日本との交流もあった謎多き王国群「加耶」 国立歴史民俗博物館で企画展
おたくま経済新聞 / 2022年10月7日 13時30分
![日本との交流もあった謎多き王国群「加耶」 国立歴史民俗博物館で企画展](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/otakuma/otakuma_20221007_06_0-small.jpg)
国立歴史民俗博物館国際企画展示「加耶-古代東アジアを生きた、ある王国の歴史-」会場の様子
古代の朝鮮半島に存在し、日本との交流もあった王国群「加耶」。謎が多く、古代日本の国際関係にも大きく関わる加耶の考古遺物を展示する日本と韓国の国際企画展示が、2022年10月4日より千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で始まりました。開幕を前に報道内覧会が行われたので、一足早く見学してきました。
加耶は日本列島における古墳時代の3世紀~6世紀ごろにかけ、かつて日本史の教科書で「任那」とされていた朝鮮半島南部に存在した王国群の総称。今回は大韓民国国立中央博物館と日本の国立歴史民俗博物館、九州国立博物館が協力し、大韓民国指定宝物を含む加耶の貴重な考古遺物を220点あまり展示します。
当初は2020年の夏に開催する予定でしたが、折悪しく新型コロナウイルス禍で延期になっていました。2年の時を経て、ようやく企画展示が実現したのです。
内覧会に先立ち、今回の展示プロジェクト代表を務める国立歴史民俗博物館の高田貫太教授による、加耶および本展示に関するレクチャーがありました。加耶は、日本に最も近い朝鮮半島南部に位置した王国群を総称したもので、考古学的には金官加耶、大加耶、小加耶、阿羅加耶などの国々が確認されています。
これまで朝鮮半島の古代史では、この時代は高句麗、百済、新羅による「三国時代」という認識がされていました。しかしこの30年、加耶の遺跡や墳墓から出土した遺物の研究が進むにつれ、小さいながらも独自の文化、交流関係を有する国々であったことが明らかになってきたといいます。
他の朝鮮半島の国々をはじめ、倭(古代日本)や古代中国とも交流を深めていた加耶。加耶で作られた土器は西日本を中心に出土しています。しかし東の新羅、西の百済という強国に挟まれて徐々に国力が衰退し、562年には滅亡してしまったとのこと。
会場に足を踏み入れると、加耶を象徴する鉄器の数々が多く展示されています。馬用の甲冑である馬冑(陜川玉田M3号墳/5世紀後半:国立晋州博物館蔵・画像5)や、人間用の短甲(伝 金海退来里出土/4世紀:国立中央博物館蔵・画像6)といった展示品からは、豊富な鉄で諸国に対抗したり交易したりしていたことが分かります。
4世紀~5世紀に栄えた金官加耶の金海退来里所業遺跡からは、製鉄用具である鉄鉗や鉄鎚(いずれも4世紀末~5世紀前半:国立金海博物館蔵・画像7/12)などが見つかっており、工房が存在し様々な鉄器を生産していたこともうかがえます。須恵器をはじめとした土器は、加耶の諸国でデザインが微妙に異なっており、それぞれ独自の文化があったようです。
加耶は新羅や百済だけでなく、そして海を越えて倭(日本)や中国とも交易。泗川の勒島遺跡からは、倭で作られた小型の銅鏡(金海良洞里55号墓/2世紀中葉:国立金海博物館蔵・画像8)や広形銅矛(金海良洞里200号墓/3世紀前半に副葬:国立金海博物館蔵・画像8)、中国漢代の異体字銘帯鏡(昌原茶戸里119号墓/紀元前1世紀:国立金海博物館蔵・画像8)や銅鼎(金海良洞里322号墓/3世紀中葉に副葬:国立金海博物館蔵・画像8)が出土しています。
5世紀中頃から6世紀に栄えた大加耶。有力者の墳墓からは、数々の豪華な副葬品が見つかっています。高霊池山洞遺跡からは金銅冠(高霊池山洞32号墳/5世紀中葉:国立大邱博物館蔵・画像10)、頸飾りと金製耳飾り(高霊池山洞45号墳/6世紀前半:国立慶州博物館蔵・画像10)、金製耳飾り(高霊池山洞44号墳11号石槨/5世紀後半:国立慶州博物館蔵・画像10)が出土。
特に、陜川玉田M4号墳から出土した金製耳飾り(6世紀前半:国立晋州博物館蔵・画像9)は、非常に細かな細工が目をひく優品。どのような人の耳で揺れていたのか、想像するのも楽しそうです。
加耶と倭の密接な関係を示すのが、山清生草9号墳からの出土品(6世紀前半:国立晋州博物館蔵・画像11)。この古墳は倭の儀礼に則って葬送が行われており、被葬者は倭人ではないかと考えられているのだとか。加耶人と同じ場所に葬られていることから、現地の人々と倭人が交流し、時に雑居するような関係にあったことがうかがえます。
日本や朝鮮半島を中心とした古代東アジアの様相を知ることができる、国際企画展示「加耶-古代東アジアを生きた、ある王国の歴史-」は2022年10月4日~12月11日、千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で開催されています。関連する講演会などの情報も、国立歴史民俗博物館の公式サイトに掲載されています。
<取材協力>
国立歴史民俗博物館
(取材・撮影:咲村珠樹)
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