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「WikipediaをWikiって略すな!」って言われる件 あれってなんで?

おたくま経済新聞 / 2022年12月14日 10時30分

「WikipediaをWikiって略すな!」って言われる件 あれってなんで?

2010年より使用されている「Wikipedia」のロゴ(出典:フリー百科事典Wikipedia)

 インターネット上の百科事典として、多くの人が一度はアクセスしたことがあるWikipedia。

 これで調べたことについて「Wikiで見た」なんて略して話すと、「WikipediaをWikiって略すな!」とつっこまれることがあります。実はこれ、たしかにとても紛らわしい使い方なんです。

 では「Wiki」とは、本来何を意味するものなのでしょうか。順を追って解説していきます。

■ 「Wiki」は本来システムの名称

 Wikipediaは、百科事典を意味する「Encyclopedia」と、使用しているシステム名称「Wiki」からなる造語。日本語に訳すならば「Wikiを使用した百科事典」となります。

 ここで出てくる「Wiki」とは、webページを誰でも簡単にwebブラウザ経由で編集・更新できるシステムのこと。通常、システムは特定の管理者が全体を統括しますが、Wikiは不特定多数のユーザーが協力し合って編集作業を行うことができます。

 Wikiはアメリカ人プログラマーのウォード・カニンガム(Ward Cunningham)氏によって開発されました。元々のアイデアは、複数のプログラマーが共同でプロジェクトを進める際、それぞれがアイデアの意見交換を簡単にできる方法はないかと考えたことにあります。

 こうしてカニンガム氏は、誰もが簡単な手続きで互いにwebページを編集できるような仕組みを組み込んだサイトを構築。自身が設立した株式会社カニンガム&カニンガム(http://c2.com/)内のサイトとして、1995年3月25日に公開したのです。

2022年現在のWikiWikiWeb(スクリーンショット)

 サイト名は、ホノルル国際空港のターミナル間を結んで運行されているシャトルバス「ウィキウィキ・シャトル(Wiki Wiki Shuttle)」から「WikiWikiWeb」と命名されました。「Wiki」は、ハワイの言葉で「はやい」を表す単語で、素早くwebページを編集できる特徴を表現したものです。

 カニンガム氏は「Wiki」を誰もが使えるようにしました。これにより、複数のプログラマーがさらにWikiを扱いやすくするアプリ(総称して「Wiki software」と呼ばれる)を作り、公開。多くのユーザーがWikiを使用したサイトを開設するようになりました。

 Wikiを使用したサイト(以下「Wikiサイト」)の特徴は「WorkInProgress(現在進行形)」である、とカニンガム氏はWikiWikiWebのトップページに記しています。いつでも最新であり、かつ未完成であるのがWikiサイトなのです。

■ 世界最大のWikiサイト「Wikipedia」

 Wikiを使用して構築されたサイトのうち、最も大規模なのがウィキメディア財団が運営するWikipedia。2001年1月にアメリカ人プログラマーのジミー・ウェールズ(Jimmy Wales)氏とラリー・サンガー(Larry Sanger)氏により、これまで2人が手がけていたフリーのオンライン百科事典「Nupedia(ヌーペディア)」のWiki版という形で公開されました。

ウィキメディア財団公式サイト(スクリーンショット)

 専門家が執筆したすべての項目を一旦査読し、信用性を高めた情報だけが掲載される仕組みだったNupedia。ボランティアで執筆してくれる専門家を探して依頼し、さらに査読のプロセスを経るため、ページ(項目)数がなかなか増えないのが悩みでした。

 これに対し、Wikiは誰もが編集可能なシステムを採用しているため、書きたいと思ったユーザーが項目(ページ)を作成し、査読の代わりに閲覧したユーザーが訂正を重ねることで、情報の信用性を担保することとしました。

 Wikipediaはまたたく間に項目数を増やし、さらには英語以外のバージョンも加えて拡大。ほどなくしてNupediaの規模を追い抜き、より充実した「百科事典」となりました。発端となったNupediaは2003年9月で更新が止まり、2022年12月現在では利用ができなくなっています。

 2022年12月13日現在(本稿執筆時点)、300以上の言語版が提供されているWikipedia。日本語版は2001年5月ごろに作成されたと見られ、当初は使用ソフトの「MediaWiki」が日本語に対応していなかったため、項目はローマ字で書かれていました。

 日本語での執筆は2002年9月以降に始まりました。2022年12月13日現在の日本語版メインページでは、135万本以上もの項目があることが示されています。

2022年12月13日現在の日本語版Wikipediaメインページ(スクリーンショット)

 また、ウィキメディア財団は辞書としての機能を提供する「Wiktionary(ウィクショナリー)」や、過去のニュースを参照できる「Wikinews(ウィキニュース)」、著作権フリーとなった文書が閲覧できる「Wikisource(ウィキソース)」、旅行ガイドの「Wikivoyage(ウィキボヤージュ)」なども提供しています。Wikipediaのメインページにリンクが設置されているので、アクセスしてみると面白いかもしれません。

■ ほかにもWikiを使ったサイトはあるの?

 誰もが自由に編集可能なWikiは、個人では難しかった百科事典的なデータベースを構築するのに適したシステム。またWiki自体も自由に使用でき、すでにWikiが実装されたレンタルサーバも存在するため、Wikiを使ったサイトは世界中に数えきれないほどあります。

 たとえば日本の場合、ニコニコ内にある「ニコニコ大百科」も、Wikiを使って構築されている百科事典的データベース。このほかにもゲーム攻略やアニメ、コミック、ドラマなどのデータベースに関しても各種Wikiサイトが揃っています。

 もちろん完全にオープンではなく、利用者を限った形でWikiサイトを作成することも可能。いつでも改訂・更新が可能なため、社内でのマニュアル作成などに利用している企業もあるようです。

 自分が利用してみたいWikiサイトがあるかは、そのジャンルやタイトルの後にスペースを入れ「Wiki」と入力して検索すると探すことができます。かなりマニアックなものまであるので驚いてしまいますが、逆に熱心なファンやユーザーがいるものほど、Wikiサイトの内容は充実するのかもしれません。

 WikipediaをはじめとしたWikiサイトを利用する際には注意点があります。それは「書かれている情報の信用性が担保されていないこと」。閲覧するタイミングによって内容が異なる場合があり、論文執筆など厳密な調べ物には向かないと思っておいた方が良いでしょう。

<参考>
WikiWikiWeb
Wikimedia財団公式サイト
Wikipedia
※見出し画像は2010年より使用されている「Wikipedia」のロゴ(出典:フリー百科事典Wikipedia/CC BY-SA 3.0ライセンス)/その他掲載画像は記載しているサービス・WEBページのスクリーンショットです。

(咲村珠樹)

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