AI自動生成のイラストは「著作物」?著作権はどこに帰属するのか
おたくま経済新聞 / 2023年3月28日 11時1分
AI自動生成イラストの著作権は?(画像生成AI「Stable Diffusion」で生成したイラストのスクリーンショット)
絵心のない人でも自分のイメージを具現化できる「画像生成AIによるイラスト自動生成」。国内外でさまざまなサービスが提供されていますが、生成過程や生成されたイラストをめぐり、著作権の問題も起きています。
画像生成AIによるイラストは「著作物」として認められるのか、また著作権は誰に帰属するのか、考えていきたいと思います。
■ AI自動生成イラストに関する著作権の問題
画像生成AIは、ネットを通じてさまざまな画像データを参照し、ディープラーニングの手法で傾向を分析。そしてリクエストに沿った形で要素を組み合わせ、整合させてイラスト画像を生成します。
ここで著作権まわりの問題となるのは、大きく分けて2つ。画像データを収集する際に、元データ(イラストや写真)の著作権を侵害してしまう「トレパク」に対するものと、生成されたイラストは「著作物」なのか、その「著作者」は誰かという問題です。
Aiによる「トレパク」疑惑については、アメリカでマイクロソフト、GitHub、OpenAIを相手取った集団訴訟が2022年10月17日に提訴され、裁判が始まっています。
・出典:GitHubコパイロット訴訟 原告団公式サイト
(https://githubcopilotlitigation.com/)
また日本国内のサービスである「mimic」が、2022年8月29日のリリース直後から炎上し、わずか1日でサービスをいったん停止したことも記憶に新しいところ。
mimicの方は2023年3月現在、事前審査を経てクリエーターとして認定された人のみが利用可能なサービスへと生まれ変わりました。AIが学習するのは登録者本人の作品のみとし、生成されるのは自分の作風を反映させたものとなっているほか、学習に使用したイラストを公開し、生成画像には透かしロゴが入るなど、著作権保護に配慮した仕様となっています。
■ 国連の専門機関では早くから問題に着目全世界的な知的財産権の保護を目的として設立された国連の専門機関、世界知的所有権機関(WIPO)では、これらの問題を早い時点から認識していました。機関誌「WIPO MAGAZINE」の2017年第5号(10月に公開)には、AIと著作権の問題に言及した「Artificial intelligence and copyright(人工知能と著作権)」という記事が掲載されています。
・出典:WIPO MAGAZINE
(https://www.wipo.int/wipo_magazine/en/2017/05/article_0003.html)
この記事では、加盟各国の著作権法が、基本的に人間が著作物を作ることを前提に作られていることを紹介。AIによって自動的に生成されたものは作者が「人間でない」ため、著作物とみなされない可能性があること、またAIのシステム自体は人間が作っているので、システム自体は著作物として保護されるとの見方が示されています。
■ アメリカでは「AIのみで作られたもの」には著作権を認めずアメリカでは2023年3月16日付の官報で、アメリカ合衆国著作権局(USCO)から「AIにより生成された要素を含む作品について」の著作権登録に関するガイダンスが示されました。アメリカでは著作権を行使するためには、その著作物を著作権局に登録する仕組みとなっています。
このガイダンスによると、AIによって自動的に生成されたものについては「原則として著作物とは認められない」としています。しかし、生成されたものに対し、人間による修正などが施された場合は「著作物」として登録するとの基準が示されました。
・出典:Copyright Registration Guidance:Works Containing Material Generated by Artificial Intelligence
(https://www.federalregister.gov/documents/2023/03/16/2023-05321/copyright-registration-guidance-works-containing-material-generated-by-artificial-intelligence)
最初の例として、ガイダンスには2023年2月に事務局が行った「人間が作成したテキストとAIサービス『MidJourney』によって生成されたイラストを組み合わせたビジュアルノベル」における登録審査の様子が紹介されています。審査結果は「全体では著作権のある作品を構成するが、個々の画像自体は著作権で保護できない」というものでした。
審査されたビジュアルノベルは、Kristina Kashtanovaさんの「Zarya Of The Dawn」。著作権局からは2023年2月21日付の回答書が、代理人のVan Lindbergさんに宛てて送付されています。
・出典:アメリカ合衆国著作権局 「Zarya Of The Dawn」登録についての回答書
(https://copyright.gov/docs/zarya-of-the-dawn.pdf)
アメリカ合衆国著作権局では、AIが介在した著作物について特設ページを開設。2020年冬にさかのぼるこれまでの動きと、今後開催される公聴会などについてを一括して見られるようになっています。
・出典:アメリカ合衆国著作権局 「著作権とAI」特設ページ
(https://www.copyright.gov/ai/)
日本ではどうなっているのでしょうか。根拠法である著作権法第2条には、著作物の定義として「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と規定されています。
・出典:e-GOV法令検索 著作権法
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048)
現在のところAIには「思想又は感情」が存在しないので、AIが自動生成したイラストなどは著作権が保護される「著作物」とはいえないのかもしれません。しかし、ここに人間の「思想又は感情」に基づく修正が加えられた場合は、議論の余地がありそうです。
この問題については、まだ日本で訴訟が起きておらず、確定した法律判断が存在しません。その前に法改正が行われて「AIが介在した作品」についての位置付けがなされるかもしれず、今後の動きが気になるところです。
<出典・引用>
GitHubコパイロット訴訟 原告団公式サイト
世界知的所有権機関 WIPO MAGAZINE 「Artificial intelligence and copyright」
アメリカ合衆国著作権局 Copyright Registration Guidance:Works Containing Material Generated by Artificial Intelligence
アメリカ合衆国著作権局 「Zarya Of The Dawn」登録についての回答書(PDF)
アメリカ合衆国著作権局 「著作権とAI」特設ページ
e-GOV法令検索 著作権法
画像生成AI「Stable Diffusion」
※見出し画像は、画像生成AI「Stable Diffusion」で生成したイラストのスクリーンショット。その他本文中にある画像は、各出典ページのスクリーンショットです。
(咲村珠樹)
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