室 ――チョウのように読み、ハチのように書く」(北村紗衣著、ちくま新書)2021年9月9日発売
▼著者 北村紗衣さんプロフィール
武蔵大学人文学部英語英米文化学科准教授。北海道士別市出身。専門はシェイクスピア、舞台芸術史、フェミニスト批評。著書に「シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち──近世の観劇と読書」(白水社、2018)、「批評の教室――チョウのように読み、ハチのように書く」(ちくま書房、2021)など 。
https://saebou.hatenablog.com/
——本日はよろしくお願いいたします。「批評の教室」はどんな本なんでしょうか?
【北村さん】
本書は、大学に入ったばかりの学生に批評を書いてもらうための教科書として構想した本です。
批評の入門書というと批評理論の解説を中心にしたものが多いのですが、この本はそれ以前に必要なテクニック、つまり戯曲や映画、小説などの作品を細かいところまでよく理解し、分析するやり方を解説したものです。
私は大学で教えているのですが、入学時点でほとんどの学生はそもそもどうやって本を読んだり、映画を見たりすればいいのかわからず何も手がつけられないという状態なので、そういう学生に読んでもらうための本です。
——タイトルに「批評」とあるので、難しい内容かな、と思って手にとったのですが、開いてみると、馴染みのある最近の映画を引きながらわかりやすい語り口で読みやすかったです。
そもそも「批評」は難しいというのが勘違い……というか、日本ではきちんと作品を読解して批評するということにあまり馴染みがない人が多く、批評に悪いイメージがついているのが問題だと思います。
本来は批評というのは音楽やスポーツなどと同じで、誰でもやりたいと思う人は趣味として簡単に参入できるものだと思います(専門家としてお金をもらうレベルになるのは大変ですが)。
——最終章(第4章)にあるような、互いに批評を読み合い、コメントするコミュニティというのは、誰でも参加できるものなのでしょうか? もしあれば、どこにその情報はあるのでしょうか。
そういうコミュニティは基本的に自分で作るものです。自分で知り合いと一緒に読書会や映画の鑑賞会をやってみましょう。また、映画や本の感想シェアサイトに感想を書いてみるだけでもある種のコミュニティができます。読書会などをやるのはちょっとハードルが高いという人は、そのあたりから始めてみてもよいと思います。
——なるほど、まずは知り合いとはじめればよい、ということなんですね。ところで、北村さんがこの本を執筆するきっかけは何だったのでしょうか?
筑摩書房からフェミニスト批評の新書を書かないかというお誘いを頂いたのがきっかけでした。しかしながらフェミニスト批評以前の話として、そもそも大学入学時点で批評をどうやってやったらよいのかわからないという学生がほとんどだったので、批評の新書はどうですかと提案し、この本を書くことになりました。
また、この本を書く前に映画批評を書く訓練をするゼミを1年だけ勤務先の武蔵大学でやっていたことがあり、その授業はやっているほうも楽しくて受講者の受けも良かったのですが、カリキュラムの関係で1年しかできませんでした。楽しくやっていたゼミが終わってしまったところでつまらないなと思っていたので、せっかくだからゼミでやっていたようなことを本にしようというところもありました。
——北村さんの今後の活動予定について教えてください。
現在作っている最中の一般向けの本が2冊あり、片方は大学などで使うような教科書的な本の翻訳です。またその後にもう1冊くらい教科書的な本を作ることになりそうなのですが、その後はしばらくは専門である近世イングランド研究に専念したいです。
私の最初の単著は「シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち」という学術書で、意外にシェイクスピア研究以外の方にも読んでいただけて嬉しかったのですが、書いていた時はたぶん世界で10人くらいしか興味を持たないのでは……と思って作っていました。今後も世界で10人くらいしか興味を持たないような専門的なトピックに関する学術書を書いて、学問に貢献したいです。
——本日は、ありがとうございました。
(了)
【ききて・深水英一郎 プロフィール】
真冬の釣堀に落ちたことがあります。
そんな私も今は著者に著書を紹介してもらう「きいてみる」企画を進行しています https://kiitemiru.com/
個人のちからの拡大とそれがもたらす世の中の変化に興味があります。
ネット黎明期にインターネットの本屋さん「まぐまぐ」を個人で発案、開発運営し「メルマガの父」と呼ばれる。Web of the Yearで日本一となり3年連続入賞。新しいマーケティング方式を確立したとしてWebクリエーション・アウォード受賞。元未来検索ブラジル社代表で、ニュースサイト「ガジェット通信」を創刊、「ネット流行語大賞」や日本初のMCN「ガジェクリ」立ち上げ。スタートアップのお手伝いや執筆をおこなっています。
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